第215話(番外編) 友情と、協力と、《チーズフォンデュ》の幽鬼(1)
~~番外編 前回までの あらすじ!!!~~
ダブルエムの歪んだ価値観と、それに至った経緯を知った網走海渡。
何もかも諦めてるダブルエムに対して、同情心と怒りを覚えてしまった網走海渡は、彼女に説教をかます。
「あんたは、わがままを言わずに、ずーっと自分の心を押し潰してきた。いや、休憩させすぎて、働く方法を忘れてしまったんだ。
でも休憩の時間は、もう終わりだぜ。ダブルエム。
お前の感情、俺が取り戻してやる。そのためにも、休日はもう、必要ない、ってなっ!!」
----決まったと、キメ顔を決める網走海渡。
一方で、ダブルエムは初めての感情に心を揺さぶられていた。
「キザすぎて……アイツ、殺したいかも……」
人はそれを、殺意と呼ぶ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【ガチャ、当タレェェェェ!!】
===== ===== =====
【《チーズフォンデュ》世界幽鬼】 レベル;Ⅵ+?
全ての人間と仲良くチーズフォンデュを食べよう。むしろそれしか食べさせないという世界が閉じ込められていた【世界球体=チーズフォンデュ世界=】の力で歪んだ、
あらゆる物をチーズに包み込むことによって、敵の攻撃は性能を半減に、自分の攻撃は倍にしながら回復効果を持たせるという、意外に強い職業。武器は先がとがった棒型の槍【ピックフォーク槍】を装備する
SR! UR! 目指スハ最高レアダケ! 使エル使エナイハ、後デMyTuberノ動画デ確認スルカラ、マズハ最高レアヲゲットセヨ!!
===== ===== =====
今、ダブルエムと網走海渡が相手しているのは、頭がチーズフォンデュの入った鍋という、これまた特徴的な世界幽鬼である。
いつものように服に【世界幽鬼】という文字が刻まれた、そんな世界幽鬼はと言うと、底知れぬガチャの未練を口にしながら、鍋からチーズを絡ませた隕石を放って、攻撃してくる。
「おらっ!! 【アイアンブレード】!!」
「ひょいっ」
網走海渡は【剣士】としてのスキルを用いて、隕石を真っ二つに叩き斬る。
その際、チーズで絡まったせいで、剣が使い物にならなくなってしまう。
「ちくしょう! 厄介だな、このチーズは?!」
「#避ける #推奨 の攻撃ですから。はい、新しい剣です」
ぽいっ、とダブルエムは海渡に、新しい大剣を放り投げる。
それを受け取った海渡は「ありがとう、ダブルエム!」と、グッとサムズアップで応える。
「俺に新たな剣をくれるなんて! お前、良い奴だな!」
「(ずきっ)……なんでしょう、ちょっとは呪いとか付け加えといた方が良かったと、今さらながら後悔してる私が居ます」
ダブルエムは心に芽生えつつある殺意に蓋をして、海渡ではなく、世界幽鬼の方を見る。
「早めに倒しませんと。【チーズフォンデュ】までばら撒いてたなんて、早く回収しませんと"大変なこと"に……」
「今も、十分に大変な状況だと思うが?!」
と、海渡は周囲の状況を見る。
世界幽鬼は全て、未練を垂らしながら、適当に自分が出来る攻撃を放つ。
そういう類の敵であり、《チーズフォンデュ》世界幽鬼はその例に漏れず、自身のスキルを使っていた。
世界幽鬼は自分のチーズ釜から、大量のチーズ塗れの隕石を周囲に放つ。
放たれた隕石は周囲の建物を破壊しつつ、それに纏われていたチーズはさらに飛び散って、触れた部分をチーズで汚染していく。
破壊と、チーズ。
実に奇妙な光景なのである。
「あっ、あのチーズを食べてはいけませんよ。食べた瞬間、チーズの美味しさで、メタボ一直線ですから。具体的には、#100kg越え #糖尿病 #直行コース」
「言われんでも、食べんわ! あんなチーズ!」
先程、隕石をぶった切った剣の刀身が、チーズによって溶けて来ている。
そんな剣の様子を見て、そんな事を言えるのは化け物だと、網走海渡はそう思っていた。
「----まぁ、早めに倒さなくちゃいけないなら、今すぐやってやるさ!」
海渡はそう覚悟を決め、先程ダブルエムから貰った大剣を構える。
「今から見せてやるぜ! 【剣士】の俺が使える最高の技、【居合=神速=】を!」
【最高レア、出テコイイイイイイイイイイイイイ!!】
そして、世界幽鬼に、海渡は【居合=神速=】を発動させる。
一瞬にして、海渡の剣は音速を、光速を越えて、世界幽鬼の頭であるチーズフォンデュ鍋に叩き斬る。
----カンッ!!
