第9話 俺だけの召喚獣
【召喚士】の、真なる強み。
冒険者支援系MyTuberのマイマインから、その情報を受け取った僕は、それが本当なのかを確かめるべく、数々の書籍を読み漁った。
主に、海外の悪魔や神獣、日本古来から伝わる伝承や妖怪といった類を。
結果として言えば----
書籍やネットなどから情報を得ると、今まで召喚候補に挙がっていなかった者達が新たに加わっていたのだ。
残念ながら未だにレベルⅠの俺が召喚出来そうなレベル帯の奴ばかりではなかったが、それでもマイマインの情報は正しかった。
「(ただ、恐ろしく効率が悪い)」
例えば、中国の伝説には【蜃気楼の蜃】なる幻獣がいるらしい。
年老いたハマグリが、幻覚を生み出す霧を生み出すという伝承の生物なのだが、後で召喚できるのかを確認したところ、次のような説明が出てきた。
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【蜃気楼の蜃】(召喚不可能) レベル;Ⅱ
古◆の中国や日本に◆わる、幻◆の霧で人々を惑◆す貝の召◆◆。年老◆◆貝がこの姿に◆◆◆されており、時に異◆の龍とな◆て襲っ◆くるこ◆もあ◆とされる
蜃◆楼とは、「蜃」が「気」の幻◆を用いて「楼閣」を◆ったと◆う言◆から生ま◆たとされ、この蜃もま◆建物◆◆の◆覚の際に◆きな◆正◆果が働◆
===== ===== =====
レベル以前の問題で、俺は蜃を召喚出来ないのだ。
多分だけど、"俺が蜃の姿をちゃんと思い浮かべないこと"、そして"正しく情報を整理できてないこと(調べたところ、俺が知った情報以外にもたくさんの知らなかった情報があった)"などから、召喚獣として召喚出来ないのだろう。
巨大なハマグリだなんて、なんか想像できないし。
そういう感じで、およそ1週間ばかり調べた結果として、新たに召喚獣を召喚候補に挙げるために、俺が知らなければならない情報は、以下の3つ。
1つ、その者の姿形。ざっくりした感じでも良いが、ちゃんと姿を思い浮かべておく事。
2つ、その者の能力。分かりやすい能力の物が良い。
3つ、それらが人間にある程度認知されている事。これは神様が判断する。
1つ目と2つ目は、俺の方の問題だからなんとかなるかもだが、3つ目が難しい。
神様ってのは、俺が勝手に言ってるだけだが、召喚獣として登録不登録を決めるような奴のことで、本当に神様なのかは分からん。
神様がいることがはっきり分かったのは、俺が調べるのが面倒くさくなって、完全なるオリジナルの召喚獣を書いて出るかを試した時。
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【オレノサイキョーショウカンジュー】 レベル;測定不可能
あなたが勝手に作った召喚獣は、召喚獣として登録されません。姿や形、そして多くの人間の知名度があると判断されない限り、召喚獣として認定されません
お疲れさまでした
===== ===== =====
まぁ、これがきっかけである。
どういう存在かは分からんが、召喚獣にするべきか否かを決める上位者がいると判断して、便宜上、神様と呼んでいるだけだ。
さて、そんな作業を通して、ようやく【召喚 レベルアップ可能】を使うべき召喚獣を見つける事が出来た。
恐らく、俺個人としては、マイマインが第1位として紹介していた【ベビーキマイラ】よりも上だと思っている。
「と言う訳で、早速召喚してみよう。《召喚》、【雪ん子】」
俺が召喚陣に魔力を込めて、召喚のスキルを発動すると、中から可愛らしい女の子が出てきた。
銀色の光り輝く肌に、真っ白な着物。
全身がうっすらと白く冷たく、頭に藁帽子を被った、愛らしい幼女。
これが、日本で有名な【雪女】伝説を探る際に見つけ出した召喚獣----雪ん子だ。
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【雪ん子】 レベル;Ⅰ
雪女や雪男の子供とも言われる、雪の精霊。全身が雪で出来ており、そのため常に微弱な冷気を纏っている
体力や素早さなどは標準的な人間の子供レベルだが、全ての攻撃に氷属性を付与する
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「やはり、けっこう優秀だな」
愛らしい見た目なのも良い。
正直なところ、常に連れまわすのならば、ドロドロと悪臭をまき散らすタイプの召喚獣よりも、愛らしい女の子タイプの召喚獣の方が良いだろう。
なにせ、【召喚 レベルアップ可能】というとんでもスキルは、今の所1体にしか使えないのだから。
なにより、全ての攻撃に属性効果が付くのも大きい。
属性効果とは、例えどんな攻撃であっても、属性攻撃として扱うという事だ。
ただのパンチでも、彼女の場合、相手に氷結効果を与えるおまけ付きという訳だ。
属性効果は召喚獣どころか、トップクラスの冒険者でもその効果を持っている武器を持っている者は少ない。
ましてや、調べたところ、氷属性はさらに希少らしい。
「まぁ、問題は戦闘能力が人間の子供レベル----つまりは召喚獣としては弱いってことだが、【召喚 レベルアップ可能】というスキルさえあれば、補えるだろう」
では、早速。
「発動、【召喚 レベルアップ可能】!」
俺がスキルを発動させると、目の前にステータスウインドウ的な画面が現れた。
===== ===== =====
レベル;Ⅰ 【雪ん子】を対象に、【召喚 レベルアップ可能】を使用して良いですか? はい/いいえ
使用条件;1体→0体
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これはつまり、これを使うとやり直しが出来ないという事だろう。
「(だが、俺だって覚悟を決めて、色々と情報収集をした結果、選んだんだ)」
きっと、もっと時間をかけたり、お金をかければ良い召喚獣が見つかるだろう。
レベルⅠではなく、俺自身がレベルⅡ……いや、もっと高くなれば、それだけ召喚できる召喚獣の幅も広がる。
けれども、もう決めた事だ。
【召喚士】である俺が、このスキルを得たのも何かの縁。
それに、今使わなければ、もったいなくて、今後絶対に使えないだろうし。
「と言う訳で、後悔する前に!」
俺は「はい」のボタンを押した。
すると、身体中からごっそりと何かが消える感覚がする。
魔力ではない、もっと別のなにか大切なものが雪ん子に注がれていく感覚だ。
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【召喚 レベルアップ可能】を発動し、【雪ん子】に付与します
>成功しました
>【召喚 レベルアップ可能】の付与できる対象を【1体】から【0体】に変更します
【雪ん子】 レベル;Ⅰ+01
個体レベル;01
攻撃力;G+1
属性攻撃力;F+2
防御力;G+1
素早さ;G+2
賢さ;D+6
固有スキル;【氷結の申し子】;全ての攻撃に対し、氷属性を付与する
===== ===== =====
そして、俺はその結果に満足し、早速、今いるFランクダンジョン《魔獣の狩場山》の攻略に進むのであった。
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