第4章『ダンジョンの試練、最強の黒鬼と雪ん子に師匠?!/雪ん子(オーバーロード)の章』
第115話 プロローグ
「----結局、あなたも正解できませんでしたね」
日野シティーミティーは悲しそうに、ただ俺達を見下しながらそう言う。
俺達は、そんな彼女の侮蔑に満ちた視線をただ見ているしかなかった。
日野シティーミティーの、自由自在に動く青い髪によって、俺の召喚獣達が全員、拘束されているからだ。
レベルⅣ以上になるために参加した、【ダンジョン研修】。
もう既にレベルⅢからレベルⅤになることも決定して、後はのんびりしようかと思っていた俺達の前に、彼女は、日野シティーミティーは突然現れて、勝負を挑んできたのである。
召喚獣1組ずつによる、ハンデ付きマッチ。
相手が使うのはレベルⅢの召喚獣だけで、こっちは雪ん子、ファイント、ココアとマルガリータと言う、レベルアップ済み召喚獣。
明らかにこちらが勝つのは目に見えていたので、俺は勝負を了承した。
しかしながら、俺の召喚獣は惨敗した。
先鋒、手始めに出したココアとマルガリータの2人は、敵の繰り出した吸血鬼に倒され。
中堅、次も負ける訳には行かないのでファイントを出したのだが、ファイントが最も苦手とする召喚獣に翻弄負けし。
大将、満を持して登場させた雪ん子も、妖怪特攻の召喚獣に一方的に敗北した。
三戦三敗、それも相手の召喚獣が一方的に勝利する形で。
そして負けた俺の召喚獣達は、日野シティーミティーに無謀な戦いを挑んだ。
そして、日野シティーミティーの青白いデータが集まってできた髪によって拘束された。
一方的な
「"パンはパンでも、食べられないパンって、なーんだ?"----そんなに難しい問いでもないはずなのに、何故誰も正解に辿り着けない?
"マスター"は何故、私にこれを頼んだ? 人はどうして、これで堕落する? 分からない……全然、全く分からない……」
全く理解できないという様子で、彼女はただ呟き続ける。
既にその視線の先に俺達の姿はなく、空虚な目で空を眺めていた。
「くっ……」
「君にも、がっかりだよ。冴島渉くん」
日野シティーミティーはゆっくり膝を曲げて、俺と視線を合わせながら、俺の顎に手を触れていた。
そして、クイッと持ち上げていた。
「君、正確には君の召喚獣たる雪ん子ちゃんには希望があった。私の目的を達成できるんじゃないかって、そういう希望があった。
"争いは同レベルの者同士しか生まれない。故に美しい物語があるんだ"----"マスター"はそう尊い顔で語っておられましたが、私と同じレベルの者がいないんだから、その美しい物語も見れない。見れないんだから、私の目的はずっと----おっと……」
「語りすぎましたね」と、日野シティーミティーの瞳に青い炎が宿る。
「でも、あなたには可能性がある。他の者にはない、私の目的を達成するかもしれない希望がある。
そして、あなたのそのスキル----【召喚 レベルアップ可能】。そのスキルが先の通りの力だとすれば、まだ可能性は残っている」
「俺のスキルを……どうして……?」
俺は戸惑う。
何故なら、彼女には俺のスキルについて
【召喚 レベルアップ可能】は俺の命綱であり、俺のキーとなるスキルだ。
それを言うほど、バカじゃない。
「(もしや、【鑑定】スキルで?)」
ガシッと、彼女は俺の頭を鷲掴みにする。
ヒシヒシと、彼女が力を強めるごとに、俺の頭に痛みが刻み込まれていく。
「君には見込みがある。君のスキル、そして召喚獣----それだけでも素晴らしかったんだけど、君が提案してくれてる作戦もとても良い。実に私好みな作戦だった」
「俺が提案した作戦? そんなの、してないぞ?」
「君は口にはしていない、けれども君の思考が私に提案してくれた。この青い髪が、うねうねと動く髪によって読み取った思考で」
うねうねと、彼女の青い髪は俺の頭に巻き付いていく。
「"
-----なので今から、私のとっておきのスキルを使いたく思います」
日野シティーミティーは青白い髪を、俺の顔へと巻き付けて、そして----
「"この世界よ、さようなら。あなたと私の縁だけ残して、さようなら。
私を含めて、全ての人間は知覚することなく、ただやり直す"
この日野シティーミティーの
その名も----【リ・セット】」
そして、彼女がスキルを発動すると共に、世界は真っ白な光に包まれたのであった。
===== ===== =====
【
《オーラ》、《マナ》、《スピリット》、《プラーナ》の四大力のいずれにも属さず、全ての四大力の性質を受け継ぐ《オーバーロード》を操れるようになる
また、この職業の場合、他の四大力を全て無効化することが出来るようになる
【リ・セット】 【
【旧支配者】のみが使える、時間遡行スキルの1つ。職業の本人と対象の人物1人の間に縁を結び付け、再び会うという結果だけを残し、全世界をやり直すスキル
当人ですら、やり直したことを覚える事は出来ず、ただし縁を結び付けられた相手は必ず前回とは違う結果を見せる
===== ===== =====
………
……
…
===== ===== =====
【リ・セット】の力が 発動
世界の全ての時間が 逆行します
【《悪の手先》吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世】と 【悪癖龍マルガリータ】による 抵抗を 確認
【召喚 レベルアップ可能】によって 記憶保持を 試みます
……
【融合召喚】の 影響を 考慮します
……
失敗しました
【リ・セット】の 影響を 実行します
【《悪の天使》聖霊ファイント》】による 抵抗を 確認
【召喚 レベルアップ可能】によって 記憶保持を 試みます
……
成功しました
【リ・セット】の 影響を 回避します
【《悪童ポリアフ》雪ん子】による 抵抗を 確認
【召喚 レベルアップ可能】によって 記憶保持を 試みます
……
成功しました
【リ・セット】の 影響を 回避します
続きまして 【ネットショッピング】のスキルを 発動
……
【アクセサリー ヒトデ】を 購入
スキル【アクセサリー:夢を叶えるヒトデ】を 取得しました
……
セットを 確認
以上を持って 【リ・セット】の 本実行を 開始
世界は 冴島渉による 【ダンジョン研修】前まで 時間逆行致します
===== ===== =====
そして、世界は巻き戻る。
日野シティーミティーと俺がもう一度会う事だけ約束されて、ただ世界は巻き戻される。
俺は日野シティーミティーの事を忘れ、彼女も俺の事を忘れて。
俺が【ダンジョン研修】を受ける、数日前まで、世界は巻き戻されたのであった。
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