第114話 エピローグ
----後日談。
Sランクの超難易度ダンジョン《ルベバの塔》で、俺はとうとう甘言のシーヴィーを撃破することが出来た。
ヤツのドロップアイテムとして出現した魔石(大)と、甘言の仙薬。
魔石(大)の方は遠慮なく売り払ったが、甘言の仙薬については、正直、どう活用することが正解なのか悩んでいる。
なにせ、コイツは紛れもなく、売りさばくのが危険なアイテムであることがはっきりしているからである。
===== ===== =====
【甘言の仙丹】……甘言のシーヴィーから取り出すことに成功した、ありがたい霊薬。飲むと甘く優しいイケメンボイスと美少女声を使い分ける事が出来るようになる
効果;服用すると【
===== ===== =====
説明文には、"
むしろ、害悪な嫌がらせの類ではなかろうか、これは。
「(これ、持ってたことが分かった時点で、甘言のシーヴィーを倒したのがバレるのが確定してるじゃないか!? いやだよ、そんな事で目立ちたくないんだよ、俺は!!)」
そう、俺はそもそも目立ちたがり屋とかのキャラではないし、今は出来得る限り目立つ確率をゼロにしたいのだ。
それは俺がレベルⅣ……いや、もしかするとレベルⅤになれるかもしれない、次の【召喚士】レベルアップの試練が関係している。
次の試練は以前のような同じ【召喚士】と仮想【召喚士】とのバトルではない。
多くの他の
Cランク以上のダンジョン----ダンジョンボス魔物が複数体いるダンジョンに1週間ほど潜り、何体倒せるかという試験なのだ。
上がらせたくない冒険者の妨害や、成績次第ではレベルを下げられるかもしれないという危険な試練。
ただでさえ命題のせいで、他の冒険者と組めないのだから、目立つ行動は避けるべきだろう。
次の試練のためにも、ごくごく普通の【召喚士】としていないと。
目立って、嫌がらせを受けるのはリスクが高すぎる。
ただでさえ、うちはキャラが濃い召喚獣が大勢いるんだからな……。
「(下手に売りさばいてさよならみたいな事も危険度大な案件だし、逆にこれと言ってあげるべき召喚獣も居ない。捨てるのも勿体ないし……いっそ、【黄金召喚】にでも?! いや、シーヴィーもどきを作りたい訳じゃないしなぁ)」
「の、のぉ、主殿」
と、どうやってこの甘言の仙薬を処理するか悩んでいると、ココアがゆっくりとこちらに近付いてきた。
その様子はまるで今から怒られるのを怖がる小学生を見ているみたいだった。
「どうした、リタの事で何か問題が?」
「いや、妹の事で迷惑なぞ、妾が感じるはずがなかろうて」
そうそう、リタ----悪癖龍マルガリータの件も話すべきだろう。
彼女は【融合召喚】の副作用で消える事はなかったが、代わりに厄介な特性を有してしまった。
それが、ココアと一緒に召喚されるということだ。
ココアを召喚すれば同時にリタも召喚され、ココアを送還すればまた然り。
まぁ、ちょっと特殊な
ココアは迷惑とは思ってないが、当の悪癖龍マルガリータ本人からしたら不満ものだったみたいだけど。
『むむむっ、可愛いボクを輝かせるには、妾の姉御と共に召喚するなんて……。可愛いボクは、出来ればセンター1人で生きていたんだけどなぁ~』
と、めちゃくちゃ不満気だったのだが。
まぁ、そうでないとリタは溶けてしまうのだから、仕方ない。仕方ない。
「で、違うなら、どうしたんだ?」
「じっ、実はのぉ~……えぇい! 吸血鬼は度胸じゃ!」
ごほんっと、大きく息を吸った後、意を決したココアは----
「わっ、妾ぁ~、お稲荷さんが食べたい……コンっ」
----なんか手で狐さんまで作って、お稲荷を要求していた。
「…………」
「~~~~~っ!! しっ、失礼するのじゃああああああああああああああ!!」
ぴゅーっと、まるで風のように逃げていくココア。
「……うん、見なかったことにしよう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ファイントは、迷っていた。
そう、雪ん子について。
