第160話 【ゆる募】不死鳥の殺し方
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それは字の通り、文字通りの意味で『死』が『
全身を炎で覆ったその鳥型の魔物は、その生命が尽きると共に灰となって燃え尽きる。
そして再び、灰の中から炎を纏って現れる。
死んだとしても再生する、不死鳥。
「----私達が倒そうとしている千山鯉達は、そういう類の相手だと考えてくださいよ」
佐鳥愛理はそう、今から命をハンティングしようとする雪ん子を止めるように言うのであった。
「色々と殺す方法はありますよ? "マスター"のお望みなので、佐鳥愛理は手を抜きません。体力を削るための偉大なる文明の産物から、【世界球体】で封印するっていう手まで、殺す手段は千にも、万にも、億にもございます。
しかしながら、召喚獣である彼女達を完璧に、復活できないくらいにまで殺すとなると、流石にその方法は思いつきませんね。勿論、あの強大すぎる力、四大力【オーバーロード】を使っても」
「《ぴぴぴ……》」
「なので、剣とか、【オーバーロード】を彷彿とさせる蒼炎は消しなさいな」
佐鳥愛理の言葉に、渋々従う雪ん子。
彼女の言葉に従っているというよりかは、ファイントが「今は従うことが主を救う手段だよ」という言葉を受け入れているだけのようだが。
「雪ん子ちゃんは、物分かりが良くて助かるねぇ☆ ……それじゃあ、私達が千山鯉達を倒しても意味はない、と?」
「今、仮に倒せたとしても居場所を取り戻せないという意味では、意味はないですね」
赤坂帆波の言葉に、険し気な顔を作るファイント。
ファイントの頭の中では「どうすれば召喚獣を完全に消滅させられるのだろうか」と考えているようだが、答えは出ないようである。
まぁ、そんなに簡単に答えられる問題ならば、こんなにも悩んでいないのだが。
「答えは出ませんか、ファイントさん。
----まぁ、そうでしょうね。そんなに簡単な問題ではありませんので」
「でも、大丈夫ですよ」と帆波は、佐鳥愛理の頭をガシッと掴んでいた。
そして、そのまま頭を「よーし、よーし」と撫でていた。
「----?!」
いきなり頭を撫でられた佐鳥愛理は顔に驚きを浮かばせていたが、撫でられたのは嬉しかったのか、めちゃくちゃ頬を緩ませていた。
まるで日向ぼっこしている猫かというくらいに、顔をとろけさせて緩ませる佐鳥愛理。
そんな佐鳥愛理に「後は任せれば良いよ」と、帆波は自信満々にそう語っていた。
「大丈夫ですよ。うちの佐鳥愛理ちゃんがこれから攻略するためのアイテムを作る予定です。それまでは、くれぐれも突っ込んで行かないように」
「えぇ、えぇ! この【三大堕落】で一番"マスター"に頼りにされている女、佐鳥愛理にお任せあれ! あなた達のことは別にどうだって良いですけれども、"マスター"に頼まれた以上、例え不死鳥だろうと塵一つ残さない、完璧なアイテムを作って見せましょう!」
どーん、と腹を叩いて任せろと断言する佐鳥愛理。
雪ん子とファイントは、それでも少しは不安ではあったが、これ以上は何も出来ないために、2人の指示に従う事にした。
「1か月ほど、時間をくださいな。うちの佐鳥愛理ちゃんがいくら天才だとしても、時間がかかる問題なのはそちらも理解できるでしょう?」
「えへへぇ~、"マスター"、そんなに褒めないでくださいよぉ~♡ まぁ、天才ですけど、私はぁ~♡」
敬愛する"マスター"に褒められ、デレッデレに液体かってくらいにまで溶け崩れる佐鳥愛理を、帆波はゆっくりと押し戻す。
「《(良いなぁ~)》」
「(あら、妬けちゃう)」
その様子を、雪ん子とファイントは羨ましそうに見ていた。
自分達は甘える相手が、今は居ないから、甘えられて羨ましいな、と。
「とにかく、1か月後にまたここで会いましょう。それまでは解散、ということで」
ひょいっと、小脇に抱えるようにして佐鳥愛理を持ちあげた赤坂帆波。
そして、そのまま2人に別れを告げて、店の入り口に向かって行く。
「あ~、そうだそうだ。1つ、言い忘れていたけど、君達は2人とも、うちの日野シティーミティーちゃんのように【オーバーロード】を使えるようになったんだよね?
あの四大力、確かにめちゃくちゃ強力だけど、めちゃくちゃ癖があるから、一度練習しといた方が良いよ。あれ、使い方を間違うと、四大力の中で、"
そういう、なんだか良く分からない伝言を残して。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「では、早速【
入り口から出た瞬間、そんな最高潮の気分で宣言する佐鳥愛理。
それを「無理しすぎないようにね、愛理ちゃん」と優しく諭す赤坂帆波。
「1か月、と割かし強めに言ったのは、彼女達に安心させるためさ。1年とか、10年かかるというと、あの2人の精神がどうなるか分からないからね」
赤坂帆波の経験上、2人のうち長時間耐えらなさそうなのは、雪ん子ではなくファイントの方。
雪ん子は短期的に、発作的に主を求めているが、抑えられている。
問題なのは、一見なんの問題もなさそうに見えるファイントの方が問題である。
一見すると問題がないように見える方が、実は問題である、というのは、世の常なのだから。
「(彼女、真名を隠しているようだけど----彼女の性質から考えるに恐らくは……"あの伝説の生物"がモチーフとなっている召喚獣でしょう)」
そして、赤坂帆波が考える"アレ"が真名なのだとしたら、本当にまずい。
彼女の真の姿が現れ、その上で主が居ない発作に耐え切れなかったとしたら……
----この世は、地獄と化すだろう。
かの伝説の名の再現かというくらいに。
「まぁ、1か月で出来るかどうかは別として、もし出来なかったとしても、その時は君達【三大堕落】のご主人様として、命を賭けて! 説得させてもらいますから」
「……やめて。命を賭けるとか、冗談じゃないから止めてよね、"マスター"」
全肯定系彼女である佐鳥愛理にしては珍しく、ジト目で否定していた。
彼女からして見れば、"マスター"が死ぬなんてのは、もう二度として欲しくないため、冗談でも言って欲しくはない事なのだろう。
「冗談だよ、冗談」
「……本当に冗談で済ませてくださいね、全く」
そんな風に楽しそうに、佐鳥愛理と赤坂帆波は自宅へと向かって行く。
「……あぁ、そうだね。君の方も対処すべきだったよね」
その帰り道、赤坂帆波は1人の人物に目を向ける。
その人物はひどく顔色が悪そうではあったが、赤坂帆波の顔を見ると、さらに顔色が悪くなっていた。
そんな顔色が悪くなった人物に、帆波は優しく話しかける。
「初めましてだよね、少年。よろしければ、私とお喋りでもしないかい?
----ねぇ、"空海大地"くん?」
帆波は、1人寂しそうにしている空海大地に優しく声をかけるのであった。
(※)3人それぞれの印象
・空海大地→元勇者。帰還の衝撃によって、意図せず赤坂帆波を殺してしまう
・赤坂帆波→元勇者。大地の帰還の衝撃によって、命を落としてしまうも、召喚獣として復活する
・佐鳥愛理→空海大地死ね空海大地死ね空海大地死ね空海大地死ね空海大地死ね空海大地死ね----
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