第153話 エピローグ(+5章予告)

 ダンジョンのボスを倒すと、そのボスに対応したスキルが手に入ることがある。

 例えば、炎系統のボスを倒すと炎属性のスキルが手に入ったり、堅牢な相手の弱点を見抜いて倒せば弱点を見抜くスキルが手に入ったり。

 そして、中でも特殊な条件でボス魔物を倒すとレアスキルと呼ばれる、強力なスキルが手に入るのだが、このレアスキルと呼ばれるモノは低級の冒険者の方が手に入りやすい。


 人間の渇望----欲望や夢が、人のスキルを作るのである。

 

 例えば、月に100万円を貰ってる人が、100万円を貰った所で驚きこそあれども、喜びは少ないだろう。

 では逆に、月に1000円しか貰ってない人が、100万円を貰ったら、めちゃくちゃ喜ぶだろう。

 そしてその喜びが大きいほど、強力なスキルが出来やすいのだ。


 出来るレアスキルは、その人の渇望が基になっているため、ぶっ壊れたスキルが出来やすいのである。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「《ぴぴっ! レアスキル出たっ!》」

「うわぁ~、凄いねぇ~♪」


 ファイントはパチパチと、レアスキルを得た雪ん子に賞賛の拍手を送っていた。


 ちなみに今現在、ダンジョンにいるのは雪ん子とファイントの2人だけ----彼女達の【召喚士】である冴島渉の姿はない。

 当たり前だ、そもそもこのダンジョンには、2人で来たのだから。


 スキル【独断専行】。

 「ダンジョンの魔力の影響を受けない」というこのスキルの効果で、2人はダンジョンと切り離された状態にあり、ダンジョンの魔力が生存と関係なくなった。

 故に、ダンジョンの外であろうとも、2人は自由に行き来できるようになり、さらに言えば召喚術で召喚されなくてもこちらの世界に来れるようになった。


 結果として、普通の人間と同じようにダンジョンの外を行き来できるようになった2人は、2人だけでダンジョン攻略に訪れたのである。


「まぁ、ご主人だったらこんなダンジョン、絶対来ないしね☆」


 今、2人が訪れているのは、Aランクダンジョン《兎被りの猫が住む家》。

 日野シティーミティーが【十二支のはじまり】という童話をモチーフに生み出したダンジョンである。


 【十二支の猫】の話と言えば、神様がレースという形で1着から12着までを十二支というメンバーに選出するという事を提案する。

 しかし、ねずみに騙された日程を教えられた猫は十二支にはなれず、センター入りしたねずみを恨んで襲うようになりました、というような、そういう話だ。


 このダンジョンでは、そんな猫が、恨み満々の姿となって襲い掛かってくるというダンジョン。

 なんでか分かんないけど、兎の顔の着ぐるみを着てるのは、謎な所である。


「猫の気配察知能力に、兎(顔だけなんだけど)特有の蹴りの強さ♡ 普通に戦闘能力が異常なくらいに強いっていうタイプのボス魔物でしたが、めちゃくちゃ楽勝でしたね☆」

「《ぴぴ! 頑張った!》」

「いや、あれは頑張ったという感じじゃあ……」


 ファイントは、見ていた。

 というか、見ているしか出来なかった。

 壁を透過して、物凄い速さによって一撃離脱戦法を繰り広げてくるボス魔物を、雪ん子が一刀両断する姿を。


 一撃、だったのである。

 あの日野シティーミティーと互角以上の戦いを繰り広げていた雪ん子が、この程度の敵なんて、楽勝なのだろう。


「で、楽勝で倒せたのにレアスキルを手に入れましたか……」

「《ぴぴ! じゃ、じゃぁ~ん!》」


 雪ん子はさっそく、ただいま手に入れたスキルを使う。


「《発動! 【愛され猫ちゃん】!》」


 雪ん子がスキルを発動すると、雪ん子の頭からぴょこっと、可愛らしい猫耳が飛び出していた。

 そして、猫耳だけではなく、お尻の方からは愛らしい猫尻尾がくるくる動いていた。


 レアスキル【愛され猫ちゃん】。

 その名の通り、万人に愛される猫の可愛さを手に入れるスキルである。

 ただ単に猫耳と尻尾を生やすだけでなく、愛らしさ1000%でめちゃくちゃ可愛くなるという印象を与えるなどと言う、超武闘派だったボス魔物と全く関係ないレアスキル。


 今の雪ん子ちゃんの魅力度は、トップアイドルグループのセンター級と言って良いだろう。


 普通、あんなあっさり倒したら、レアスキルなんて手に入らないはずなのに……。

 それだけ雪ん子の持つ欲望が強いと呼ぶべきか、あるいは【オーバーロード】の規格外の為せる技なのか。


「《にゃぴぃ~、にゃぴぃ~♪ 可愛いにゃぁ~♪》」

「うんうん☆ もう、いるだけで魅力度MAXで【誘惑】しちゃうくらいの愛らしさだよ♪」


「《じゃあ、主も?!》」


 その質問に、ファイントは困っていた。

 多分、見たら可愛いと言ってもらえるくらい、めちゃくちゃ可愛いのは事実である。


「(ただなぁ……)」


 ファイントは答える事なく、雪ん子と共にダンジョンの外に出た。



「今のこの世界、ご主人がちゃんと覚えてるかな?」



 と、ファイントはダンジョンの外----頭上に広がる青空を見上げる。


 そこには、銀色の太陽・・・・・という、今までにない光景が広がっていた。


「なにせ今、世界はリセットされて、世界中の人達の記憶がリセットされてるっぽいですし♪

 ----その証拠に……」


 ファイントは、数刻前に来たログを見直す。



 ===== ===== =====

 世界は リセットされました


 【召喚士】冴島渉と 雪ん子との 絆が 解除されました

 【召喚士】冴島渉と ファイントとの 絆が 解除されました

 ===== ===== =====



「私達、今は根無し草ですね☆」


 【召喚士】との繋がりを強制的に断たれて、世界に解き放たれた2人の召喚獣は、今日もまた自由気ままに行動するのであった----。


 《4章 完》



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



【第5章 予告(仮)】

 ※この予告はあくまでもプロット段階でありまして、ご意見要望、あと作者の気分次第で変わる可能性があります。むしろ変わって欲しい!!



 ----世界は、変革された。


 ダブルエムの身体を乗っ取ったシルガの手によって、世界はさらにダンジョン色の強い世界へと変化を遂げていたのである。


 陰陽師と鬼が日夜バトルを繰り広げる、陰陽道大ワールド!!

 侍が、忍者が、ガンマンが、そして戦隊ヒーローが!!


 ダンジョン化ならぬ、異世界化してしまった現代社会!!


 政府の人々や、めちゃくちゃ強い冒険者達が対策を講じる中で!!

 【召喚士】の冴島渉は、海でバカンスを満喫していた!!


 いつもの吸血鬼のココア、そして悪癖龍のマルガリータ!

 あと、俺のお気に入りの"千山鯉"ちゃんも忘れてはならないな!

 今から、バカンスが楽しみだぜ!!


 ……え? ファイント? 雪ん子?

 誰ですか、それ?


 ----第5章(仮)

 『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!』、あるいは『雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章」。



「《ぎょぎょ!! 海を駆ける可愛いあちしに主はメロメロなのです!》」

「《ぴぴ! そこ、私の場所! 返して!!》」


 作者の承認欲求と時間が取れ次第、制作開始!!

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