第7話 3つ

1姫いちひめは学びが好きであった

学び舎まなびやに通う毎日が

彼女の至福

文字や数字の羅列に宇宙を見ていた


2姫にひめは運動が好きであった

運動場に体育館に公園に

男も女も分け隔てなく

彼女の流星のような魂はそこにあった


3姫さんひめは友人が好きであった

教室でも河原でも

流行りの茶屋でも

友との会話が心を温めた


3つみつの子は笑顔であった

そこにいる誰よりも

3つみつの右腕を冷やかにされようとも

何一つ

何一つの愚痴もこぼさない


転じて舞する時には

誰よりも真剣な顔であった

母のような舞を自分のものにするのだと

何一つ

何一つ弱音は吐かない


そしていつの日にか

愛する人と

人生を共に歩み 育み 別れ

後世へと舞をつなげる


途方もない歴史が含むうれいと

舞う女の誇りと悲しみを はたと思いながら

扇を広げ

立つのであった

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