第12話 《魔獣の狩場山》のボス魔物(1)
「グォォォォォン!」
ボスの間に入ると同時に、アウルベアーが雄たけびをあげる。
そしてそのまま、こちらに走りながら向かって来る。
鋭利な爪で、そのまま薙ぎ払おうと攻撃してくる。
「ベビーキマイラ、そのまま後ろに後退!」
「ガァオ!」
俺の指示で、ベビーキマイラはアウルベアーから距離を取るため、後ろにジャンプ。
その後、すぐさまアウルベアーに向かって突進。
どうして下がった後に突進したのか、と思っていると、すぐさま先程ベビーキマイラが後退した位置に大きな爪の跡が刻まれていたのだ。
恐らくスキルかなにかだと思うが、もしあの位置で止まっていたままだったら、爪に引っかかれてダメージを負っていただろう。
それをベビーキマイラが自身で考えて対処した、という事だろう。
「(こりゃ、下手に指示を出すよりも、ベビーキマイラ自身に判断させた方が良いな)」
そう思っていると、いきなりアウルベアーの頭がクルリっと後ろを向く。
そこには《獣狩りの剣》を持った、雪ん子が立っていた。
「グルルルルルッ……」
《獣狩りの剣》という、自分にとって不利すぎる武器の存在に気付いたのだろう。
今度は雪ん子相手に、その自慢の爪を振り下ろそうとしていた。
「そうは行くかよ! オラぁっ!」
俺はそんなアウルベアーの、無防備なる背中にベビーキマイラと共に突進を与える。
《獣狩りの剣》の効果で、ベビーキマイラ自身の攻撃力も下がっていたが、それでも無防備な背中に突撃した結果、アウルベアーはそのまま前のめりで倒れる。
そうして倒れるアウラベアーの身体に、雪ん子が《獣狩りの剣》で首元を攻撃する。
「グゥオンッ?!」
「ピィ、ピィッ!」
雪ん子が《獣狩りの剣》を振るう事で、ヤツの首から血が流れ、おまけにその部分がうっすらと凍り始めていた。
雪ん子の【氷結の申し子】という、全ての攻撃に対して氷結効果が発動した結果だ。
===== ===== =====
アウルベアーに対して 剣攻撃によって 【流血】状態が発動
【氷結の申し子】の効果により 身体の一部が 凍ります
状態【流血】;血が流れだしている状態。体力が徐々に減っていきます
===== ===== =====
「(おっ、いい状態異常だ)」
【流血】は、剣などの鋭利な武器攻撃などで身体の一部から血が流れ続けているという状態だ。
今、アウルベアーは何もしなくても体力が減っていき、さらに激しく動けばさらに体力が減る。
獣属性の魔物は、【流血】になってもすぐに回復するのだが、凍っているため、その治癒も遅くなってる。
おまけに凍った場所が、ヤツの右目の付近だったため、視界も封じたようなモノだ。
「雪ん子、良いぞ! その調子だ!」
「ピィピィッ!」
褒められて嬉しかったのか、そのままアウルベアーに対して《獣狩りの剣》を刺していく雪ん子。
流石に全てが【流血】とはならなかったが、それでもどんどん奴の身体から血が流れだしては、凍っていく。
アウルベアーも反撃しようとするが、凍っているため力が出ない様子だ。
立ち上がろうとしたら、ベビーキマイラが突進して出鼻をくじく。
雪ん子とベビーキマイラのコンビで、アウルベアーの攻撃を封じていた。
【流血】状態1つ1つはさほど体力が減っている様子はないが、それが2つ3つと重なることで、どんどん体力が減っていく。
所詮は、梟の顔と熊の身体のキマイラで、まともに戦えば強敵だろうが、《獣狩りの剣》という特攻武器、そして獣属性が苦手な氷属性を常に与える雪ん子の敵ではない。
「----しかし、圧倒的だな」
アウルベアーは、この前戦った【木こりの地縛霊】とは違い、普通に強敵だ。
それが《獣狩りの剣》があるとは言え、ここまで圧倒できるとは思ってもみなかった。
「これが、レベルアップの力か」
雪ん子1体でこれである。
もし仮にもっとレベルアップできる召喚獣を揃える事が出来れば、さらに楽な戦いになるんじゃないか?
「ともあれ、決着はついたようなものだ」
後は、アウルベアーを倒して、ドロップアイテムに期待するとしよう。
そう簡単に考えていた時、アウルベアーの瞳が見開き、俺の前にステータスウインドウ画面が現れる。
===== ===== =====
アウルベアーが 特殊スキル【草木の糧】を 発動しました
アウルベアーの 体力が 1にまで 減ります
アウルベアーを生贄に 【
【
魔物が、特殊スキル【草木の糧】によって自らを草木の餌へと捧げる事で生まれる魔物。基となった魔物の強さによって、生まれる魔物の強さが変わってくる
植物属性でありながら火属性や氷属性などに耐性を持ち、その長い蔓で敵を薙ぎ払う
===== ===== =====
「おいおい、なんだよ、これは……」
楽勝だなと思っていたら、急にアウルベアーがデッカイ大樹のバケモノになりやがった。
そいつは、ステータスウインドウ的には、ツリーアルラウネなる魔物は、およそ20メートルはあろうかという巨大な大樹だ。
部屋の真ん中に突然現れたどっしりと大きい樹の真ん中には、搾りかすのような干からびたアウルベアーの死骸。
そして、うねうねと蛇のように獲物を求める、長ーい鞭のような蔓。
「これは、予想外だぞ、おい……」
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