ゾンビ侵攻!首都防衛作戦

葛城マサカズ

第1話 ゾンビが出現する日常

 「構え!」

 ここは東京都内某所、アウトレットモールの駐車場

 透明なバイザーを付けたヘルメットに紺色の出動服の上に防弾ベストを着込んだ警視庁銃器対策部隊の隊員達が指揮官の号令でMP-5短機関銃を構える。

 銃口を向ける先には三人が居る。

 あたかも酒に酔ったような千鳥足で三人は歩いて来る。三人は夫婦らしい男女とその子供らしい男の子だ。

 そんな三人へ隊員は銃口を向ける。

 「対象へ射撃!撃て!」

 指揮官が命じると隊員達はMP-5の引き金を引き、三人へ銃撃を浴びせる。

 三人は幾らか銃弾が身体に当たっても耐えたが、頭部を吹き飛ばされると糸が切れた操り人形のように力が抜けて倒れた。

 「山田巡査長、対象の沈黙を確認」

 指揮官に命じられて山田巡査長は刺又を持って三人に近づく、2mほど離れた位置から山田巡査長は刺又で三人を突く。

 子供らしい対象を突いた時だった。それは犬が不審者へ向けて吠えるような声を上げて立ち上がった。

 「くそ、頭が半分残ってる」

 山田は悪態をつきながら刺又で対象を押し返す。その対象は頭の右半分がまだ残っていた。

 「山田巡査長下がれ!対象へ再射撃用意!」

 山田巡査長が戻ると隊員達はふらふらと立つ対象へMP-5の銃撃を浴びせた。

 残る右半分の脳を破壊されたその対象は倒れた。

 「やっと片付いた」

「手間取らせやがって」

 人間の子供の姿をしていたとはいえ、隊員達は倒した事を後悔していない。

 「対象全ての沈黙を確認、回収作業にかかれ」

 指揮官が命じると防護服を着た隊員達が棺桶のような箱を台車に乗せて現場に現れた。

 対象と称される三人は棺桶のような箱にそれぞれ入れられる。それは銃撃で飛んだ肉片も残らずだ。

 箱には円状のマークを重ねた表示が貼られている。いわゆるバイオハザードマークとも言われる感染症廃棄物の表示だ。あの三人は危険物として回収されている。

 対象の三人を入れた箱は回収作業が終わると、トラックのアルミ製箱型の荷台に積み込まれた。

 回収された後は防護服の隊員により消毒液が撒かれる。

 「あれじゃ一週間は駐車場が使えないじゃないか」

 消毒作業を遠くから見るショッピングモールの店長は嘆く、法律で消毒作業をした後でも一週間は立ち入り禁止区域にされてしまう。

 駐車場が一週間も閉ざすとなれば来客する人数が減るだろうからだ。

 「現場での作業終了、これより撤収する」

 消毒液を撒いた駐車場に「準汚染区域につき立ち入り禁止」の看板を立て、範囲を示す黄色い立ち入り禁止標識テープを張ると、銃器対策部隊の隊員などの警官達は撤収した。

 警官が撤収すると、カメラを持ったマスコミが封鎖された駐車場を撮影したり、店長や近所の住人へインタビューを始めた。

 「子供も居ますし、ゾンビは怖いですね」

 「ここにもゾンビが来るとは思わなかった」

 住人は誰もがそうカメラとマイクの前で住民達は語る。

 202X年、日本はゾンビの脅威が日常となっていた。


 始まりは三年前にインドで凶暴化した人間が発見された事だった。

 その人間は噛みつき人肉を食らいもした。

 当初はそんな凶暴化人間も病院に収容していたが、医者や看護師だけではなく患者も襲い、病院が壊滅状態にさせられた。

発見から二カ月でインド政府は凶暴化人間への医療を中断し、駆除すると決めた。

 これは世界で共通認識になった。

 各国は研究用を除き凶暴化人間を発見した場合は警察や軍が銃火器などで駆除をした。研究によりウィルスによる感染で死亡した人間が凶暴化人間に変貌すると判明した事で「凶暴化人間は人間ではない」と誰もが思うようになった。

 いつしか凶暴化人間の姿から「ゾンビ」と言われるようになった。それは凶暴化人間を人間では無いと思う為でもあった。

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