第156話 VS《電子レンジ》青鬼(1)
【召喚士】の俺、冴島渉はいま、Cランクダンジョン《
このダンジョンで採取できる【鬼の涙石】というモノが、最近、需要が非常に高まっているらしいので、俺もその波に乗ろうと思っているのである。
【鬼の涙石】は、このダンジョンから手に入ると言われている特殊な素材アイテム。
その素材としての特性は、武器の携帯化が可能となるというもの。
この【鬼の涙石】を合わせると、10cmほどという超小型化が可能となるのだ。
簡単に言えば、めちゃくちゃデカいガスタンクも、この【鬼の涙石】を合わせれば、10cmほどの超小型サイズにして、性能はそのままという、本当に夢のような素材なのである。
もっとも、重さはそのままなので、小さくなったガスタンクをひょいっと持ち上げようとした瞬間、肩が外れる事受けあいだが。
日本という国は、人口に対して国土が狭すぎるという、地理的というか地形的な欠点があるため、この【鬼の涙石】が重宝されているのである。
そして今、俺達はそのダンジョンの奥深くで、世界球体を飲み込んだ、青鬼のボス魔物と苦戦を繰り広げていた。
「喰らうのでぴよ、超マイクロ波!」
頭が電子レンジという、超個性的な姿をしている青鬼が、腕を大きく伸ばす。
そして、青鬼の右手がクルリと回転すると共に、空気が振動して、どんどん熱くなっていく。
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【《電子レンジ》青鬼】 ランク;?
全ての料理が冷凍保存されており、一家に数台は電子レンジがあるとされる世界を閉じ込めた【世界球体=電子レンジ世界=】の力を得た、青鬼のボス魔物。倒すと、スピリット系職業の1つ、【電子レンジ】を使用することが出来るようになる
身体構造をスピリットの力によって、電子レンジと同じく、分子振動を自由に操作する力を得た。分子振動を起こしてあらゆる物を高熱で熱することが可能となり、電子レンジにも出来ない分子振動を全て停止することによる凍結も使える
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「あっ、熱いなの~!! ボクが丸焦げになっちゃう! 助けて、妾の姉御ぉ~!!」
「任せるのじゃ! この妾が、冷やすのじゃよ!」
敵である青鬼の力により、マルガリータに炎がついていた。
炎がつき、彼女は慌てふためいていた。
それを可愛そうに思ってなのか、彼女の姉を自称するココアが、水属性の魔法を用いて消火活動を行っている。
「そんな事をしなくても、消すでぴ! 反マイクロ波!」
と、青鬼は腕を今度は逆にくるりと回転させると、一瞬にしてココアとマルガリータの2人が氷漬けになった。
これが恐らく、説明にあった分子振動の一切を全て止める事による、凍結能力……。
全ての分子の動きを止める事によって、一瞬にして相手を氷漬けに出来る能力か。
熱とは、動いて、もっと言えば中にある分子が動き続けることによって起きる。
動きが活発であればあるほど熱はどんどん燃え上がり、それとは逆に動きがどんどん止まってしまえば熱は下がる。
その仕組みを利用している電子レンジはマイクロ波という物を用いて、中にある水の分子を振動させて、動きを活発にすることによって温めている。
そして、この【電子レンジ世界】の力を持つ青鬼は、それとは逆の、分子の動きを完全に止める事によって凍結させることが出来るみたいだ。
ココアとマルガリータも、決して弱い召喚獣ではない。
それがこうもあっさりと、手玉に取られるって事は、
「俺の切札、エースを投入しなくてはならないな」
今回の依頼、ココアとマルガリータの2人の戦力増強も兼ねて、俺のエースの召喚獣達----ココアとマルガリータが入る前からの、俺の主力の2人。
「行くぞ、召喚だ! 【千山鯉】、そして【正月のファイント】!」
俺が召喚獣の名を呼ぶと共に、現れた召喚陣から2人が姿を現した。
1人は、黒いマントを翻す、虹色の髪の和服少女。
ただの少女でないことを証明するかのように、頭には龍の角が2本生えており、手足には赤い鱗がびっしりと生えている。
そんな虹色の髪の和服少女----鯉が長い年月を経て、山の環境に適応した妖怪の【千山鯉】は銃と剣を構えていた。
「《ぎょぎょ! あいつをやっつければ、良いんだね。任せてくれたまえ、同士よ。すぐさまこの千山鯉の華麗なる力を、あいつに見せつけてやるんだぎょ》」
もう1人は、黒いマントを翻す、真っ白な獣耳の振袖美女。
猫模様が施された黒い振袖を着こみ、羽子板片手に超ハイテンションで騒ぎ立てる。
黒目と白目が逆でなければ、ただのコスプレガールにしか思えない彼女こそ----自らを正月という物事に相応しい
まぁ、語呂が悪いので、俺も彼女も、いつも"ハジメ"(1月1日だから)だとか、呼んでるんだけど。
「イッェーイ! ファイト、ファイター、ファインテスト!! このハジメちゃんの手にかかれば、お茶の子さいさいの、スーパータイムぅ! 渉先輩のためにも、今こそ見せましょ、ホトトギスぅ!!」
冷静に自身を奮い立たせて、闘志を静かに燃え上がらせる千山鯉。
それとは対照的に、見てるこちらまで闘志が燃え上がってしまいそうな、テンションが高いハジメ。
そして2人は、いつものように、戦いを始めていくのであった。
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