「《ぴぃ~♪》」
今、雪ん子は髪飾りを付けて、嬉しそうに微笑んでいた。
あの髪飾りはドロップアイテムではない、それこそが問題なのである。
===== ===== =====
【《悪童ポリアフ》雪ん子】 レベル;Ⅲ+4
個体レベル;4
種族名;雪の女神ポリアフ(←雪ん子)
装備職業;悪の剣士
攻撃力;C+14→C+20
属性攻撃力;C+25→C+31
防御力;C+14→C+20
素早さ;C+15→C+21
賢さ;B+45→B+51
固有スキル;【氷炎の申し子】;全ての攻撃に対し、氷属性と炎属性を付与する。同時に付与する事や、どちらか一方を付与するなど、オンオフも可能となった
;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する
;【ハワイアン・ドリーム】;幸運をもたらす力。仲間の攻撃が当たりやすくなり、相手の攻撃が外れやすくなる
;【炎属性無効化】;炎属性の攻撃を全てゼロにする
後天スキル;【剣技】;剣などの武器を持つ時、強力な技を発動する
;【王剣術・覇】(NEW!!);王族が習う、最強の剣術の1つ。全ての守りを捨てる事で、相手に極大ダメージを与える必殺の剣術を発動できる
;【神属性付与】;全ての攻撃に神属性を付与する。神属性とは、周囲の魔力を集めて攻撃力を上げる特殊属性である
;【オーラ制御(中)】(NEW!!);オーラの力を身体の一部に溜めるなど制御するスキル。オーラを使う際、補正効果が発生します
;【嗜虐性】;相手を痛がらせるほど、ステータスが上昇する
;【殺意の目】;敵の弱点を瞬時に見抜くが、殺人衝動が起きるようになる
;【忠実なる奴隷】;主に逆らわなくなる。また、主の命令を受けると戦闘能力が上昇する
;【ステータス表示偽装】;装備アイテム効果。ステータスの一部を鑑定不能にし、このスキルの存在を相手から見えなくする。現在適用;《悪の手先》、《悪の剣士》
;【王家の瞳】;装備アイテム効果。隠し通路を見つけやすくなります
;【慕われし王】;装備アイテム効果。パーティーに居る同族の数だけ戦闘能力が上昇します 該当同族;【悪属性】、【氷属性】、【炎属性】、【精霊族】のいずれか
;【ネットショッピング】(NEW!!);金銭やそれに類する貴重品を消費して、ダンジョン内からでも物を買うことが出来るスキル。また、物を売って金銭を得る事も可能である
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【王剣術・覇】だとか、【オーラ制御(中)】よりも、もっとヤバいスキルを雪ん子は手に入れた。
そのスキルこそ、【ネットショッピング】----ダンジョンの中からでも、普通に現代の物を買うことが出来るスキルだ。
直接的な戦闘能力とは全く関係なく、一見、ヤバいスキルには見えないかもしれないが……ファイントには、このスキルの危険性が理解できた。
そう、今、雪ん子は"
今はただ【ネットショッピング】という形で済んでいるが、もしもこれが----ダンジョンの外へ移動できるスキル発現の予兆だとしたら?
「(多分、あのイペタムとの戦いで発現したんでしょうけど……めちゃくちゃヤバいスキルである事は確かだね☆)」
だから、ファイントは迷っていた。
「(----あぁ、ご主人に
このスキルを知ったら、ご主人----冴島渉はどう思うだろう?
自分と同じように危険性を感じ取れるだろうか、それとも何も感じ取れないだろうか?
そして、雪ん子までダンジョンの外へ出られるようになった時、彼はどう思うだろうか?
「(良いっ! やっぱり、このパーティーは面白い事てんこ盛りですねぇ~☆)」
「《~♪ 可愛イかな? 主、褒めテくれるカナ?》」
「うん♪ 褒めてくれると思うよ☆」
ファイントは心の底に今芽生えた悪事を押し込めて、雪ん子にそう返答するのであった。
《3章 完》
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