第116話 矛盾=消しゴム付き鉛筆

~前回までのあらすじ!!~


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 【リ・セット】の 本実行を 開始

 世界は 冴島渉による 【ダンジョン研修】前まで 時間逆行致します

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 【三大堕落】の1人、日野シティーミティー。

 彼女は冴島渉と戦い、彼に興味を持った。

 そこで、彼ともう1度戦うという縁を結び、スキルを用いて、世界はリセットしたのであるっ!!


 冴島渉が、再び日野シティーミティーと会うまで、あと----



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 一般的に、【召喚士】とは、自らでは戦えないはずれ職業だとされている。

 そして他にも、【世界球体パンクスフィア】なる物が破壊された際に新しく追加された【桃太郎】や【機動要塞】などと言った職業ジョブ

 さらには【召喚士】ほどではないがはずれ職業だとされている職業ジョブなどもある。


 レベルⅢまでは、以前に同じ試練を突破した者の幻影をぶち倒すことによってレベルアップできる。

 そういう仕様になっていたのだが、レベルⅣ以上へと上がるためには試練内容がガラッと変わっていた。


 それが、多くの他の職業ジョブの冒険者とも合同でやる、【ダンジョン研修】。

 レベルⅢ、そしてレベルⅣの冒険者を対象とした、特別な試験。


 レベルⅣ以上が主戦場としている、Cランク以上の大型ダンジョン。

 そういった大型ダンジョンにはボス魔物が複数体おり、冒険者を管理する市役所はこれを試練として利用したのである。


 まず、既定のCランクダンジョンを設定。

 そして、そこにいるダンジョンボス魔物に、市役所職員がボスの強さを判断。

 そして、「何体、ボス魔物を倒したか」「どれくらい強いボス魔物を倒したか」によって、レベルアップの条件としたのである。


 めちゃくちゃ弱いボス魔物だと、1ポイント。

 そこそこ強いボス魔物だと、50ポイント。

 ----まぁ、要は出来る限り強いボス魔物を複数体倒せば、早くレベルアップできますよっていう話だ。


 勿論、1日とかで決まる話ではなく、1か月かけてこの研修は行われる。

 何人で受けても良いし、ポイントがそれによって分散されることはない。

 だから、出来る限り強い冒険者同士で、強いボス魔物を倒せば、この研修は速攻で終わらせられる。


 そして今回の目玉は、今回のダンジョン研修に選ばれたCランクダンジョン《三日月の塔》のシークレットボス魔物。

 この《三日月の塔》には全部で6体のボス魔物がおり、そいつらを全員1回ずつ倒すと、出現する隠し通路。

 そこにいるシークレットボス魔物は、なんと驚異の1万ポイントで、さらには今のレベルをⅡも上げてくれるという代物だ。


 この6体全員を1回ずつ倒すという条件は、1人で達成する必要はない。

 6種類のボス魔物がそれぞれ落とす証を全種類集める、これがシークレットボス魔物への道を開くカギ。


 まぁ、ぶっちゃけ初日でこの条件を達成したパーティーが現れたのだ。



 彼らは全員がレベルⅣ----【剣士】が2人、【勇者】が2人、そして【格闘家】が2人の、合計6人の即席パーティー。

 回復なんて必要なく、圧倒的な火力によってそれぞれにボス魔物を倒した6人。

 彼らはシークレットボス魔物を倒すために、6種類の証を揃えて、シークレットボス魔物の場所へと繋がる秘密の道をこじ開けたのであった----。



「まぁ、そんなあなた達は見せ場もなく、名も知られず、無様にやられるわけなんですが」


 と、そんな6人の超火力冒険者達を一撃で倒した黒鬼は、フッと侮蔑の目を向けていた。


 黒くてゴツゴツした筋肉質な肌を持つ、三本角を持つ黒鬼。

 緑色の【HB】という文字が大きくプリントされた学生服を着ている特殊な黒鬼は、"鉛筆模様の剣"と"消しゴム模様の盾"----2つの武器を構えながら、6人の冒険者を見下していた。


