第278話 オニャンコポン(1)

 ----スキル【アルビノ】。


 悪癖龍マルガリータが持つ、このスキル。

 【白髪に赤い瞳という特徴的すぎる見た目】という"効果"と共に、【レアスキルを獲得できる確率が高くなる】という"効果"をも与えている。

 

 そして、マルガリータ本人も気付いていない"副次効果"も存在する。


 それは、このアフリカの地が持つ、アルビノへの強い偏見。


 アフリカという地において、アルビノへの偏見はかなり酷く、時には殺害されることも少なくない。

 アフリカでは、アルビノの身体は呪術的な要素に用いられ、ある時は富や豊穣を願うため、またある時は選挙に勝つためなど、幸福をもたらす道具であると信じられていたからだ。

 実際、切り取られたアルビノの身体を、闇マーケットで高値で売られているくらいだ。


 しかし、その副次効果が、このアフリカの地で花開くのであった----。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「~~♪」


 悪癖龍マルガリータは、強い思いを込めて歌う。


 その想いは歌を通して、キリング・ジャイアントの群れに通じる。

 キリング・ジャイアントの群れはマルガリータの想いを受けて、行動を開始する。


【【【キキキィィィ---!!】】】


 キリング・ジャイアントの群れは、目の前の臼に向かって行く。

 そして、その強靭なる顎で、石臼をガジリガジリッと、噛み砕いて行く。



 マルガリータが行っているのは、臼の土台部分を、蟻達によって削り取るということだ。


 この【アバトゥワの塔】のボス、オニャンコポンは、臼の上に乗らなければ絶対に顔を合わす事は出来ない。

 逆に言えば、臼の上部と、オニャンコポンの顔は連動している。


 臼がさらに高く伸びればオニャンコポンの顔もさらに上部に行くだろうし、臼が傾けば、オニャンコポンの顔も自然と傾く。


 自分達は蟻よりも小さくなっており、巨大な石臼を上るのは堅実的ではない。

 故に石臼の土台部分を削って、オニャンコポンの顔を傾けさせる。

 それが、このダンジョンの攻略法であると、マルガリータ……というか、ココアが考えたのである。


「(そうそう! 蟻のように見えるとは言え、魔物! 石臼を削り取るくらいの力はあるですよ!

 ----さぁ、可愛いキリング・ジャイアントの群れさん! すなわち、可愛いボクのファンさん達! 石臼を削って、推しのアイドルたる可愛いボクに献上するですよ!)」


 キリング・ジャイアント達は、疲れも知らずに、ただ愚直に石臼を顎で削っていく。

 ガブガブッと、ガブガブッと、石臼を削っていく。


 ググッと、削り取ると共に、石臼が傾き始め、そしてオニャンコポンの顔も合わせるように、下がっていく。


「(よしっ、行けるです!)」


 マルガリータが計画通り、順調に進んでいると判断する。



 そして、いきなりガクンっ・・・・と、オニャンコポンの顔の動きが固まる。



「----どういう事じゃ?」


 いきなり動かなくなったことに、ココアは戸惑う。


 石臼は蟻達によって完全に倒壊するも、オニャンコポンの顔の位置はある所から傾くのを止められていた。

 このダンジョンの勝利条件は【臼の上まで行き、オニャンコポンの顔と視線を合わす】であり、臼が倒れた以上はオニャンコポンの顔も下がっていくはずなのだ----。


『それで、終わりですか?』


 そこで、オニャンコポンの口が開き、言葉が発せられる。


 そう、石臼を倒すことも、このダンジョンの攻略法であった。

 あの集団が関与する前、までは。



『我が【街】への侵入を、そうたやすく許すとでも?』



 オニャンコポンの顔はいつの間にか被っていた仮面によって隠され、その仮面の真ん中には【街】という漢字が刻みつけられていた。


『我が【街】の防衛機構、オニャンコポン。

 冒険者よ、そう容易く攻略クリアできると思うな』




(※)オニャンコポン

 【街】への侵入できるダンジョンの1つ、【アバトゥワの塔】のダンジョンのボス魔物であり、現在は【街】により、独特の防衛機構が備わっている

 【下剋上等の杖】によって周囲のキリング・ジャイアントに対してランクを無視した戦闘能力を与えつつ、石臼を倒してオニャンコポンの顔を合わせる対策として仮面を付けさせるという対策を取っている

 その他にも、絶望スカレット、開発ベンチャーちゃんなどにより、敵を追い詰める戦略を多数搭載されている

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