♯7 家族会議?

 

「なぁ、俺が寝てた間は何があったんだ?なんか戦ってそうっていうのは、さっきの格好で分かるけど。」


いつの間にかタメ語になった一心が聞いた。あれから少しのコントを経て、食べているのは後から食べ始めたサファイアだけになった。


「んー。どこから説明するかな。」


武田が顎に手をあて、考えるような仕草する。すぐに整理がついたようで、ゆっくりと語り始めた。


「…一心、お前が打った魔法はな、強すぎて私達がいた鉄骨砕いちゃったんだ。当然私達は空中にポーンってな、今度こそ死んだと思ったわ。その時はもうお前は気を失っていたけどな。そこを助けてくれたのがサファイアだ。私達を風の魔法で受け止め、ここまで避難させてくれたんだよ。」


「あぁ、それで。」


あの場所からどうやって生還したのか。ずっと気になっていた問題が解決された。そして、サファイアがなぜ一緒にいるのかも。今度は錦が話し始める。


「サッちゃんは俺たちが転生者っていうのは分かったみたいで、俺たちが帰るために協力してくれてるんすよ。それで今、帰るために戦ってるっす。」


「なるほど……?」


なんとなく、フワッと状況は分かった。しかし、肝心なところがいまだにフワフワしている。


「それで、今何してるんすか?」


一心が追って聞く。


「そこは、私が説明しよう。」


いつの間にか食べ終わったサファイア話し始める。


「君たちがここに来たのは召喚魔法の影響だ、異世界の技術や、転生者特有の膨大な魔力など、主にこの世界の暮らしを豊かにするために使用される魔法だな。」


「へぇー。」


アホみたいな相槌を打つ一心。サファイアは気にせずに続ける。 


「帰るための条件は3つ。まず一つ目は……」

そう言うとサファイアは一心の腕を掴んだ。

「え?」


突然のことに驚く一心。


「…まじ?」


「おい、飯食ったばっかりだぞ…。」


錦と武田も何かにたじろいでいる。サファイアが何をしようとしているのか、何も分からないので一心は若干ビビり気味になっている。


「よし、いいな?」


「何が?」


「駄目ですけど?!」


「おいやめろ。」


テーブルを囲む家族団欒の姿勢のまま、不穏な空気が立ち込める。サファイアを中心に青と緑の光が渦巻き始めた。渦は段々とスピードを上げ、大きくなっていく。


(……なんか既視感あるな)


残念ながらその予感は的中した。急速に成長した渦が4人とテーブルを完全覆い、激しく点滅する。


「んんんんんんんんんん!!」


「腹痛いんだが?」


「今じゃないでしょ。」


「……うっ、んん。」


二回目の、ホワイトアウト。視界は白に満ちていった。


 「……あれ?」


一心が意識を失うことなく、視界は色を取り戻していた。しかし先ほどの落ち着く空間ではない。周辺の色は全体的に黒に近く、金属で覆われている。イメージとしては、黒い発電所のようだ。


「……う……ここは、ううっ…」


なぜかサファイアが苦しんでいる。本当になぜか。地面に膝をつき、今にも吐きそうと言った具合だ。


「…あぁ、俺が説明するっす。」


なんとなく呆れた様子で錦が話し始めた。前にも経験したことがあるかのような態度だ。


「さっきのは移動の魔法で、細かい情報を集めれば基本どこでもいけるっす。…サッちゃんはあの渦が苦手で、いっつも酔っちゃうんですけどね。」


やけに落ち着いた様子で話す錦。というより諦めの方が近いのか。


「ここは俺たちが戦ってるところ。八方の血柱(はっぽうのけっちゅう)っす。」


「……いや、どこだよ……」


アホ面で呆然とする一心。一心のぼやきは闇に吸い込まれていく。あたりは静まりかえっており、聞こえるのは金属音とサファイアの嗚咽だけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る