第271話 【街】
----彼らは、【街】作りがしたいんですよ。
開口一番、【街】の目的についてダブルエムはそう語り始めた。
街づくりとは、何か。
それは簡単に言えば、人間が住みやすい場所を作る事である。
川に橋をかけたり、あるいは埋めたり。
木々を伐採したり、地面を掘り起こしたり。
人々が住みやすい環境を作り出すために、自然を開拓する。
それが、一般的な、街作り。
絶望スカレット、【街】が行っているのも、これに近い。
----問題は、それが"
りんごが木から落ちるように、なんでも出来る魔力を世界全体に満ちさせる。
世界の法則そのものを、彼らは自らがめちゃくちゃ住みやすい世界に変えようとしている。
「俺TUEEEEEEEとかあるじゃないですか、自分が行動するだけで全てが解決する#万能世界。【街】が目指すのは、そういう#世界 ですね」
空海大地は否定する、そんな事できるはずがないと。
ダブルエムは反論する、そもそもこのヨーロッパ国こそが計画の第一段階であると。
「このヨーロッパ国は、災害ブイオーの『吸血鬼のココアを倒したい』という想いが具現化した#世界。召喚獣である"無限の生命"を持つ彼女を殺すために、この吸血鬼の世界はヨーロッパに現れた」
別の世界を、この世界に混ぜる。
どんなモノでも混ぜることが出来る、絶望スカレットの【パティシエ】ならお手の物だ。
しかも、【パティシエ】の力があれば、例えばその混ぜる別の世界の、どの部分だけを採用するかなども、出来るらしい。
そもそも、この方法を思いついたきっかけというのも、【世界球体】を取り込んだ赤鬼などがやられると、基となった
「《桃太郎》赤鬼がやられた際、【プラーナ】系統職業の【桃太郎】が使えるようになったように、【世界球体】を破壊すれば、この世界に#新たな世界 の法則を付け加える事が#可能」
そういう作用を利用して、こっそりと【街】は自らが都合がいいルールになる【世界球体】を破壊していたのだそうだ。
その数、既に40以上。
「永遠に若いままでいられる【美魔女】、空を自由に飛べることが出来る【飛行士】、自らの信奉者を作り出して率いる【教祖】----。
【街】の面々が、召喚獣の身体を用いているのもそのため。
召喚し直せば、どんな傷でも元通りになる----だからこそ、【街】は召喚獣の身体を利用している。
「災害ブイオーが【サンダーバード】、スカレット様が【ファントム】、そして私の身体を#構成 する荒廃ノネックが【ろくろ首】----って、所ですかね」
彼らは、ルトナウムを使えば、召喚獣の身体を保ちつつ、記憶を保持できる現象を知っている。
そう、冴島渉が持つ【召喚 レベルアップ可能】というスキルにて。
【街】に所属する者がどれだけ居るのかは、ダブルエムにも分からない。
そもそもスカレットも誰も彼もが把握していないからだ。
ルトナウムを召喚獣の身体に浸して、侵食させることで、【街】のメンバーは生まれるのだから。
それこそ、ルトナウムを無限に生み出す事さえ出来れば、【街】のメンバーはそれこそ際限なく増え続ける。
「ルトナウムは元々、空海大地の帰還で生まれた亀裂に巻き込まれて、魂と身体そのものが液体状となったモノ。つまりは、言い換えると、#理不尽に殺された者達。
そんな者達が『絶対に死なない身体』を貰って、その上、『自分達の理想の世界』を作れると知ったら、協力もおかしくないのでは?」
赤坂帆波は質問する、それはスカレットの持つ洗脳を一切使わずにか、と。
ダブルエムは補足する、【街】の目的に沿うようにスカレットの洗脳は使っている、と。
「そもそもルトナウムを増やす方法とやらにも、ばっちりと#洗脳 は関わってますからね。
一時期、#佐鳥愛理 がルトナウムを政府に販売する際に、ダンジョンにルトナウムを取り込ませて、#ドロップアイテムにしたのも、『【街】のためのルトナウムを取れるようにした』と考えれば、説明がつく」
佐鳥愛理には、『【街】のメンバーを増やすためのルトナウムを量産できるように、ダンジョンに取り込ませてドロップアイテムにさせる』。
ビーワンちゃんには、『【世界球体=ペンライト世界】を使って、《ペンライト》小鬼を生み出させる』。
これらを違和感なく実行させ、後で聞かれたら「なんでそんな事をしようと思ったのか分からない」と話すようにさせる。
それこそが、絶望スカレットの起こした行為なのだという。
----そして今、その絶望スカレットは最後の遊びをしに向かった。
そう、宣言通りに。
冴島渉の召喚獣----聖天使ファイント・ルシファー、そして武装姫ヘミングウェイに対して、絶望をプレゼントするために。
(※)【街】
絶望スカレットを始めとした、『自分達の理想の世界を、新たな街を作る』ことを目的とした組織。構成員のほとんどが、召喚獣の身体を手に入れた、ルトナウムとなってしまった人々
【世界球体】を破壊した際に新たな
上下関係がない『ティモール組織』であるが、ほとんどの構成員は絶望スカレットによる洗脳によって思考の調節を受けているために、実質的なリーダーは絶望スカレットである
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