第263話 出でよ、【物語召喚獣】(2)
吸血鬼達の王である、夜魔ヴァンパイア・キング。
ココアが何度も語っていた通り、『弱点が多い吸血鬼は、それ故に家族を大切としている』からなのか、契約していない【召喚士】の俺が触っても何もしない。
攻撃はおろか、手で払いのける事も、こちらを睨みつける事も一切何もしない。
吸血鬼のココアと契約しているから、俺も吸血鬼の仲間だと思っているから攻撃しないんだろうが……、それにしたってなにもしなさすぎだろ。
他の
「----まぁ、攻撃しないんなら、俺は作業を進めるだけだ」
俺は作業を進める。
夜魔ヴァンパイア・キングに対して、【スピリット】の四大力を使う。
融合召喚に使うために、召喚獣の身体を液体にしてきた【スピリット】の四大力である。
俺はそんな【スピリット】の四大力を、夜魔ヴァンパイア・キングの身体に流す。
「うおっ、なんか変な感覚がする」
「主殿、つかぬ事を聞くようじゃが、いったい何をしておるんじゃ?」
「今、コイツを【スピリット】の力で、変形させている」
リョクチャやマルガリータを【融合召喚】で召喚するために、基となる召喚獣を液体に変えた時のように、今俺は、この夜魔ヴァンパイア・キングを【スピリット】の力で操作しているのだ。
「もしや、主殿はこの夜魔ヴァンパイア・キングを液体状にして、妾と"ふゅーじょん"させる気なのかのう?」
「融合じゃない、俺が欲しいのは----っと、これこれ」
手ごたえを感じた俺は、夜魔ヴァンパイア・キングの身体から"それ"を取り出した。
===== ===== =====
【夜魔ヴァンパイア・キングの核(不安定)】
夜魔ヴァンパイア・キングから抜き出した【
吸血鬼の王としての力を有しているが、【スピリット】の力で強制的に出しただけなので不安定
===== ===== =====
俺が取り出したのは、夜魔ヴァンパイア・キングの核。
夜魔ヴァンパイア・キングの魂とでも言うべきだろうか?
身体を液体に変えられるんだから、魂を身体から取り出すのも似たようなものだ。
俺の手の中で、夜魔ヴァンパイア・キングの核がぶよぶよと揺れていて、まるでスライムのようであった。
「凄いんじゃよ、主殿! 練習でもしておったのか?」
「いや、これは単なる神様からの手厚いバックアップを受けているから出来ているのさ」
俺は今、【召喚士】の神様であるソロモンからの試練を受けている。
「ソロモンが提示した宝石召喚獣よりも、強い召喚獣のタイプを考えろ」という、レベルⅥになるための試練を受けているのだ。
その時、ソロモンはこう言っていたのだ。
『《君が、宝石召喚獣よりも強い召喚獣のタイプを考え、私に提案さえしてもらえれば、その召喚獣を召喚させてあげるよ。そして、それが宝石召喚獣よりも強いと判断したら、君をレベルⅥにしてあげるよ》』
つまり今の俺は、神様への提案という形でならば、どんな召喚獣も出せる状態にある。
古代召喚獣や未来召喚獣、それから龍種召喚獣などを召喚できたのは、そのためである。
そして今の俺は、【物語召喚】という新しい召喚を、ソロモンに提案している最中。
俺が夜魔ヴァンパイア・キングの核とやらを抜き出せたのも、俺の実力というよりかは、
「(----不安定状態なのも、やるからには早くやれという催促なのだろうか)」
ソロモンが見たいのは、【物語召喚】とやらで出て来る召喚獣の強さ。
核を抜き出すアシストに、神様の力を利用して許されるのはこの1回限りだろう。
「そして、これをココアと融合させる」
俺はそう言って、ココアと向き合う。
俺が考えている【物語召喚】とは、【融合召喚】のさらに先。
ただの吸血鬼であるココアに、吸血鬼の王としての力を授けるのだ。
ただの子供だったのに、伝説の聖剣を引き抜いて英雄となった【アーサー王伝説】。
農夫の娘が神の啓示を受けて、勝利をもたらす聖女となる【ジャンヌ・ダルクの物語】。
英雄とは偉大な功績をもたらしたから、英雄になる。
しかし、当然ながら、英雄になる人物とは、それに相応しいだけの物語を持っているモノなのだ。
俺はその物語を、英雄にさせるための物語を、ココアに与える。
吸血鬼の王としての力を、吸血鬼の王としての物語を。
「ココア、行くぞ」
「言われんでも、既に準備完了しておる」
ココアは、既に受け入れる準備は出来ているようだ。
「雪ん子も、妾達の仲間じゃ。そんな仲間を自分の身内にして奪うなど、許せるはずがないじゃろう?
