モブと社畜と異次元空間

夜名月

序章 モブと社畜と異次元空間

♯1 モブと社畜と異世界召喚

 どこか寂しげな朝方、彩度の低い風景。


(んぁ〜もー最ッ悪だわ〜。はい詰んだ〜ツンデツンデ〜。)


 そんなことを心の中で垂れ流している高校生。彼の名は菅原一心すがわらかずし、高校2年の冴えないモブ校生。たった今電車に揺られ、叩き起こされたところである。


(これ昨日徹夜した意味あるか?あぁ〜信じらんね〜。)


一心の高校は今日から定期テストが始まり、それに伴った提出物を彼は徹夜で終わらせたのである。が……


(提出物って、8時半までだったよなぁ…普通テスト後に回収だろ…唐沢先生よぉ〜)


もう察しがついたかもしれないが、一心は降りる電車を寝過ごしてしまったのである。降りるはずの駅は7時47分、現在時刻は8時6分。どう足掻いても学校には間に合わない。


 諦めたのかおもむろに窓から外を見ようとする一心。だがいつもと違って人が多いので反対側の窓からでは見えない。いつもよりスーツ姿の人が多く、すし詰めとはいかないまでもかなり混んでいる。首を捻り窓から外を見やると、背の高い建物が多く全体的に鉄っぽい印象を受ける。


 (とりあえず降りるか)


一心がそう思って立ち上がった時のことだった。


「ぁ…、あなた、その足元はどうなってるの?」


話しかけたのは前にいた厚化粧気味の年配女性だった。それも何故だか疑念に満ちた様子で。


「えっ?足元…ですか?」


これまた疑念に満ちた様子で一心も言う。疑いながらも足元を見てみると…


(……?なんか光ってね?)


唐突過ぎたのか、反応が遅れる。足元が不自然に点滅しているのだ。確かに自分の足元で。少し動いてみると、その光もまた移動する。一心の動きと連動している。それは年配の女性にも伝わっていたようだ。


「この人、テロリストよ!!」


「エ?」


あまりの展開に、変な声が出る。彼女の一言は車両全体に響き渡るほどのものだった。一気に自分の方に視線が集まるのを感じる。ざわめきが広がり、また1人こちらを向く。


(えっ?あ…違う!テロリスト?え?)


動揺してオロオロしていると、また大きな声が響く。


「この人の足元を見て下さい!!足元が光っているでしょう?!これは爆弾です!!この人はテロリストです!!」


あの女性がさっきより少し離れた位置で叫んだ。ちゃっかり安全な位置まで避難している。


(いやそうはならんやろ?!)


なっとるやろがい。車内はざわめきと混乱で満ちており、別の車両に移る人、何故かスマホを向けてくる女子高生など、混沌としている。


 もう一度足元を確認すると、やはり光が点滅しており、しかも光の強さ、点滅の速さが増していっている。そろそろ何か起きそうな様子だ。


「君!本当にテロリストなのか?!」


「ぁっあの…違います!!」


やっとの思いで反論する。しかし


「だったらその光はなんなのよ!」


やはりあの女性が声を上げる。その間にも光は強さを増し、まばゆいまでに成長していた。


「だれか光をなんとかできないか?!」


「君、足を上げてもらえるかな?」


2人の男性が近くに来た。2人は床にしゃがみ込んで光を触ったり押したりしている。しかし、光の強さと共に大きくなった光は、しゃがみ込んだ大人2人を隠すほどまで成長していた。


「あっあの!俺はテロリストじゃないけど、危

ないかもしれない!…だだだから離れて!」


かなりビビりながらも声を上げる。しかし、人三人を隠すまでに成長していた光は、いつの間にか止まっていた点滅を再開した。閃く閃光が3人の視界を強く殴る。


「うわああぁぁ!!」

「オエエエッ二日酔いいいい!!!??」

「ポリ○ンショックウウウ!!?」


3人の視界は白く塗りつぶされ、間も無く暗転した。

 


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