運命の出会い

「ちょっと一旦たんま!!!早すぎて死ぬから!!」


いまだに雲が下の方に見える高さを経験したこともない速度で飛ばされる。ふと右を見ると天に浮かぶ巨大な島を見つけた。


あれが空島か…この状態から無事に生きていれたらいつか行ってみたいな。


なんて半ば現実逃避しながら呑気に思っていると体が空島の方へどんどん加速していく。


「え??嘘でしょ??あそこに着陸するの??危険地帯って書いてあったよ?!最初からハードモード過ぎない?!」


焦っているとどんどん体が空島へ接近していきもう島の森がちゃんと目視できる距離まで近づいていた。


「おい。ちょっと速度落とせ!!この速度のまま突っ込んだら死ぬって!!」


必死の訴えも虚しく速度を落とすことなくどんどん近づいていきもう地面がわかる距離まで近づいていた。咄嗟に体を丸める形をとり腕で頭を守る。凄まじい衝撃が体に走り何度も地面を転がされようやく体が止まる。


「痛っ…くない?」


地面を抉りながら着地したはずが体は全くと言っていいほどダメージを受けていなかった。


鬼人に転生して体が頑丈になったのかな…?


そう言って無理やり自分を納得させ、土を払いながら立ち上がるとそこには異様に成長した樹木が生い茂る巨大樹の森があった。


すごい…早速異世界を感じる…


地球の頃では考えられない大きさの木が辺り一面に生えている。

この木を見上げているだけでも圧倒されて自然と時間が過ぎてしまいそうだが日が暮れてしまうのでとりあえずなにか建物はないか確認するために木に登って見ることにした。

仮に木から落ちたとしてもあの勢いで地面にぶつかって無事なんだから大丈夫だろうと思い木に手をかけて体を持ち上げようと腕を引く。

すると突然体が上に吹き飛ばされる。焦って咄嗟に目の前にある木の枝を掴む。


あっぶなぁ〜…


混乱しながら下を見ると最初に掴んでいたところから5mほど上に登っていた。


軽く登ろうとして腕を引いただけだぞ…


これが鬼人の身体能力かと驚きと興奮を感じながらもう一度さらに力を入れて腕を引いてみる。

ビュン!という効果音が出そうなほど凄まじいスピードで上に上がっていきあっという間に1番上まで着いてしまった。


まず体の使い方覚えないとな…


しみじみと感じながらあたりを見渡す。見える範囲では一面巨大樹の森が広がっており建物のようなものはものは無い。


う〜んどうしようか…


ふと自分が来た方向を見てみると空島の端っこから下の方に雲海が広がっているのが見えた。かなり遠いが視力も強化されてるらしい。

どうやって浮いてるんだろかとかまずどうやって出来たのだろうかなんて数分ほどボケーっとしながら外を眺めていた。

その後聴力も強化されてるか試すために目を閉じて周りの音に集中してみる。

段々と森の音が聞こえてきて動物や魔物と思われるものの鳴き声も聞こえてくる。

コツを掴んできてさらに聞こえる範囲を広げていくと川のせせらぎが聞こえてきた。

とりあえずそちらの方へ移動してみることにした。


音を頼りに魔物思われるものを避け数十分ほど歩いたところで川に着いた。

とりあえず顔を洗おうと水面に顔を近付けると見慣れない顔が写る。

水の中から誰かが覗いているかと思い一瞬ギョッとしたが、徐々にそれが自分の顔だと理解していく。転生してから初めて自分の顔を見るが、前世をベースにしてかなり男らしく美化された顔になっていた。

キリッと男らしい幅の狭い二重とスっと鼻筋が通り形の良い高い鼻。血色の良い薄い唇と整っている輪郭。


たしかに前世の面影はあるがかなりイケメンに大人っぽく成長したなぁ〜


体つきも身長190cm後半で前世を超える筋骨隆々な見事な体をしている。まさに戦闘種族と言った具合である。前世では体操をやっているので身長は高くてもしょうがないで済ませていたが正直身長が低いのがコンプレックスではあったのでかなり嬉しい。


予想外の副産物に上機嫌になりながら水を手ですくって顔を洗いひと休みしていた。

数十分川の近くに腰を下ろし休んでいたがそろそろなにかしないとなと思い立ち上がろうとしたその瞬間、突然恐ろしい悪寒が体に走る。急いで振り返ると、そこには恐ろしいほど引き締められた体に獰猛な目付きをした鬼が静かに佇んでいた。


あれはやばい。殺される。


直感がそう告げた瞬間になりふり構わず走り出した。慣れない森を全力疾走する。悪路にもかかわらず人間の頃よりも何倍も早く走れているがそんな事を気にしている暇は今はない。


とんでもない恐怖を必死に押し殺しながら逃げていると突然目の前にさっきの鬼が現れる。


「なっ?!」


避ける暇もないまま腹を前蹴りで抉られる。

声も出せず来た道をものすごい勢いで飛ばされ後ろの木に叩きつけられる。


「グハァッ!」


抉られた腹は大量の血を流し今にも意識が飛びそうになる。


--くっそ…こっちに来るな…


わざとらしくゆっくり近づいてくる鬼は口元に残虐な笑みを浮かべたまま目の前まで近づいていた。


--動け…動けっ!!チートなんだろ!?今動かなくてどうする!!


何とか体を動かそうとしてみるが全く言うことを聞かない。


--まだ何もしてないんだ!俺の人生これからなんだよ!


「クソッタレ…まだまだやりたいことあんだよ!!邪魔すんじゃねぇ!!」


この世の理不尽に対する怒りを血反吐を吐きながら叫んだ。が、そんなこと魔物が聞いてくれるはずもなく無慈悲に拳が振り下ろされる。

当たる!!そう思った瞬間、鬼の腕が飛ぶ。


「グルァ!!」


鬼は驚いたような顔をしながら大きく後退し、当たりを見渡す。何が起きたのかまるで分かっていない様子だった。


死ぬ寸前だったところから急に助かり、何が起きたのかわからずただただ呆然としていると


「ったく何が起きてんだよ。また奴らが来たかと思って見に来たら見た事ない鬼人が死にかけで倒れてやがる。おい。後で説明してもらうからな?」


いつの間にか目の前にいた容姿端麗な男は、刀を右手に持ち風を身に纏い浮きながら面倒くさそうな顔をしてそう告げる。

驚きすぎて何も言えず見ていると後ろから激怒した鬼がこちらへ駆け出している。


「あぶない!」


掠れた声でそう叫ぶと


「とりあえず意識は保っとけよ。家にまで持って帰りたくないからな。」


そう言いながら何気なく刀を持っていない方の手を鬼の方に向けてぐっと閉じる。

次の瞬間まるで龍のような雷が耳が壊れるかと思うほどの轟音と閃光を撒き散らしながら鬼を喰らう。しばらくして光と音が止むとそこには抉れた地面のみが残っており、鬼は跡形もなく消滅していた。


おいおいおい…まじかよ!カッコよすぎるだろ!!


体中の痛みも忘れて興奮しまくる。


決めた。何があっても絶対この人の弟子にとってもらう。

初めての一目惚れが男だとは思わなかったけどこの際そんなの関係ない。


さっきと一変しまるで緊張感の無い事を考えていると恐怖によって何とか保たせていた意識がどんどん消えそうになっていく。


「あ〜威力間違えた。っておい!気失うなって言っただろ!!起きろ!!」


む、無理さすがにこれ以上は…


ここで何とか保たせていた意識がここで完全にシャットダウンした。













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