「ここから先のシークレットボス魔物とやらの所に行かすわけには、残念ながらいかないんですよ。

 我を召喚した"佐鳥愛理"様の命令によって、理由も分からず、意味も知らされず、どういう事情なのか分からないんだけれども、この先には絶対に通しません」


 冷たく、ただ冷酷に。

 黒鬼は6人の冒険者に、そう冷酷に言い放つ。


「くっ、くそぅ! せめて一撃だけ……!」


 黒鬼に倒された冒険者のうちの1人が、せめてもの一撃と称し、残った力を振り絞って、剣を振りかぶった。

 超火力をメインとした冒険者が、瀕死状態のみ攻撃力を大幅アップする【火事場の馬鹿力】と、使用後に剣が壊れてしまうが攻撃力が大幅に上がる【破滅の剣】の2つを併用して放つ、必殺の剣。


 それは黒鬼にぶつかり、黒鬼の腰辺りから真っ二つに切り裂かれ----



「【消去】」



 そんな攻撃が、一瞬で"なかったこと"になってしまっていた。


「「「----なっ?!」」」


 傷をつけたはずの腰は健康そのもの、そして辺りに飛び散ったはずの黒鬼の血も一切消えていた。

 けれども技を放った証拠として、剣は刀身から砕け散っていた。


 一瞬で傷がなくなったのを見て、冒険者達はびっくりしていた。

 回復だとかそんなちゃちなものではない、傷を付けられたという行為自体が、なかったことにされたのだから。


「残念だったな、名も知らぬ冒険者よ。これこそ我の職業、【消しゴム付き鉛筆】の力。

 "攻撃を『×999』にまで高める事ができ、なおかつそれと同じだけのダメージを失くすことが出来る"----最強の攻撃力を誇る鉛筆の矛、そして無敵の防御性能を誇る消しゴムの盾。

 最強の矛と最強の盾の2つを併せ持つ、この【《消しゴム付き鉛筆》黒鬼】様を倒す人なんて、どこにもいないんですよ」



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 【《消しゴム付き鉛筆》黒鬼】 ランク;?

 自由に世界を変革する聖剣"消しゴム付き鉛筆"と共に世界を救済する勇者が活躍する世界を閉じ込めた【世界球体=消しゴム付き鉛筆世界=】の力を得た、黒鬼の召喚獣。倒すと、オーラ系職業の1つ、【消しゴム付き鉛筆】を使用することが出来るようになる

 鉛筆の力によって自分の攻撃を『×999』まで高める事ができ、消しゴムの力でそれと同じだけのダメージを自分から消し去ることが出来る。さらに、力を溜めればもっと凄い事が出来るのだ

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 そして《消しゴム付き鉛筆》黒鬼は、絶望した表情の6人の冒険者に手を差し伸べる。


「我はあなた達を殺しはしない。ただ、もう二度とこの辺りに来ないように、絶望という二文字を書き記すだけ。

 ----試練だか何だか知りませんが、もう冒険者なんて辞めるべきですね」


 精一杯の抵抗すら、この黒鬼には意味がない。


 超火力を自慢としていた6人の冒険者達は、その超火力が効かないと知って、抵抗すらせずに黒鬼に連れられて、ダンジョンの外へと放り出される。

 そして、6人の冒険者をダンジョンの外へと放逐した《消しゴム付き鉛筆》黒鬼は、元の秘密の道の所へと戻る。


「ここを通れるのは、条件を満たすモノ。佐鳥愛理様が設定した、特別な冒険者達。

 ----そう、我を倒せる特別な冒険者は、"あの方"だけ」


 その冒険者が来るのを待ち望みつつ、《消しゴム付き鉛筆》黒鬼は今日もそこで冒険者を待ち続けるのであった。

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