第9話
「ここは……」
知らない天井だった、俺はあの廃屋で意識を失って、目が覚めたらこの知らない天井とご対面しているという状況だが、その異常事態よりも更に火急の事態が俺の身に起きていた、その知らない天井には至る所にカメラ付きのマシンガンが設置され俺に向けて照準を合わせているからだ。
「お、目が覚めたかい、ただ下手に動かない方が身のためだよ、今君を無数のカメラで監視してるんだ、このカメラの中で君が才能を振るった瞬間、カメラに連動しているマシンガンが君を君という原型が無くなるまで撃ち尽くすからね」
唐突に話しかけられ、忠告通り、目だけでその声のする方を見るとそこには白衣に身を包んだ人物がこの部屋の片隅の椅子に腰掛けていた、彼はこちらを見ながら更に話しかけてきた。
「おっとこれは失礼した、君からしたら何者だって話だよね、僕はアナリストって呼ばれてるから君もそう呼んでくれたまえ、詳しい話は後ほどするとして、君が目覚めたら社長が連絡するように言われてたんだったんだよね、ちょっと待ってね」
俺はゆっくり身体を起こした、するとマシンガンも併せて照準を合わせてきた、そしてそのアナリストと名乗った男は社長と呼んだ人間に連絡をとっているようだった。連絡を取り終えたアナリストはこちらに振り返るとニコッと笑って話しかけてきた。
「社長が君の事をお呼びみたいだ、詳しい話も含めて諸々、自分から話したいって事だからついて来て」
そう言うとアナリストは席を立ち入り口の方へスタスタと歩き始めた。俺もフッと我にかえりそのアナリストの後をついていく事にした、しかしただ歩くだけのことがこれ程までに辛いとは思わなかった、それは無理もない何故なら俺は手は手錠で拘束され足も着せられている拘束服のせいで歩きにくいのだ、さっきまではベッドで横になっていたので気づかなかったが歩くとなるととても動きづらかった。
そうして先程の部屋を出るとそこは迷路のように非常に入り組んだ作りをしている場所だった、アナリストの後をついていく途中に俺がいたような部屋がいくつもあり外からも見えるようにガラス張りの部屋になっていたがアナリストと同じような格好をした研究員と思われるものが何名もいたが誰1人として俺と目を合わせようとしなかった、それどころか俺に気づいた瞬間に恐怖の感情を抱く者もいた程だった。
「ごめんね、いきなりこんなところに連れてこらて会う人会う人に避けられてなんのことかわからないよね、でもね君の事を皆知ってる、知ってるからこその反応なんだ、この後社長に説明されると思うけど、君はこの場所にいる以上この反応からは避けられないと思うから、出来るだけ気にしない方がいいよ」
アナリストは俺の感じた事を読み取ったからのように前を歩きながら振り返りもせずに話しかけて来た。俺はこの状況で何一つ情報がない事、ただそれだけが恐怖だった、だからこそその社長とやらに話を聞く事が俺にとっても最重要であると感じていた。
(これだけの厳重な警戒態勢と研究員達の反応、まるで俺が爆弾か何かみたいじゃないか)
そう言う事を思いつつ、歩いているとようやくこのフロアの入り口であろうエレベーターの前についた、歩いて来た感じだと俺が最初にいた部屋はこのフロアの最奥に位置していたのだと思った、恐らく俺が逃げ出さない為の対応なんだろうが、今の俺は謎が重なりすぎて頭が痛くなって来たのでおそらく逃げ出す事はできなかっただろう。
そしてエレベーターに乗り込むとアナリストは最上階のボタンを押した、この段階で判明したのは俺が先程までいたフロアはこのビルの4階、そして恐らく社長という人物がいる最上階が25階ということはかなり大きなビルにいる事になるそして、この組織はその大きなビルを1組織で占有するほどの規模という事がわかったがそれが分かったとしてそれ以上の情報はないのだから場所の推測のしようもなかった。そんなこんなで頭で色々と考え込んでいる間に最上階へと到着した。
「じゃあここからは君1人で行ってね、真っ直ぐ進んで突き当たりの部屋だから間違えはないと思うけど気をつけてね、また後で会えるといいね、じゃあねー」
そう言うとアナリストはそのままエレベーターで元の階に戻っていった。1人取り残された俺は言われた通り目的の社長室へと向かった、そして中に入るとテレビとかでよく見る応接室のような作りの場所があった、ひとつだけテレビと違うのは恐らく社長と呼ばれていた人物が座っているであろう椅子の前に磨りガラスのパーティションが置かれていて社長の顔が全く分からないと言う事だった。
「やぁ、砂月仁君、よく来てくれた、まぁかけたまえ、君の疑問に今から全て答えるとしよう」
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