第122話 【ダンジョン研修】と【魔族】(2)
「初めまして、私----【魔族】の油留木和花と申します。
早速でなんですが、
そこに現れたのは、青い肌の女冒険者。
服のあちこちに裂け目が入ったり、穴が開いていたりとしてる、特徴的な革鎧を着た青い肌の女冒険者は、ニヤリと笑いかけてきた。
「バトり……?」
「うむ、『闘う』という意味をする"バトル"。闘争です、騒乱です、仕合です。
あなたも【ダンジョン研修】の参加者なら、是非とも戦ってもらいましょう! こうでもないと、他の冒険者と合法的に戦うだなんて、出来ませんからね」
「だから、是非とも戦おう」と、青い肌の女冒険者----油留木和花は好戦的にそう宣言した。
「俺には、お前と戦う理由はないんだが? そっちは戦闘に心得があるみたいだけど、こっちは【召喚士】----直接戦うのに向いてない
この【ダンジョン研修】は期間内にボス魔物をどれだけ倒せるかを競う試練であって、冒険者同士の対戦は関係ないはずでは?」
「そうですね。この試練は、ボス魔物を期間内にどれだけ倒せるかの試練。冒険者と協力しても良いし、可能ならば傭兵を雇って攻略しても良い、そういう冒険者としてどれだけの行動がとれるかを見るための試練ですよ。
----ただし、冒険者同士で戦う事を禁止されてない試練なのです」
和花は好戦的にそう口にする。
「この試練、役所の人はポイントを『得る』方法しか教えてませんでしたが、実はポイントを『失う』方法についても、注意事項の1つとして載ってありましたよね?
"同試験を受けている冒険者同士が対戦した場合、一定以上のダメージを受けた相手はポイントを全て失い、3日の間は『ダンジョン研修』を受ける事を禁ずる"ってね? もしかして、注意事項とかまでは、確認しないタイプ?」
和花は「俺がポイントを失う術を知らなかった』という前提で話しているようだが、俺もその方法については知っていた。
----だが、俺は知ってもなお、戦いを積極的に挑む冒険者が出てくるとは思っても見なかった。
なにせ、この冒険者の対決は、勝利したとしても、なにも良い事がないからだ。
負ければ、今までに獲得してあった討伐ポイントを全て失う。
憎い相手に対して、レベルアップさせたくないからという思いで戦いを挑む者はいたとしても、積極的に行動に仕掛けてくるような者は居ないだろうと思っていた。
なにせ、勝ったとしても、なにも貰えないのに、わざわざ自分から戦いを挑む者は居ないだろう、と。
「(居たとしたら、ただの戦闘狂だと思っていたが----本当に居たよ、戦闘狂)」
「さぁ、仕合です。仕合……あぁ、もう良いですね。戦いましょう、戦いましょう、戦いましょう戦いましょう戦いましょう!!
是非とも、戦い合おうではないか! 【召喚士】なら、めちゃくちゃ強い召喚獣を出して、私を楽しませて見せよ!」
----来ないなら、こちらから行こう。
和花は拳を強く握りしめ、そのまま歩いてこちらに向かって来る。
ただ堂々と、歩き方からして堂に入っていた。
「なんじゃ! 余裕を持って、"ひぃろお"のつもりか? 消し飛ばしてくれよう!」
「可愛いボクを無視して、ボスを倒すだなんて許さないよ!!」
しかしながら、俺は何一つ心配してなかった。
何故なら、俺には頼りになる召喚獣----ココアとマルガリータの2人がいるから。
ココアは雷の魔法を、そしてマルガリータは全身から電気を放っていた。
マルガリータが電気を放っているのは、ココアのスキル【管狐ノ支援】の効果だろう。
召喚獣は一見すると生命体に見えるが、その実態は召喚術という《マナ》系統によって呼び出された"魔法生物"という名の魔法攻撃の一種----魔法と生物の中間体のような存在による魔法攻撃と言える。
【管狐ノ支援】は魔法属性を変更できるというスキル、半分は魔法攻撃の召喚獣の身体を、雷属性に変更するくらい、訳ないのだろう。
今のマルガリータは全ての攻撃に雷属性を付与した、氷属性とかを付与して攻撃する雪ん子と似たようなものと言える。
ココアとマルガリータの2人が居れば、ただの戦闘狂を倒すくらい、訳ないだろう。
「障害にもならぬな、合成四大力【黒の
和花は一直線に、ココアとマルガリータの2人が呆気に取られてしまうくらい素早く近付くと、2人を蹴り飛ばす。
威力はあるが、蹴られただけだと思っていたら、2人の身体が"消え始めていた"。
「まさか、一瞬で?!」
そう、あの消え方は、和花が一瞬であの2人を倒したという証明だ。
まさか、ただの蹴りで、俺のレベルアップ召喚獣が一撃でやられるとは……。
「1つ言っておくと、私は戦闘を楽しむタイプの人間。そして、レアスキルを手に入れたい人間です!
あなたも冒険者であれば、スキルの重要性は理解してましょう? そして、スキルと言うのは、その人間が為した成果によって、得られるスキルは違ってくる。
獣属性を狩りまくれば獣属性に対する特攻スキルが得られるように、私は人をたくさん狩りまくる! そうやって、世界初! 人と戦う際の特攻スキルというレアスキルを手に入れる! レアスキル、レアスキルのために、冒険者を狩りまくってるのですよ!」
「最悪の、戦う理由だな」
俺がそう言うと、和花は「なにを言う」と憤慨していた。
「これこそ、これが冒険者としての矜持! 戦いに心を躍らせ、レアスキルを取るために切磋琢磨し、冒険に胸を躍らせる!
ダンジョンでしか、冒険者でしか味わえない闘争こそ、冒険者として戦う理由じゃないですか!」
ウキウキと、和花は嬉しがっている様子みたいだ。
「----と言うか、それじゃなかったらなんで冒険者なんてやってるの? おかしくない?」
……え? これって、俺がおかしいの?
俺がおかしい、っていう流れなの?
「だが、私は戦闘を楽しむ、真っ向からの戦いを楽しむ冒険者。闇討ちや騙し討ちなんかは、私のプライドとしてやりませんが、それ以外はする戦闘特化の冒険者。
あなたの攻撃を全て捻じ伏せ、そのまま真っ向からあなたの身体を倒して見せましょう。だから、【召喚士】よ。
----さぁ、戦い合いましょう? 【召喚士】さん?
この私が手に入れた最強レアスキル、【
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強制戦闘が 発生しました!!
冒険者と戦い 勝利しましょう!!
〇【
冒険者ランク;不明
クラス;魔族
レベル;Ⅲ
命題;四大力を全て扱うことが出来るが、武器を持つことが出来ない
レアスキル;【
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