第151話 【超世界球体=日野シティーミティー=】
「----ここかっ!」
空海大地は、Cランクダンジョン《三日月の塔》の隠し通路へとやって来ていた。
ラーメン屋で大量の佐鳥愛理に襲われるも、持ち前の戦力によって攻撃を振り払った空海大地は、そんな佐鳥愛理達の懐にあった用紙からこの場所で、大きな作戦を行うことを突き止めたのである。
そして、めちゃくちゃ頑張って、ダンジョンの壁をぶち壊して、この隠し通路へとやって来たのである。
「----?! うわぁ、#びっくり したなぁ。もう」
隠し通路の奥、そこに居たのはダブルエム。
左手に杖を、そして右手に少し大きめの【世界球体】を持って、今から杖のくぼみに【世界球体】をはめ込もうとしているようであった。
そんなダブルエムの足元には、1人の少女がすやすや眠り続けているみたいであった。
「あれ、なんで大地くんがここに居るの? 佐鳥愛理ちゃんが対処してるはずじゃあ……」
「その佐鳥愛理から頼まれたんだよ、ダブルエムを止めてくれって」
佐鳥愛理の持っていた用紙を、空海大地は見せつける。
「『#私 は日野シティーミティーと共に、Cランクダンジョン《三日月の塔》#お くにて、作戦を実行い#たす 事となりました。つきましては、そちらの#け んが終わりましたら、こちらに#て 合流お願いします Byダブルエム』って。
----#(ハッシュタグ)の所を繋げれば言葉が出来るだなんて、謎解きにもなりませんよ」
#(ハッシュタグ)がついた言葉を繋げれば、次のような文章が出来る。
『#私#お#たす#け#て』----『私を助けて』という。
「佐鳥愛理はお前が助けを求めてるんじゃないかって、そう思って俺をここまで運んだんだよ」
「----? 分からないですね、サトエリちゃんはあなたへの恨みが強いはずなのに? #そもそも そのような文章、ただの言葉遊びでしょう? サトエリちゃん、そんな事であなたに助けを求めるとは思えないんですけど?」
そう、佐鳥愛理はめちゃくちゃ嫌そうな顔で俺に依頼してきた。
接続詞として『殺す』をめちゃくちゃ入れながら、彼女は嫌そうな顔で俺に依頼したのである。
『あんたの事は殺すくらい苦手で殺すけど、今はダブルエムを……うぐっ、あんたに頼むのは心底嫌で死にそうになるけど……ごめん、助けてあげて。あんたは殺したいけど……今のダブルエムは……もしかすると……』って。
「ただの言葉遊びなら、佐鳥愛理もお前に頼まなかっただろう。
----お前にこの文章の真意を聞きに行った、分身の一人が殺されさえしなければ」
ただの言葉遊びとしてならば、『私を助けて』なんてのも笑い話で済む話だ。
しかしそこに、真意を聞きに行った分身の一人が殺されるという話がなければ、だ。
遊びのはずなのに殺されるだなんて、あまりにも不思議な話じゃないか。
「じゃあ、なにから助けるのか? それについては、お前の話がヒントになった。
【三大堕落】の設立のお話----【"三"つの"大"いなる魔王の力を持つ者達による、主様を"堕落"させる同盟】が、お前らのパーティーの語源なのだろう?」
そして、このパーティー名を踏まえて、佐鳥愛理は1つ、嫌な予想を立ててしまったのである。
「ダブルエム----いや、お前はダブルエムじゃない。
お前は、彼女の身体の中に居る魔王……だろう?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
身体の中に強力な力を持つ化け物を宿した者の中には、その化け物に身体を乗っ取られるという話がある。
「あぁ、こいつは生に執着してないからな? #乗っ取る のは簡単だったぜ」
クククッ、不気味にダブルエムは笑っていた。
「まぁ、こいつの身体に染みついちゃった#(ハッシュタグ)付きの#会話 とかまでは治らないんだ。まぁ、それでも良いと思っていたが----まさか、メモで事態を知らせるとはなぁ」
ダブルエム----いや、彼女の身体を乗っ取っている魔王は、そう答える。
「そうだなぁ……いつまでもダブルエムと呼ばれるのも変だしなぁ。魔王の時の名前の【シルガ】とでも名乗っておこう」
ダブルエムの身体を奪い取った魔王であるシルガは、俺にそう語る。
「シルガ様の目的はなぁ、今ここに達成したんだ。コイツらも目的を達成して、浮かれてたからよぉ。隙を突くのは簡単だったぜ。
まぁ、あの佐鳥愛理が、お前をここに寄こすのは想定外だけどよぉ~」
「何をする気かは知らないが……既にお前の弱点は分かってる!」
大地は、すぐさま麻痺や凍結などのダブルエムの弱点である状態異常攻撃を発射する。
不老不死であるダブルエムの弱点である状態異常攻撃を全部喰らいながら、「ククク」と笑っていた。
「----効かねぇよ、ばぁか。そんな弱点、#乗っ取った 時点で、解決済みだっての!!」
