第168話 暴走文明(3)
~~前回までの あらすじ!!!~~
佐鳥愛理が、遂にキレた。
彼女の怒りは、バカンス中の千山鯉と悪癖龍マルガリータ、そして【召喚士】冴島渉へと向く。
千山鯉が《マナ》系統の職業の1つ、【魔法少女】だと考察した佐鳥愛理は、自分へと攻撃してきた悪癖龍マルガリータへと、腕を変質させて生み出した黒いワイヤーを放つ。
マルガリータは手に入れたスキル、【アイドル杖術】で応戦するも、ワイヤーは杖をすり抜けて、マルガリータの喉の声帯をぶっ潰すのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----職業スキル【急所必中】!」
スキルの力により、左腕を黒いワイヤー姿へと変化させた佐鳥愛理は、そのワイヤーでマルガリータの喉、その皮膚の下の声帯をぶっ潰した。
「~~~っ!!」
痛みにより、のたうち回るマルガリータ。
悲鳴をあげようと声を張ろうとするも、声帯をぶっ潰されたため、叫ぶことが出来ないようだ。
「そこの彼女は、声を基にして戦術を組み立てる召喚獣でしょう? 基となる喉の声帯を潰せば、ほとんどの攻撃手段を潰したのも同義! さらには、しばらくは【送還】できないように、佐鳥愛理ちゃん特製の粉も入れといたから、しばらくは無理無理の無理だよね!
もっとも、召喚獣、それも上位種の存在たる龍族なら、声帯だろうとも数分で治せるでしょうが----十分ですよね」
チャキンッと、両腕を黒い日本刀の刀身へと変えた佐鳥愛理は、憎しみを込めて冴島渉へと視線を向ける。
「職業スキル【黒化編成:両腕→刀身】! その上で、武器スキル【
そうして、刀身へと変化させた両腕を振るうと、砂浜の地面ごと両断する刃の軌跡が冴島渉へと向かって来る。
----ガキンッ!!
「おっと、これくらい話せば、防ぐ術くらいは出しますか? 例え、面倒でウザくて、邪魔者でしかない【召喚士】であろうと」
「……なんでそこまで恨まれてるかは知らんが、時間は貰ったからな。良い奴を召喚させてもらったぜ」
冴島渉は、声帯を潰されて倒れているマルガリータを抱きかかえながら、佐鳥愛理を見つめていた。
彼の周囲には真っ白なドーム状の結界が張られており、そのドームに沿うように緑色の線みたいなのが数匹、光速----いや、それ以上の速度で移動していた。
「へぇ~、【バリアフル・スカイフィッシュ】か。それはそれは、良い召喚獣を選んだみたいですね。
……あぁ、憎たらしい。妬ましい、な」
===== ===== =====
【バリアフル・スカイフィッシュ】 レベル;Ⅲ
超高速で移動する不可視の生命体であるスカイフィッシュの中でも、特にバリア構築に長けた召喚獣。体力や防御力などは最底辺のステータスではあるが、バリア構築の高い能力、そして自身に攻撃を加えようとする相手への回避能力や素早さは極端に高い
複数体との念話による、独自のコミュニケーションにより、複数体であればあるほどバリアは硬く、それでいて互いの死角を補うため、回避性能が上がる
===== ===== =====
レベルⅢの召喚獣の中でも、防御性能という意味ではトップクラスの召喚獣。
何体召喚されたのかはあまりにも素早すぎて、流石の佐鳥愛理でも分からないが……恐らくは、10匹以上はいる事は確実である。
そんなバリアフル・スカイフィッシュが作り出したバリアの中へ閉じこもっている。
しかも、バリアの中には冴島渉とマルガリータだけではなく、合流したであろうハジメとココアの姿があった。
ハジメは手の上に乗る小さな辰を見ながら、そう言った。
「十二支の動物神、辰。その神としての地位は
癒神の力さえあれば、3分もあれば治せますよ? はぁ~い、すぐさま治してあげますからねぇ?」
「頼むのじゃ、ハジメ! 妾の妹を、ちゃんと回復をお願いするのじゃ!」
バリアの中で、ハジメはマルガリータの治療に入っているようであった。
ココアも、マルガリータが寂しくならないようにと、手を握りしめて、必死に祈っているようだ。
「(少なくとも、あの2人はマルガリータの治療が終わるまでは、攻撃に加わることはなさそうですね。
それとも、私1人なら千山鯉だけで良いと?)」
「舐めやがって」、佐鳥愛理はさらに怒りを
「防御はそれで大丈夫だと? ……【文明】の佐鳥愛理を、舐めないでください」
佐鳥愛理はそう言いつつ、刀身へと変化させた両腕を元の両腕の姿形へと戻す。
そして、今度は左腕を先程と同じく黒いワイヤーへと変える。
「【黒化編成:左腕→ワイヤー】のリターンズってね! 防御無視の、この黒ワイヤーの力を今からお見せいたしましょう!」
ビュンッと、先程マルガリータへと放ったのと同じような勢いで、黒いワイヤーが冴島渉達のいるバリアへと、急速にて向かって行く。
そして、ワイヤーはバリアにぶつか……る事無く、そのまま中へと侵入して、治療中で動けないハジメの脚を貫く。
「~~~! あぁ、後輩ちゃんのカモシカのような美脚がぁ! ご主人、後で撫でてね~!」
「えぇい、そんな事どうでも良い! 妾の妹を早く治して欲しいのじゃ!」
「狙いがズレたかな? まぁ、これで分かって貰えたでしょう。
この私の
次は外さんとばかりに、右腕も同じように佐鳥愛理はワイヤーへと変えようとする。
「《ぎょぎょ! ソード・マジック!》」
「……?! おっと?!」
放とうとして自分の懐に、剣を振り上げる千山鯉の姿を見て、彼女は咄嗟に右腕を盾へと変更して、その攻撃を防ぐ。
「《ご主人、狙った! 許さないぎょ!》」
千山鯉は怒り心頭といった様子で、剣を振るう。
先程までの海賊の恰好と違い、騎士を思わせる鎧のような姿になっていることから見ても、剣に特化した魔法少女としての姿に変えて、挑んできたことが分かった。
だが、佐鳥愛理は怯まず、真っ向から迎え撃つ。
「剣で、接近戦で来ますか! なら、こちらも接近戦でお相手しましょう!」
佐鳥愛理はそう言いつつ、ワイヤーに変えていた左腕を元の腕へと戻すと、右腕の盾化も解除する。
そして、極めてシンプルに、佐鳥愛理は両腕を真っ黒に染めて、構えを取る。
「【黒化編成:両腕→強化両腕】。形は変わらずとも、職業スキルで硬くなった腕で、その剣を叩き斬りましょう!」
「《ぎょぎょ! 真っ二つ!》」
剣と、拳。
後衛が多い《マナ》系統職業の2人の戦いは、激しい接近戦へと突入するのであった。
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