第211話 VS幽鬼ノブナガ(1)
「儂は、ここのダンジョンマスターのサタン様に仕える、幽鬼。まぁ、織田信長って言った方が分かりやすいか?
あんたら、冴島渉ご一行様やろ? とっ、まぁ、挨拶はその辺にして----ほな、落ちとこか」
ばんっ!!
織田信長を名乗るその幽鬼が何かする前に、いきなり冴島渉達の足元の地面が消えた。
大きな穴が開き、
「うわぁぁぁぁぁ!!」
冴島渉とその召喚獣達は地面の下へと、落ちて行くのであった----。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あいたぁ~!!」
落とし穴に落とされた悪癖龍マルガリータは、「いたたぁ~……」と呟きながら立ち上がる。
立ち上がりながら周囲を見ると、そこは古城を思わせる石造りの壁と床が広がっており、どうやらダンジョンの中に落とされたことが、マルガリータは理解した。
そして、次に確認するのは、他に仲間が居ないかどうかである。
彼女は辺りを見回しながら、仲間の名前を呼ぶ。
「ボスぅ~? 妾の姉御ぉ~? 雪ん子ちゃ~ん?
……もう! 可愛いボクの呼びかけに応えないだなんて、ひどいなぁ! もう!」
ぷくぅ~!
マルガリータは頬を大きく膨らませて、抗議の意思を示す。
「もう! 仕方ないなぁ~、こうなったらみんなを探そうっと!
わぁ~、一人でもすぐさま仲間を探しに行こうとする、可愛いボクは偉いよね!!」
次の瞬間、マルガリータの本能が危険を察知した。
それと共に、マルガリータの身体が変化していく。
彼女の可愛い瞳が一瞬にして、黄色く光り輝く。
そして彼女の腕が、龍の鱗が表面に出ているだけの龍の腕が大きく、肥大化する。
龍の鱗が逆立って、まるで棘のようになり、とても攻撃的な腕に変わっていた。
「そーれっ!!」
----かきんっ!!
マルガリータが腕を振るうと共に、甲高い金属音が響いていた。
「……ほぉ、ドラゴンの力は厄介やなぁ。まさか、儂の愛刀『へし切長谷部』を止められるなんて、思いもせんやったよ」
感心したように言うのは、先程マルガリータの前に現れた幽鬼ノブナガであった。
豪華絢爛な和服を着た幽鬼ノブナガは、骨で出来た巨大な大剣を携えて、マルガリータの前に現れていた。
「改めて、自己紹介させてもらうわ。儂の名前は、幽鬼ノブナガ。ここのダンジョンで、ダンジョンマスターの所に行かさへんようにするのが、儂の仕事じゃわい」
「例え、うちのダンジョンマスターが望んでなくてもな」と、幽鬼ノブナガはそう言って大剣をマルガリータへと向ける。
「可愛いボクを倒すのが、可愛くないあんたの仕事ですか?」
「そうじゃ、『ダンジョンに入った侵入者を排除する』のが、ダンジョン勤めの、カッコいい儂の仕事、ってな!」
幽鬼ノブナガが大剣を振るって、それに合わせるようにマルガリータが龍の腕で防いでいた。
「----速度を上げさせてもらおう」
「----っ! 可愛いボクは、負けませんっ!」
幽鬼ノブナガが速度を上げて斬りかかり、マルガリータは腕で防いだり、音波を出して攻撃する。
速度はどんどん上がっていき、幽鬼ノブナガ楽しそうに笑う。
「がはははっ!! 良いのう、良いのう! なあ、これならどうじゃろうかのう!」
楽し気に笑う彼女が気合いを込めると、背中から骨が彼女の皮膚を突き破って出てきた。
そして、突き破った骨は、そのまま彼女の身体を離れて、周囲に飛び散る。
「----儂の職業は、【オーバーロード】系統【神階英雄:魔王】。
儂をモデルにしたこの職業の能力は、単純明快じゃ。儂の骨が刺さった物は、全て儂の武器となる」
「はぁ?!」
ざくりっ!!