しかし、海渡が繰り出した居合の大剣は、チーズフォンデュ鍋には一切、通じなかった。
大剣は鍋に弾かれて、刀身が壊れて、飛ばされていく。
「……あぁ、その程度が最高威力なんですね」
そう言うダブルエムの頭には、弾かれた刀身がぶっ刺さっていた。
その刀身を頭から抜いて、「仕方ない」と、ダブルエムはそう言って、仕方なしに腕を大きな口に変える。
「#仕方ない ので、その最高の技とやらを、私の方でなんとか高火力にしましょう」
「なにか、手があるのか?!」
「えぇ、手ではなく、"口"ですが」
----ガブリっ。
そう言って、ダブルエムは頭から思いっきり行った。
大きな口に変えた腕が、彼女を頭から丸のみにしたのである。
横で見ている海渡からして見れば、隣に居た彼女の身体が大きな口の中に入っていくという、なんともシュールな光景が見える事だっただろう。
そして、身体はすべて消え、残ったのは、ダブルエムの片方の腕だけ。
「-----【工場】スキル、【再錬成:魔剣】」
そして残された片方の腕は青く発光したと思うと、その形が変わっていく。
ガチャガチャッと目まぐるしく形が変わっていき、数秒後に出来上がったのは、一振りの大剣。
===== ===== =====
【魔剣ダブルエム】 装備アイテム
3人の魔王の力が込められた、神話クラスの大剣。【三大堕落】の【不老不死】担当である、ダブルエム自身の肉体を、【工場】のスキル【再錬成】を用いて、大剣の形にて再構築された大剣
装備使用者の魔力を大剣の刀身に、渦のように流し回すことで、破壊力を何倍何十倍にも高めることが出来る
===== ===== =====
大剣へと変わったダブルエムは、いきなり宙に浮かぶ。
そして、まるで意思を持つかの如く、網走海渡の手に収まるように移動する。
「これは、大剣か?! ダブルエム、お前これは?!」
【私、死なない事に関しては強いんですが、#高火力 とは程遠いので。それなので、私自身を #大剣へと変化 させました。あなたの攻撃をサポートさせてもらいます】
「ありがたいっ! これが終わったら、一緒に飲みに行かないか?」
【----今さらながら、大剣に変化したことを#後悔 させないでください】
そして、網走海渡は大剣に自身の魔力を通す。
その魔力は漏れることなく、それどころか大剣の刀身で何度も回転させて、破壊力を上げていく。
【ガチャ、当タレッテバァアアアアアア!!】
《チーズフォンデュ》世界幽鬼は、手にしているピックフォーク槍を振り回しながら、海渡に近付いていく。
「----ダブルエム。お前の想い、全部を受け止め! この世界幽鬼をぶっ倒してやるぜ!!」
【はよやれ。はよ】
「分かったぜ!」と、勝手に納得する海渡。
そして、目の前に迫って来る世界幽鬼に狙いを定める。
「あぁ! これが友情の最高スキル!! 友情協力スキル【居合=神話創生ダブルエム=】!!」
そして、世界幽鬼の硬い鍋の頭は、海渡が放った居合によって、ぶっ壊されるのであった。
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