シルガは杖を捨てると、持っていた【世界球体】を自分の顔の前まで持ってきていた。
「(なんだ、あの【世界球体】? なにかいつものとは別の気配がする。----【鑑定】!)」
と、大地は【鑑定】して、その正体を知って、驚く。
===== ===== =====
【
佐鳥愛理が開発に成功した、異世界そのものを球体の中へと閉じ込める技術の産物の強化版。この球体の中には、【日野シティーミティー】と呼ばれる者が封じ込められている
人を呪い殺すほどのエネルギーが、彼女を【旧支配者】という
===== ===== =====
「驚いたかよぉ、おい? この球の中には、存在の重さという意味ではお前と同じくらい、【世界球体】なんかでは収まりきらない女が入ってる。
抵抗すらしなかったぜ、効かないと分かってるからよぉ。
----なんでこれが、
そいつは【一寸法師】をモチーフにしたダンジョンでレアスキルを手にして、【あらゆる物を大きくする】っていうスキルを持ってた。だから、そのレアスキルで、この【世界球体】の大きさを変えてもらったんだ。より大きな世界を閉じ込める仕様にな」
そして、その強力にしてもらった【世界球体】の力で、日野シティーミティーを閉じ込めたんだそうだ。
「(なんのために? あのシルガって魔王は、何を企んでる?)」
大地が警戒していると、シルガは「あぁ~ん」と大きく口を開けて、
ぱくりっ!!
と、
【世界球体】を、日野シティーミティーが入った【超世界球体=日野シティーミティー=】を。
「このダブルエムって身体の
職業の能力としては、『食べた物を別の形に変える、もしくは自身の一部にする』ってな。今はそのうちの後者の方を使うつもりだ」
「自分の一部に……もしや、あの日野シティーミティーの強力な力を?!」
「そう、コイツの力を、シルガ様と融合してやろうって話さ」
大地が驚いている間にも、既に作業は終了していた。
ダブルエムの身体の真ん中、心臓部分に日野シティーミティーが入った【超世界球体】が埋め込まれてるかのように現れ、身体全体が真っ青な炎に包まれていた。
「【旧支配者】のコイツのスキルは便利でよぉ~。なんてスキル名だったか? 『世界を望む時間まで巻き戻す』っていう効果のスキルがあってよぉ。
----で、シルガ様は思った訳よ。そのスキルと、こいつの【工場】のスキルを組み合わせれば、面白いことが出来るんじゃねぇかってよぉ」
既にシルガは大地のことを何とも思ってなかった。
無理もないことである。
日野シティーミティーにダメージを与えられなかった空海大地の攻撃だなんて、日野シティーミティーの力を持つ今のシルガにもまた無意味な攻撃でしかないのだから。
「今、見せてやろう。特別に、お前だけは範囲から外してやんよ?
『世界を、この世に住まう全ての者達よ! お前らは巻き戻される! 自分達の意識も分からないまま、やり直させられる!』 ----【旧支配者】専用スキル、【リ・セット】!!」
===== ===== =====
【リ・セット】の力が 発動
世界の全ての時間が 逆行します
===== ===== =====
そして、世界は強制的にやり直される。
大地の目の前で、空気が、空間が、どんどん過去へと遡っていく。
「さらに! 世界の全てを、やり直しという形で今、シルガ様は包んでいる!
----つまりは、シルガ様の力で、もっと言えばシルガ様が飲み込んでるって言う事だよな!
今こそ、見せよう! 【工場】専用スキルと【旧支配者】専用スキルの、合わせ技!!
世界は全て、シルガ様の思い通りに作り替えてやる!
見せてやろう----スキル【
===== ===== =====
【
逆行中の世界が 魔王シルガの 思い通りに 改変されます
===== ===== =====
「そう、世界はこのシルガ様の思い通りだぜ」
そして、世界は書き換えられた。
魔王シルガという、とんでもなく強大な力を持つ魔王の手によって。
(※)【
【工場】の力と、超強力な日野シティーミティーの【オーバーロード】の合わせ技によって生み出された、究極の世界改変の技。【オーバーロード】の力で世界全体を包み込んで白紙へとリセットし、【工場】の力によって自分の好きなように、世界を作り直すスキル
このスキルの恐ろしい所は、世界を作り替え直したことを気付かない"修正力"。もし仮に、このスキルの範囲から逃れた者は、その者の代用が用意される
愛し合う者には新たな恋人を、競い合うライバルには新たな敵を----と、その者の場所に新たな者を再配置して、彼らから居場所を奪い取るのである
もし仮に、このスキルの範囲から逃れた召喚獣が居たとすれば、【召喚士】には別で、新たな絆を結んだ召喚獣が用意されている事だろう
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