いきなり、マルガリータの背中が斬られる。
「いったぁ----?!」
「血が出るくらい、派手に斬りつけたのじゃが、龍は頑丈じゃのう。まぁ、手札はまだまだある」
すーっと、いつの間にか幽鬼ノブナガの傍には大量の骨の剣が、意思を持ってるかのように彼女の周りに浮かんでいた。
「----さぁ、戦はまだまだこれからよ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----どんどん、行くでぇ」
幽鬼ノブナガが言う通り、彼女の攻撃はどんどん加速していく。
大剣を捨てた彼女はダンジョンにぶっ刺して作った骨の剣を二本取って、さらに速く、手数を持って攻撃していく。
それだけでなく、身体から骨を出して、それを発射して、新たな骨の剣を作って、攻撃に参加させる。
幽鬼ノブナガの武器はどんどん増え、そして攻撃はどんどん数が増えて来る。
「可愛く、ないっ、攻撃ですっ!!」
マルガリータはそれを、さらに身体を龍へと近付けていく。
腕はさらに肥大化し、棘はさらに凶悪に逆立ち、その背中には赤い素粒子を纏った2対の翼を広げていた。
「----魔法を使わないのは、利口な判断じゃな! 魔法を使ってくれれば、儂の武器にさせてもらったのに」
「うんっ! 可愛いボクの判断、やっぱり間違ってなかったよ!」
幽鬼ノブナガの職業、【神階英雄:魔王】。
その能力は、身体中の骨を放ち、ぶつかった場所から刀身を戴く。
ダンジョンにぶつかった骨は、ダンジョンの一部をいただき、石の性質を持つ骨の刀身へと変わる。
そして、この能力の最大の特徴は、【オーバーロード】系統の職業----四大力を纏って強力な一撃へと変える【オーバーロード】の力を利用した、相手の技から刀身を作る能力。
「あなたが魔法を放てば、その魔法に向かって骨を放ち、その魔法から骨の剣を作らせてもらったのに。
儂、ショックじゃ」
「『じゃ』とか言うと、妾の姉御に被るのでやめてよ! 【アルター・フェザー】!!」
マルガリータが翼をばさっと動かすと共に、周囲に赤い素粒子を纏った羽が舞い散る。
そして舞い散った羽は、幽鬼ノブナガが周囲に放った骨に触れると、骨を巻き込んでそのまま虚空へと消えていく。
「【杖使い】ではなく、基となった種族----【エルダードラゴンエッグ・アルター】の特徴と言ったところかのう? 儂の骨を、この世界ではない別の、アルターの世界へと飛ばしていると言った感じじゃろうか?
----うむ、なかなかに面白い戦いじゃな!」
羽に当たるとマズいと判断した幽鬼ノブナガは、両手を羽の方に向ける。
手の平に穴を生み出した彼女は、そこから大量の骨を弾丸のように放って、相殺していく。
「だから、『じゃ』ばっかり、うるさいっ!!」
すーっと大きく息を吸ったマルガリータは、音波を幽鬼ノブナガへと放つ。
骨は音波によって地面へと落とされ、幽鬼ノブナガに赤い素粒子を纏った羽が、幽鬼ノブナガの所に迫って来ていた。
「----こりゃあ、少し"一人じゃ"キツイわな。
だから、出番じゃよ! 我が配下、"
幽鬼ノブナガがそう言うと共に、彼女の後ろから、のっそりと1人の巨鬼が現れる。
「あんたが、その名を呼ぶな、ノブナガ。トップアイドルになるために手を組むだけで、あんたが憎いって事は、この我の名が世界に証明してるのだからな」
現れたのは、3mはあろうかという巨大な女性。
狐のような異形の顔、
===== ===== =====
【反骨のスナイパー/幽鬼ミツヒデ】 ランク;? 【神階英雄:狙撃手】
あの有名な死者、「明智光秀」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。狐のような異形の顔と、3mはあろうかという巨躯を持つ女性
数々の謎を残す、日本史で最も有名な復讐者。信長の覇道達成のために護衛や雑用などを一手に引き受ける家臣団の中で最も重要な立場でありつつ、家臣に嫌われていたり、だからこそ何故に信長を手にかけようと思ったのかなど、様々な謎を残している
かの英雄は射撃を最も得意としており、およそ30cm四方の的を約45mもの距離から命中させるなど、当時の火縄銃や銃弾の精度から考えると驚異的な射撃の腕を持つ。また、空に向けて、狙いもつけずに飛ぶ鳥を落としたなどという、射撃に秀でた逸話も持つ
地獄の主サタンによってこのダンジョンに召喚された際、仲間をイメージした【悪癖龍マルガリータ】の印象を大きく受け、アイドルドラゴンのような姿となっている
===== ===== =====
「----そう言うな、ミツヒデ。共に、戦うぞ? 儂の覇道と、お主のトップアイドルへの道。
ここでダンジョンマスターが倒れては、どちらも叶わんぞ?」
「えぇ、そうですね。……足引っ張んなよ、ノブナガ」
「そっちこそのう」と幽鬼ノブナガは言い、マルガリータはさらなる乱戦を覚悟するのであった。
(※)【神階英雄:魔王】
【オーバーロード】系統の職業の1つ。主な使用者は、幽鬼ノブナガ
身体中の骨に影響を与え、無限に骨が増え続ける体質となる。そしてその骨は身体から自由に出すことが可能となり、骨が触れたものは全て武器となる
織田信長が活躍した戦国時代は、どこでも戦場となり、そして武器にこだわる余裕もない時代である。そんな戦国時代を反映し、この職業は全ての武器に対する適性が最高ランクにまで引き上げられ、周囲からどんどん武器を生み出すことを可能とする職業となった
(※)アルター・フェザー
悪癖龍マルガリータが出した、異次元の力を纏った龍の羽。彼女が翼を動かすたびに、鳥の羽のようにぽろぽろと飛んでいく
マルガリータの力で、この世界に存在しているだけであり、彼女の身体を離れた瞬間、元の世界へ戻ろうとする働きが生じる。その際、何かにぶつかると、その何かと共に一気に異次元へと帰還する性質があり、マルガリータはこの性質を利用して敵の攻撃を異次元に飛ばす戦い方を可能とした
元々、この能力はマルガリータの融合素材である、エルダードラゴンエッグ・アルターが持っていた性質であると考えられる
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