それにあの場には居らなんだが、ファイント、それにマルガリータやヘミングウェイの妹達にも同じことをしそうじゃろう? そうならないためにも、"ふゅーじょん"は受け入れるべきじゃよ」
ココアの瞳には、強い決意が宿っていた。
そして俺は、ココアに、夜魔ヴァンパイア・キングの核を【スピリット】の力を使って、馴染ませる。
ココアの肉体が、液体状となった夜魔ヴァンパイア・キングの核を吸っていき、ココアの身体が変質していく。
「----さぁ、ソロモン様よ。ご覧あれ!
宝石召喚獣を越えた存在、物語召喚獣となった、新たなココアの姿を!」
===== ===== =====
《スピリット》の力によって 1体の召喚獣と 【夜魔ヴァンパイア・キングの核】が 1体の召喚獣に融合していきます
召喚士神ソロモンの力によって 安定状態へと持って行きます
…… …… ……
…… ……
……
成功しました!!
融合に成功したため 新たな召喚獣を 召喚します
また【召喚 レベルアップ可能】により レベルアップ可能状態で 召喚します
===== ===== =====
そうして、ココアは新たな姿へと進化したのであった----。
ココアはクリスタルで出来た王冠を被り、その背中には金色のマントを羽織っていた。
狐の尻尾は一気に増えて9本となり、勾玉が先端に取り付けられた専用の杖を手にしていた。
「なんでじゃあああああ!! なんで狐の尻尾も増えておるんじゃああああ!!」
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【《悪女帝》吸血女帝ココア・ガールハント・ヒアリング】 レベル;Ⅴα+1
個体レベル;1
装備職業;妖狐
攻撃力;S+25→S+40
属性攻撃力;S+25→S+40
防御力;S+25→S+40
素早さ;S+25→S+40
賢さ;S+25→S+40
固有スキル;【吸血】;相手に嚙みついて血を吸って、回復するスキル。ただし吸った相手が死者の場合、ダメージを受ける
;【吸血鬼<狐】;吸血鬼の弱点が消えるスキル。ただし、狐の要素が強く反映される
;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する
;【吸血鬼の王】(NEW!!);吸血鬼たちの王の証。吸血鬼を守る際に戦闘能力を著しく上昇させて、血液を自由自在に操れるようになる
;【鮮血の杖】(NEW!!);吸血鬼の力を宿した杖。特殊な能力により、触れた相手に能力を付与する
後天スキル;【五属性魔法】+15;火、水、土、雷、風を扱う魔法。レベルが上がると強力な魔法が使えるようになる
;【変化魔法(九尾)】(UPDATE!!);九尾に変身する魔法。尻尾の本数の10倍の秒数分、属性攻撃を付与できる状態へと変化する。自分にしか効果はない
;【管狐ノ支援】;魔法属性を変更したとしても、管狐達による手厚い支援により、攻撃力が半分にならない。また、同行者の魔法攻撃の魔法属性を変更できるようになる
;【鮮血武装】(NEW!!);自らの血を武器に変えることが出来るスキル。このスキルで作った武器によって、相手から血を流させると、その流れた相手の血も操る対象とすることが出来る
;【繋がる血族】(NEW!!);相手に吸血する事で、その者を自身の血族にし、自分の魔法攻撃力の10%分を全員に付与する
;【原罪の妖狐】;妖狐のスキルの1つであり、究極のスキル。7つの大罪をモチーフとした妖狐のスキルを全て使用できるようになる
;【原罪の妖狐・傲慢】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分に対するアイテムやスキル効果時間を4倍にする
;【原罪の妖狐・強欲】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分の味方に対するアイテムやスキル効果の効果時間を倍にする
;【原罪の妖狐・嫉妬】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分以外の味方、敵に使われたスキル・アイテム効果を使う事が出来る
;【原罪の妖狐・憤怒】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。相手の弱点をつけなかった攻撃を、強制的に敵の弱点に対する攻撃にすることが出来る
;【原罪の妖狐・色欲】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。相手の状態異常攻撃を全て無効化する
;【原罪の妖狐・暴食】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。近くにある食材を使用する際、ステータスに一時的にボーナス効果を与える事が出来るようになる
;【原罪の妖狐・怠惰】;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。攻撃しなかった時間だけ、次の攻撃の威力を上げる事が出来る。最大500%(50分以上経過状態)
;【二人三脚】;自分と体力をもう1人の相手と共有するスキル。対象;悪癖龍マルガリータ
;【雷狐・風狐】;雷と風の2種類の狐神を使役するスキル
;【魂鑑定】;魂そのものを鑑定する【鑑定】魔法の上位系。相手の魂を覗くことが出来る
;【発情期】;動物関連の魔物や召喚獣が稀に持つスキル。状態異常が効かなくなる代わりに、発情してしまう
【吸血女帝ココア・ガールハント・ヒアリング】 レベル;Ⅴα(=レベルⅥ相当、現在審議中)
吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世が、吸血鬼の王としての地位と物語を得て進化した姿。吸血鬼の弱点が全て消え、吸血鬼を統べる者の力を手にしている
身体から生える9本の尻尾は人々の世を惑わす悪しき存在たる九尾をイメージしており、どんな事をしようとも吸血鬼を守ろうとする彼女の決意が具現化していると言える
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