第65話 佐鳥愛理とティータイム(1)
個性的な召喚獣、吸血鬼のココア。
ここ数日は彼女のレベルアップをしながら、雪ん子の進化先を模索する日々が続いていた。
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【吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世】 レベル;Ⅱ+4
個体レベル;01→04
装備職業;妖狐
攻撃力;D+1→D+10
属性攻撃力;D+1→D+10
防御力;D+1→D+10
素早さ;D+1→D+10
賢さ;D+1→D+13
固有スキル;【吸血】;相手に嚙みついて血を吸って、回復するスキル。ただし吸った相手が死者の場合、ダメージを受ける
;【吸血鬼<狐】;吸血鬼の弱点が消えるスキル。ただし、狐の要素が強く反映される
後天スキル;【五属性魔法】+4;火、水、土、雷、風を扱う魔法。レベルが上がると強力な魔法が使えるようになる
;【変化魔法(狐)】;狐に変身する魔法。自分にしか効果はない
;【魂鑑定】;魂そのものを鑑定する【鑑定】魔法の上位系。相手の魂を覗くことが出来る
;【発情期】;動物関連の魔物や召喚獣が稀に持つスキル。状態異常が効かなくなる代わりに、発情してしまう
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ココアのレベルアップは、かなり良い。
成長性も高いし、この間のプリズンビスクもコツを掴んだのか、レベル3の時には1発で倒していたしな。
ただ、時折うるさくなるけど。
「にしても、【妖狐】ってのを受けた人って居ないんだな」
あの後、冒険者ギルドに行くと、また大騒ぎをしていた。
なんと、【魔法使い】でやっていた冒険者達が、神の声の誘いに乗って【機動要塞】になったというのだ。
それはまるで【戦士】だった冒険者が、神の声の誘いで【着ぐるみ】になった事件の再来だと言われていたらしい。
----しかしながら、【妖狐】の話はなかった。
一応、冒険者ギルド、情報屋、それから冒険者部にも聞いてみたが、該当例は一切ないらしい。
あと情報屋には、倒すと
まぁ、今の稼ぎだと、20万ってはした金なんだが。
「(すごい所まで来たものだ)」
最初はただの小遣い稼ぎ程度のつもりだったのに、今では30万、40万する武器を見て「これくらいなら買えるかも」と考えている自分が怖いくらいだ。
「----さて、今日はダンジョンで使えるアイテムを見ますかね」
今、俺は冒険者部からの帰りで、アイテムを売っている道具屋さんへと向かっている。
高いモノだと1億とか10億クラスの武器やアイテムも売っているのだが、俺は今の自分に合った値段帯の商品を見て、次に買うかを悩むという、ウインドウショッピングをするつもりだ。
噂だと、『ベンチャーちゃん』の作ったアイテムなんかも、そこで売ってるらしいな。
陽はそろそろ夕暮れ時だが、ちょっと見るだけなら夜までには帰れるだろう。
「今日は奮発して、100万クラスの道具やアイテムを見てみますかね」
「あのー、すいません」
と、喜び勇んで道具屋さんに行こうとすると、1人の少女に声を掛けられる。
なんと言うか……その少女は、とても特徴がなかった。
世界中の美人の顔を、これでもかって集めて平均化した時に、出来るような特徴のない女の顔。
自分で言ってて、酷い事を言っているなと感じるが、それくらい特徴がなかった。
しいて言うならば、黒いセーラー服には似つかわしくない、白い薔薇を胸元に付けているくらいだろうか?
「あなた、【召喚士】の冴島渉さん、であってるかしら?」
「……あなたは?」
「あぁ、申し遅れましたね」
彼女はそう言って、ペコリと頭を下げる。
「わたくし、冒険者の
----【妖狐】のことについて、ねぇ。冴島渉さん?」
「----!!」
何故、こいつ【妖狐】のことを知ってるんだ?
それも、俺が知ってるとピンポイントで?
「あぁ、そんなに身構えないでください」
と、彼女は手を前に出して、「押さえて、押さえて」と、警戒を強めた俺にそう優しく諭す。
「実は、わたくし、あなたが倒したであろう【世界球体ー妖狐
少々お時間をいただけましたら、【妖狐】について、そして【機動要塞】や【着ぐるみ】など新たな
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----つまりですね、わたくしが持っている【世界球体】は、大きく分けて2種類ありましてね」
場所は打って変わって、とあるファミリーレストラン。
お店名物の『栗丸ごとモンブラン』を美味しそうに食べながら、佐鳥愛理はそう説明していく。
「例えば、マナ系統の【機動要塞】や、オーラ系統の【着ぐるみ】などは、それそのものを軸として世界が進んでいます。
【
----他にも【けん玉世界】とか、【忍者世界】とか、そういう風に、"〇〇を通して文明が回っている世界"とでもいう感じでしょうか?」
「それに対して、【妖狐世界】は違います」と、モンブランの上に残しておいた栗を大切そうに食べながら、彼女はそう言う。
「【妖狐世界】は、1匹の悪逆たる妖狐を閉じ込めるために作った世界----というか、結界というべきでしょうか? なので、【妖狐世界】から職業としてこの世界に力を与えられるのは、たった1人だけ。
【機動要塞世界】や【着ぐるみ世界】のようなごく一般的な世界ですと、力を与えてくれる神様が大勢いますので、多くの職業の人が出るんですけどね」
佐鳥愛理はそう言って、今話した内容を纏めていく。
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A,〇〇を通して文明が回っている世界
→〇〇を中心として、文明が成り立っている世界。【蒸気世界】が蒸気の力によって文明が成り立っていて回っているように、1つの物を中心として世界が構成されている
そのため、この世界の神から力として、職業を与えられる者が多い
・【
"騎士"の世界。騎士を中心として、文明が成り立っている世界。
騎士でない者は、例え人間であろうとも、怪物として扱われる。
・【
"機動要塞"の世界。機動要塞を中心として、文明が成り立っている世界。
10歳となった時に、全ての人間に機動要塞が与えられ、最強の機動要塞乗りを目指して旅に出る。
B,〇〇を閉じ込めている世界
→別世界から追放されてしまった、〇〇が閉じ込められてしまっている世界。たった数体で世界として成り立つほど、強大な者が閉じ込められている
世界を解放しても、力を与えられる者が少ないので、職業を与えられる者が少ない
・【
"妖狐"の世界。世界喰いと呼ばれる、強力な妖狐が閉じ込められている世界。
かの狐は人に崇め奉られる存在でありながら、人を愛し、人を殺したために、1つの世界へと追放された。
・【
"七天"の世界。とある別世界で殿堂入りした強さを持つ7人を称えるために作られた世界。
7人の意識と力はこの世界に残っており、前の7人よりも強い者が現れた場合、その者が新たな7人目として加わり、1番弱い1人が追放される。
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「----とまぁ、このように開放した世界の仕様によって、職業を与えられる者の数が違うんですよ。
Aの場合だと無限に近いのですが、Bの場合だと数が限られていましてね。"あなたの召喚獣"がなった【妖狐】は、この場合だと、この世界でたった1人しかなれない職業、というところでしょうか」
モンブランを美味しく食べ終わり、口元を濡れ布巾で拭きとる佐鳥愛理。
そして、彼女は札束を取り出した。
札束、そう、1万円の束。
100枚を1束に纏めてある、ドラマとでしか見た事がないお札の束。
それが今、ごく普通のファミレスのテーブルに、どかんっと、鎮座していた。
「----と言う訳で、譲ってもらえませんか?
その、【妖狐】の力を得た召喚獣を」
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