第110話 出でよ、妾だけの融合召喚獣(2)

 俺は2色のスライム状に変質させた召喚獣を合体させる。

 赤いスライムへと変質させた、スレイブバット。

 青いスライムへと変質させた、エルダードラゴンエッグ・アルター。


 2つのスライムが混ざり合い、紫色のスライム状の召喚獣が生まれるのであった----!!


 うねうねと、紫色のスライム状の召喚獣は新たな姿へ、【融合召喚】によって生まれた召喚獣としての姿へと変化していく。


「(おいおい、これって丸っきり前のと同じで----)」


 そう思った、その時である。



 ----ビリリリッ!!



 なにか布状の物が切りさかれる音が聞こえた。

 音の方向を向くと、そこにはココアが、《悪の手先》吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世が、


 背中からひらひらとたなびかせていた黒マントを、根元から引きちぎっていたのだ。


「~~~~っ!!」

「おい、ココア! 止めろって!!」


 俺は慌てて、ココアの行動を止めに入る。


 ココアがやっているのは、ただ服を引きちぎった程度の行為ではない。

 例えるならばそれは兎が自らの毛皮を無理やり引きちぎるかのような、召喚獣が自らの存在を根元からぶち切っているのである。

 引きちぎられた根元の方からは、魔力がうっすらと傷ついて、こちらに傷口からこんにちは状態になっていた。


「だ、大丈夫なのじゃよ。これこそが、これだけが・・・・・、この不安定な【融合召喚】を安定させる方法なのじゃ」


 明らかに弱っているココアだが、それでも彼女はさっと移動すると、引きちぎったマントを、変化がまだ完了していない紫色のスライムへと、ぶち込んだ・・・・・



「主殿は、2体の召喚獣を《スピリット》の力によって、不安定な状態にした。故にだからこそ、2体の召喚獣はお互いに結び付き合い、新たな姿へと変わることが出来るようになった。

 しかしじゃが、2体の召喚獣が融合したところで、本質は何も変わっておらん。新たな姿へと変わっただけで、2体の召喚獣は不安定のまま、融合している」


 ----だから、【融合召喚】によって生まれた召喚獣は、時間制限が存在する。

 恐らくそれは【融合召喚】自体に問題があるのではなく、2体の召喚獣が不安定ながらもギリギリ形として維持できたのが、ボロボロに崩れ去るタイムリミット。


「じゃから、妾はこのマントをぶち込んだ。

 2体の召喚獣を安定させるための物質。それは勿論、召喚獣が変質しながらも安定した状態となった証」


 召喚獣の変質……俺はそれを二度、目の当たりにしている。

 1つは雪ん子、そしてもう1つはココア。

 彼女達は人間の強烈なる悪意によって、本来は変質することがない召喚獣でありながら、《悪の手先》へと変質された証。


 黒く禍々しい手袋、そして黒いマント----。


「これこそが、神から授かった叡智。

 本当に姉妹としての覚悟があるのなら----このくらい、大したことはないのじゃよ!!」



 そして----黒いマントは紫色のスライムに吸い込まれ、黒と紫の2色のスライムへと変化する。

 黒と紫の2色になったスライムは、新たな召喚獣へと変質していくのであった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ===== ===== =====

 《スピリット》の力によって 2体の召喚獣が 1体の召喚獣に融合していきます

 吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の黒マント によって 安定状態へと持って行きます


 …… …… ……

 …… ……

 ……


 成功しました!!


 融合に成功したため 新たな召喚獣を 召喚します

 また【召喚 レベルアップ可能】により レベルアップ可能状態で 召喚します

 ===== ===== =====



 そうして、スライムは、新たな1体の召喚獣の姿へと変化していく。


 生まれた新たな召喚獣は、ぶかぶかの黒スーツを着た少女であった。

 背丈はレベルⅠだった雪ん子とほぼ同じくらい幼く、両腕は黒い龍の鱗に覆われた龍の腕。

 そして頭から伸びる長い角と、龍ではなく蝙蝠の翼を持つ美少女。


「ぴっかぁぁん! リタちゃん、誕生! 大勝利ぃ!!

 マジ可愛くてごめんちゃい! 可愛い通り越して、マジ天使なリタちゃんの出番だねっ!」


 雪を思わせる真っ白な髪と、血のように赤い瞳を持つアルビノ少女は。

 首にココアの黒マントで出来ただろうマフラーと、頭に黒いエルダードラゴンエッグ・アルターの卵の殻を帽子のように被って、決めポーズを取るのであった。


「ファミリーのために! マジ天使なリタちゃんは、ギャングスターとして輝いちゃうんだからねっ!」



 ===== ===== =====

 【悪癖龍マルガリータ】 ランク;☆☆+1

 個体レベル;01

 装備職業;杖使い

 攻撃力;B+1

 属性攻撃力;A+1

 防御力;A+1

 素早さ;E+1

 賢さ;B+1


 固有スキル;【悪癖音波】;悪癖龍が持つ特殊な音波。魔力を込めると、放った言葉が実際の形となって相手にダメージを与える事が出来る

      ;【ドラゴンパワー】;ドラゴンの力により、全ての攻撃が強力となります

      ;【ファミリー・スター】;自分と絆を持つファミリーが多ければ多いほど、魔力回復が速くなるスキル。体力などの回復も速くなります

      ;【アルビノ】;白い髪と赤い瞳を持つ容姿関連スキル。レア個体として、レアスキルを獲得できる確率が高くなる



 後天スキル;【杖術】(マナ系統);四大力の1つである《マナ》を扱う杖術。杖を持つ場合、杖から出る《マナ》を用いた攻撃の全てに補正効果がつきます

      ;【メカクレ】;デメリットスキルの1つ。髪型のせいで目が隠れているため、命中率が下がります

      ;【完全インドア派】;デメリットスキルの1つ。素早さがEランクで固定されます。また少し運動するだけで体力の減りが普通よりも速い



 【悪癖龍マルガリータ】 ランク;☆☆ 幻竜族

 ドラゴン族の中でもさらに希少種である、幻世と呼ばれる場所にのみ存在すると伝わる幻竜族の召喚獣。その声帯は特殊な声帯になっており、力を籠める事で話している言葉を具現化することが出来る

 卵の殻を頭に載せている、幼生態の子供。生まれた時から1匹として孤独に過ごしてきたため、家族の憧れが強く、いつかギャングとしてファミリーを率いたいと思っている。また、自分が可愛いと自覚している

 ===== ===== =====



「じゃあ、行くよ! ボス、それからココアの姉御! 全ては可愛いボクのためにっ!」


 新たな召喚獣、マルガリータは先が龍の尻尾のようになってる鞭のような杖----リョクチャが持っていた物と同じ杖を手にして、キランっと、決めポーズをするのだった。




(※)「万力」=vise(バイス)

  「悪癖」=vice(バイス)


・マルガリータとは、カクテルの一種であり、花言葉ならぬカクテル言葉は、「亡き女性に捧ぐ悲恋」「無言の愛」

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