第31話 ラーニング天国(1)


 俺が新たに召喚した聖霊型召喚獣は----とっても、お喋り・・・なヤツであった。


「ほーぉ、ほぉほぉほぉ! もう1つおまけにほぉっ、だよぉ! いやー、すっごく機械的メタリックな場所ですなぁ~!

 なんつーか、こう……そう、ロボット的なのがこの後に攻めてきてもおかしくないーっーか? なにはともあれ、見てるだけでも楽しそうですなぁ! ファイントは、すっげー楽しみですよ! まったくぅ~!」


 ファイントはキョロキョロと周囲を確認しながら、騒ぎまくっている。

 まるで初めて見る全てが驚きと感動に満ち溢れる子供のような、純粋さで。


「《……うるサイ召喚獣ですネ》」


 一方で、クールに、静かにダンジョンの中を進むのは、レベルⅡになった雪ん子。

 黒い着物に衣装チェンジし、悪の道へと進んだ彼女は、俺の一番の主戦力である。


 だがしかし、同時に危険なところもある。

 《悪の手先》なる称号を手にした彼女は、俺の命令を聞かない。

 正確に言えば、レベルが俺よりも上なため、俺の支配下ではないのである。


「(今は【優しい木こりの鞭】で、俺に従わせるように調教しているが、俺自身のレベルも上げておくべきだろう)」


 そのためにも、ファイントのためにも、今日俺はこのダンジョンに来たのだ。

 隣街にある、とあるIT会社を1つ飲み込んで生まれたダンジョン----。


 ----Dランクダンジョン《第七アルクエイド廃棄予定地区》。


 洞窟や森など自然豊かなダンジョンでは珍しい、近未来感溢れる機械的メタリックなダンジョンである。




 このダンジョンは、全体的に近未来感がてんこもりだ。


 壁には、赤い線のようなのが幾重にも描かれている回路版。

 宙に浮かぶも、触れる事が出来ない半透明なシステム画面。

 自動で動く床に、こちらの事を気にもしないお掃除ロボット、窓の外では宇宙ステーションの製作が進む。


 とまぁ、ここはどこぞの未来系の博物館だとでも言わんばかりに、SF感満載のダンジョンなのである。


「このダンジョンは機械の魔物が多い。そして機械の魔物が使うスキルは、青魔法を使う者達が最初に手に入れたいスキルらしい」


 青魔法は、相手のスキルをコピーする魔法。

 そして機械型の魔物が使う技は、防御不能の光を放つ【レーザービーム】や、自由自在に動く【マルチアーム】など、便利な技が多い。

 なので、別の魔法などに組み合わせることが出来る【青魔導を識る者】のスキルを持つファイントなら、その便利な技をさらに上手く使ってくれるだろう。


「と言う訳で、早速敵さんのお出ましだ」


 ダンジョン奥へと進んで行くと、急にけたたましい音と共に、このダンジョンを守護する魔物達が現れた。


《シンニュウシャ、ハッケン! シンニュウシャ、ハッケン!》

《タダチニ、ゲイゲキセヨ! タダチニ、ゲイゲキセヨ!》

《シンニュウシャ、ハッケン! シンニュウシャ、ハッケン!》


 頭のランプをくるくる回転させながら現れたのは、このダンジョンの魔物----パトロール・ゴーレムだ。



 ===== ===== =====

 【パトロール・ゴーレム】 ランク;Ⅰ~Ⅱ

 ゴーレムの一種で、一定地域を常に回り、ダンジョンの侵入者を迎撃する。侵入者に対しては、直ちに迎撃態勢を取り、相手が自分の担当区域から出るまで永遠に追い続ける

 全てが同じ規格で統一されているが、中に組み込まれた魔術式の違いによって出来る事に差があるため、同じ見た目でも強さに差がある

 ===== ===== =====



 パトロール・ゴーレムは、このような近未来的なダンジョンでは常に見られる魔物だそうだ。

 いま、俺達を倒そうと現れたのは5体だが、同じ見かけに見えても、こいつらは1体1体が違う能力をインストールされてる。


 【レーザービーム】を放つ奴、無意味に特攻する奴、相手の能力を読み取る【スキャン】を行う奴。

 他にも色々と違いはあるらしいのだが、正直なところ、全部同じにしか見えない。


「侮っていたらレベルⅡのパトロール・ゴーレムにやられ、警戒していたらレベルⅠのパトロール・ゴーレムで疲れてしまう。まさに、厄介な魔物だ」


 ペース配分の敵、とでも言うべきか。

 ただ技だけではなく、耐性も1体1体違うため、下手な攻撃をすると無効化程度では留まらず、体力として吸収されたり、パワーアップまで出来てしまう。

 この魔物は、本当に戦い辛いのである。


 だからこそ、魔物の強さ的にはEランク程度なのに対し、この魔物の特性のせいで危険度が1上がってDランクダンジョンとして認定されているのだ。


「だがまぁ、ファイント----そんな魔物の持つスキルは有用なのが多いだろう?」



「----えぇ、そうですね」



 と、ランプで警戒音を鳴らしていたパトロール・ゴーレムが、一瞬にして倒れる。

 倒れた原因は、目の前から発射された、防御不可能の光の光線こと、【レーザービーム】。


「いきなりこーんなに、便利なスキルが手に入るだなんて驚きですよね?」



 ===== ===== =====

 【青魔導を識る者】の 効果が 発動しました

 【スキャン】を 受けました

 >スキル【スキャン】を 取得


 スキル【スキャン】を 発動

 相手のスキルを見て 自身の技として 学習ラーニングします

 >スキル【レーザービーム】を 取得

 >スキル【マルチアーム】を 取得

 >スキル【ハリケーンプロペラ】を 取得

 >スキル【自爆】を 取得

 ===== ===== =====



 どうやら、上手い事、いっているらしい。


 いま、ファイントはあのパトロール・ゴーレム達のどれかから、対象のスキルを鑑定する【スキャン】を取得してみせた。

 そして、取得した【スキャン】を使い、他の4体のスキルも取得したわけだ。

 青魔法として取得するのに必要なのは、相手のスキルを深く知る【学習】すること。

 それを【スキャン】によって、瞬時に相手の情報を手に入れ、新たな技として【学習】しているのだ。



「おー! さっすが、ご主人が計画した通りに進んでいますなー! ファイントちゃん、すっげー、感動的ってやつー!」

「《すっ、ごいの》」


 ファイントは、【スキャン】して得たスキルの数々を。

 雪ん子は、破壊力抜群な剣の技を。


 それぞれ、披露しながら、ダンジョン奥へと進むのであった。

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