第277話 【アバトゥワの塔】(2)
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なにせ、自分の体重の700倍の重さを運ぶことが出来るといわれている。
さらには、上下の顎が生み出す力は自分の体重の300倍を超えると言われており、
これを仮に、人間サイズに換算する。
ここでは2mmの蟻を800倍、160cmの人間サイズになったとして考えてみることとする。
体重が60kgとして、運ぶことが出来る重さは、驚異の"42t"。
顎の力だけで"64m"を優に超える高さまで飛ばし、"320m"も離れた所まで一気に飛ぶことが出来る。
これはまさしく、超人並みの能力である。
そして今、【アバトゥワの塔】にて、
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【キリング・ジャイアント】 ランク;Ⅰ
強い相手に対して、著しい闘争心を持つ蟻型の魔物。自分よりも強い相手と戦う場合、自身の戦闘能力を上げることができる
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俺達の前に現れたのは、【キリング・ジャイアント】というランクⅠの魔物の群れ。
キリング・ジャイアントは、自分よりも相手が強い場合、戦闘能力をほんの少し、具体的に言えば2倍にまで上げる事が出来るというそれだけの魔物でしかない。
2倍というと強いかもしれないが、キリング・ジャイアントは本物の蟻と同じくらいの2mmくらいの大きさしかないのだ。
そんな蟻の力が2倍になったところで、人間に勝てると思うだろうか?
召喚獣として召喚する際も、召喚する際に必要となる魔力はゴブリンの1/1000----つまり、ゴブリン1000匹とようやく魔力で釣り合うくらいの扱いしか受けていないのだ。
それくらい弱いキリング・ジャイアントの群れに対し、俺達は"苦戦"していた。
「《ぴぴっ!!》」
【アンッツゥ~!!】
【《悪童龍神ポリアフ・マスタードラゴン》雪ん子(オーバーロード)】という本来であれば強力すぎる雪ん子の剣撃が。
----キリング・ジャイアントの顎で、止められていた。
ランクⅤの雪ん子と、ランクⅠのキリング・ジャイアント。
本来であれば勝負にもならないはずの戦いが、互角と言う形で、俺達の前で繰り広げられていた。
「《ぴぎぃ!!》」
【アンツゥ~!】
……あっ、互角と言う訳ではない。
今、雪ん子がちょっと強めに力を込めたら、普通にキリング・ジャイアントが真っ二つになってた。
つまり、たかが蟻一匹を始末するのに、雪ん子が本気にならなければならない事態が繰り広げられていた。
【【【アントォ!!】】】
「《ぴぴっ!!》」
そしてそのまま、雪ん子はキリング・ジャイアントの群れ目掛けて、突進していった。
ランクに差があるのに、どうしてこういう事態になっているかというと、その理由は俺達が相手しているオニャンコポン、そんな彼女が握る杖にあった。
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【下剋上等の杖】 装備アイテム
【街】所属の開発ベンチャーちゃんが、【世界球体=下剋上世界=】を加工して生み出した杖型の装備アイテム。装備者の周囲に下剋上等フィールドを展開し、周囲の者が倒される時に得られる経験値を全て自らに吸収する
(※)下剋上等フィールド
弱者であろうとも自らの知恵と力を使い、常に下剋上が行われている【下剋上世界】と同様のフィールド。この世界では弱者と強者との、圧倒的な力の差はなくなり、例え弱者であってもシステムの壁を越えて強者を葬ることが出来る
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オニャンコポンが持つ、杖。
その杖が発する下剋上等フィールドというのが、本来はランクが上なはずのこちらにも、ダメージが効く仕様へと変換しているのだ。
あの杖さえなければ、こんな蟻なんか、大きさの差なんて関係なく、無双できると言うのに!
ただでさえ、こちとら、
ファイントも雪ん子ほどではないが、魔法が効きづらいらしく、なかなか前に進まない。
相手はただのランクⅠの蟻型魔物で、こっちはオニャンコポンと顔を合わせれば終わるのに!
「ボス! ここは、可愛いボクに、お任せあれ!」
と、そんな中、悪癖龍マルガリータがそう宣言する。
「いっくよぉ~! マルガリータ・オン・ステージ! イン・アフリカ!」
そして、何故かマルガリータは、いきなりアイドルのように、歌い始めるのであった……。
(※)【世界球体=下剋上世界=】
【街】が所有していた【
この【世界球体】には、弱者であろうとも、隙さえちゃんと見極めることが出来れば、強者を倒せるという一発逆転を果たすことが出来る。逆に言えば本来であれば絶対に勝てるであろう強者であろうとも、一瞬たりとも気が抜けない状況に晒され続けるという事である
【街】はこの能力を杖という、装備アイテム状に加工し、ランクⅠの魔物しか出てこない【アバトゥワの塔】を強力な高ランクダンジョンに変えた
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