第33話 大会でも、無双する(1)

 -----試練ダンジョン。

 それは市役所奥に設置されている転送装置から行くことが出来る、職業ジョブのレベルアップのために必要なダンジョンである。


 そこでは神からの試練が受けられる。

 例えば、「一定の時間内に決められた数を倒せ」だとか、「敵に見つからずに通り抜けろ」とか言った具合に。

 そんな神の試練をクリアすることで、さらに強い力を得られるのである。

 もっとも、試練を受けるためには、受けるだけの力を持っている事を示さなければならないが。


 受けるだけの力、つまりはランクを上げるための他の条件を満たしている事。

 そんな力を既に持っている俺は今、その試練ダンジョン----《ランクⅠ 召喚士ダンジョン大会》とやらに参加エントリーすることになったのであった。




「3回勝ち抜けば、オーケーか。余裕だな」


 俺は今回の大会のルール説明書を見ながら、どういう布陣にしようかと思案していた。



 ===== ===== =====

 【ランクⅠ 召喚士ダンジョン大会】

 勝負は3回戦。勝ち抜き戦であり、こちらで用意した回復アイテム以外は使用できません

 3体以上の召喚獣が倒された場合、失格となります


 1回戦;スライム(ランクⅠ)、アルミラージ(ランクⅠ)、エンジェル(ランクⅠ)

 2回戦;ピッグキャップ(ランクⅠ)、ピッグウィッチ(ランクⅠ ユニークモンスター)、リザードマン(ランクⅠ)

 3回戦;2回戦勝ち抜き者との対決

 ===== ===== =====



 2回戦までは、そんなに問題はない。

 ちょっと調べたが、特に強い、厄介そうなモンスターは居ないみたいだ。


 "ピッグキャップ"というのは、その名の通り、帽子キャップを被ったピッグのモンスターである。

 ヤドカリのように、ただ帽子を被っただけの猪のモンスターだから、相手にする分にはなんの脅威にもならないし、問題ない。

 "ピッグウイッチ"ってのは、そのモンスターの亜種で、頭に魔女の帽子を被ったモンスターで、コイツは突進の際に《ファイヤーボール》という魔法攻撃をしてくるが、気を付ければ問題ないだろう。


 問題は、3回戦----。

 別の、召喚士……。


「(この会場とは別の場所で受けてる、別の召喚士と対戦することになるようだ。既に勝ち上がった召喚士の亡霊----ホログラムと対戦するらしい)」


 この大会で優勝すると、その時の優勝者の召喚獣達のパーティー構成が記録される仕組みになってるそうだ。

 ポ〇モンで言う所の、殿堂入りの登録、みたいな?

 で、俺はそいつと戦って、勝てば、次は俺が優勝者として記録されるという流れみたいだ。


 問題は----その優勝者の実力。


 少なくとも俺と同じように、この場まで来れるくらいの戦力はあるのだろう。

 《召喚士=不遇職》と言う風潮は相変わらずあるが、それでも色々な戦術で試した結果、物凄いパーティーを閃いたのかもしれないし。


「(今まで、同じ召喚士と戦ったことは一度もない。これが初の対人戦という奴だ)」


 不利になるかもしれない以上、万全の対策をして望まなくては。


 と言う訳で、メンバーはいつもの雪ん子に、色々と有用な技を覚えさせといたファイント。

 そして、シェルドリングというモンスターがいたので、召喚しておいた。



 ===== ===== =====

 【シェルドリング】 レベル;Ⅰ

 貝のようなモンスターであり、同時に装備モンスターとしても使用できる。装着した相手を自身の住処として認識し、装備者に対しての攻撃を一度だけ守るシールドを張る

 ===== ===== =====



 このモンスターは、俺が付けておく。

 3体倒れたら負けなので、下手に弱いモンスターを召喚する余裕はない。

 それに、これだったら自分が気を付ければ、シェルドリングは倒されないしな。


 俺は今考えられるベストパーティーを作って、大会の受付に参加を申し込んだ。

 すぐさま受付の奥の扉が開き、そこからわぁーわぁーと、大きな歓声が聞こえてくる。


「……よしっ!」


 俺は雪ん子とファイントを連れ、そしてシェルドリングをしっかりと腕に装着した状態で、扉の奥へと入って行く。







 入ると共に、目の前には既に敵が準備を完了していた。

 ぷよぷよ揺れるスライムに、角の生えた兎ことアルミラージ、いつでも回復できる準備を整えたエンジェル。


 敵の確認をしていると、早速、ハイテンションな実況アナウンサーの声が聞こえてきた。


『さぁ! 皆さん! お待たせいたしましたっ!

 今大会、勝ち抜きバトルにエントリーしたのはっ! まだ新米召喚士の、冴島渉少年だっ!

 彼は怒涛の勢いで、ダンジョンを攻略してきたようだが! この試練は果たしてクリアできるのか?!


 では、参りましょう! バトル、スタートォォォォ!』


 アナウンサーの声と共に、3体のモンスターが襲い掛かって来た。


「《ほぃっと、デス》」

「おぉ! 早速の出番ですなぁ! 【レーザー=マルチアーム】!」


 雪ん子が軽く剣を振って、アルミラージを風圧で吹き飛ばし----。

 ファイントが【レーザービーム】と【マルチアーム】の2つのスキルを組み合わせ、光で出来た腕で残り2体のモンスターを倒し----。


 ----瞬 殺


 一瞬で、1回戦のモンスターが倒されて。


 俺は早くも、楽勝ムードだった。

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