第133話 第1回戦:炎とバレンタインの吸血鬼(3)
「そして----絡め取った魔法は、これでお返ししましょう!」
フサッグアは泡立て器型の武器を振り回して、絡め取っていたココアの雷魔法を打ち返してきた。
打ち返された雷魔法はクリーム塗れとなって、ココア姉妹へと襲い掛かって来た。
それに対して、瞬時に反撃を行ったのは、マルガリータであった。
彼女はいつもよりも短く、かつ濃密に、空気と魔力を身体の中へとため込む。
「『わっ!!!!!』」
そして、それを一気に吐き出す。
吐き出された『わっ!!!!!!』と言う言葉はいつもの何倍も大きく、そしていつもの何倍も速かった。
クリーム塗れの雷魔法と、マルガリータのスキル【悪癖音波】によって具現化した文字が、ぶつかり合う。
2つの攻撃はお互いにぶつかり合い、マルガリータの放った文字が絡め取られた。
「シティーミティー様が仰られたでしょ? この私は魔法を使う、《マナ》を使う者にとっては天敵のような存在。それが《マナ》である限り、私の魔法に絡め取られて、私の支配下になるのですよ?」
雷魔法に纏わりついていたクリームは、マルガリータの魔法文字をも絡ませる。
クリームは、雷魔法とマルガリータの魔法文字の2つをぺったりと絡ませて、マルガリータへと向かって行く。
「無駄ですよ。相殺するどころか、あなた達の魔法は全てこの私の戦力になるのですから」
魔法文字も加わり、さらに強力となったフサッグアの魔法。
その魔法を、マルガリータが"地面"へとぶつけていた。
自分の拳を地面へと叩きつけ、闘技場の地面に亀裂を与えて、切り出して投げつけたのである。
「ふふんっ、可愛いボクは見ていたよ! さっき、可愛いボクの魔法文字が地面に触れた瞬間、消えたのをね!」
マルガリータの身体は、うっすらと黒い霧に覆われていた。
あの黒い霧は【ミステリアスドラゴン】-----霧を纏っている間は、攻撃力が3倍になるというスキルで生み出された霧である。
すなわち、今のマルガリータの攻撃力は、3倍にパワーアップしているのである。
「物理?! シティーミティー様、相手、純粋なる物理で来ましたよ?!」
「《マナ》系統の職業【杖使い】とか関係なく、純粋なる力で来ましたか……
自分の魔法が地面を飛ばして防がれたことにフサッグアは動揺しつつも、自分の身体を
しかし、そんな精霊達はマルガリータの走りに追いつけない。
龍の召喚獣であるマルガリータが、【ミステリアスドラゴン】の霧を受けた状態で本気で走れば、ぷかぷか浮かぶ精霊なんて普通に追いつけないのである。
「----いっくよぉ~☆ 可愛いボクの、ドラゴンラッシュ!!」
いつの間にか、フサッグアの懐に潜り込んでいたマルガリータは、そのままラッシュを放つ。
職業による補助もない、ただの乱れまくったラッシュ攻撃。
しかし、その威力は確かに本物で、フサッグアの懐に大きな穴を開けていた。
「ぐふっ……!!」
「おまけに、これならどうです? 【二人三脚】、そして【管狐ノ支援】!」
マルガリータが腹に穴を開けたのと同時に、ココアがスキルを2つ発動させる。
【二人三脚】のスキルが発動するとココアとマルガリータの間に、うっすら透明な線が結ばれて、ココアはそれを確認すると【管狐ノ支援】を自分に向かって発動させていた。
それと共にココア、そしてマルガリータの身体が変化していく。
2人の健康的な肌が少しずつボロボロになり、肌と肌の間から骨が露出していた。
「もうっ、妾の姉御! いきなり可愛いボクの肌をこんなにしないでくださいよ!」
「安心するのじゃ、マルガリータ! それでも、お主の身体は"びゅてぇい"じゃからのぉ!」
2人の身体はまるで
===== ===== =====
【二人三脚】のスキル効果により 吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世 悪癖龍マルガリータ 両名の間に ラインが結ばれました
ラインの効果により 体力と 種族を 共有します
【管狐ノ支援】のスキル効果により 種族が 変更されました
吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世は 邪霊族に 変更されました
悪癖龍マルガリータは 邪霊族に 変更されました
===== ===== =====
そう、2人の種族は----ゾンビやアンデッドなどの邪霊族に変更されていたのである。
2人の身体は、死んでいる肉体に変わっていたのである。
召喚獣は俺が《マナ》で呼び出した魔法攻撃、のような物。
【管狐ノ支援】は"魔法攻撃の魔法属性を変更できるようになる"スキルであり、魔法攻撃と認識したことで、召喚獣の種族も変更できるようなった、と、以前にココアが話していた。
この間、実際に試して出来るようなっていたが、【二人三脚】のスキルを使う事で、マルガリータ限定ではあるが、相手が遠くにいても種族を変更できるようなったという事だろう。
なんで、いきなり邪霊族に変えたんだろうと思っていると、それはすぐさま分かった。
フサッグアは自分の身体を
吸血攻撃、吸血鬼お得意の攻撃方法。
相手から体力を奪い取って、自分の体力を回復させる攻撃方法である。
呼び出された炎の精霊達はマルガリータから体力を吸い取って、フサッグアは"逆にダメージを受けていた"。
「ぐふっ……吸血で、体力が逆に減って?!」
「あなたがそんな恰好であろうとも、吸血鬼であるのは確かなんじゃろ? だったら、妾と同じ弱点のはずじゃよな? そう----"吸った相手が死者だった場合、ダメージを受ける"という、な?」
そう、ココアが自分とマルガリータの種族を、邪霊族に変化させたのは、このためだったのである。
自分達の身体を死者として、吸血攻撃をしても、体力を回復させないという----。
「マルガリータ! ヤツの手を押さえるんだ!」
「うんっ! ここは肉体は死んでるとしても、可愛すぎちゃうボクにお任せぇ!」
----ガチッ!!
マルガリータはフサッグアの腕を、動かないようにがっしりと押さえていた。
先程から自分の身体を擦って炎の精霊達を発生させていたし、あの腕を押さえて擦れないようにすれば、もう精霊は出せないだろう。
そして、フサッグアは徐々に、足元から消えていく----。
体力がもうほとんどなくて、【送還】されていってるのだろう。
「(このまま行けば、勝てるっ!!)」
しかしながら----日野シティーミティーは「この程度ですか」と、がっかりした様子でココア姉妹を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます