第55話登場シーンはカッコよく!

「まず目標を明確にしよう」

俺は4人でしゃがみこんで、顔を合わせながら言った。


現在、あいつの住むダンジョンから記憶石を取る為に、崖上で、皆で作戦会議をしている所だった。


「目的は記憶石の採取。なのでまず、あいつを倒す事は考えから外す」

「うん…」

「そうじゃな…」

「あぁ…」

俺を除く3人が、俺の提案に賛成する。

「となると実行出来る作戦は大まかに2つだ」

俺は、岩場が多く土の少ない地面に、そこらにあった適当な小枝を使って、図を書きながら。

「まず1つ、俺達全員で乗り込んで、ミト以外の全員があいつの相手をして気を引く、そしてその間に荷物を空中に浮かせて運べるミトが記憶石を採取する、という方法」

1つ目の案を聞いたミトは、ゴクリと唾を飲んで。

「うむ…」

と、返事をした。


…確かにこれではミトの負担が大きい。

もし俺とネルと生駒であいつを止められなかったらまず間違いなくミトは死ぬ。

これではダメだ。


俺はそう思いながらも、続けて2つ目の案を出す。

「そして2つ目、さっきみたいにあいつがダンジョンから出た所を狙い、ダンジョンに潜って記憶石を取ってくるか」


まぁ俺としては、はっきり言ってこの案は採用したくない。


一見得策に見えるかも知れないが、まず何時あいつが戻って来るかも分からないし、それに中にもう1匹居たりしたら、絶対に俺達じゃ叶わない、そう考えるとこの案は、ほとんど自殺行為だ。


と、俺と同じ考えに達したのか、生駒が口を開いた。

「1つ目はともかく、2つ目は不確定要素が多過ぎる。このままその作戦を実行するのは時期早々だな」

生駒はそう、珍しくまともな事を、自らの顎を触りながら言った。

「まずあいつの行動パターンを探らないと行けないし、それに…まぁこれを言ったらキリがないが、ダンジョンの中にもう1匹エスキャナティがいる可能性もある。例えば子供とかな」


ほぅ…。

俺は、あまりにも先程とは変わりすぎている生駒の思想に驚きながら。

「あぁ、その通りだ。となると1つ目の作戦が1番良さげだが、……どうだ、ミト…やれそうか?」


…この作戦では、実質ミトは単独行動となる。

この状況でミトにかかるプレッシャーと負担は図り知れないだろう。


俺がそう言って、断ってもいいんだぞという思いも含め、優しい口調でミトに問う。

するとミトは、瞳を閉じて、ふぅーと息を吐き。

「大丈夫じゃ…私は3人を信じている」

と言った。


………流石俺の仲間だな。


俺はそう思うと、ミトの頭に手を置いて、緊張をとくように、乱暴にワシャワシャと撫で尽くす。

「な、何をする!お主本当に浮気でもするつもりか?!」

俺は、またもや素直に甘えられないミトの頭を、強引に撫でながら。

「そんなんじゃねぇよ。これは応援だよ応援」

と言った。

なおもミトの頭を撫で続ける俺に、

ちょっとネルの雰囲気が怖くなってきたので、俺はミトの頭から手を引きながら。

「ありがとう」

と言った。



ーーそこは昔、記憶石というレア鉱石の、国内最大規模の採掘場だったらしい。

そしてその名残りなのか、ダンジョンのそこかしこに、壊れかけの工場用足場が点在していた。


「暗いね…」

「そうだな…転けるなよ?」

「ふふっ大丈夫だよーー」

俺とネルが、そう言ってイチャついていると。

「な、なぁタクヤもももももしエスキャナティが戻って来たらどうしよう?!死ぬよ!俺達死んじゃうよ!」

生駒が、先程までの冷静さはどこへ落としてきたのやら、ワサワサと手を震わせながら言ってきた。

「縁起でもない事言うんじゃねぇよ、ミトが漏らしちゃうだろ」

「殺すぞ」

俺が茶化す様に言うと、例の如く4つの宝玉を出現させ、目をギンギンにして言ってくる。


おっと、それは本気の目ですね。


俺はそんな事を思いながらも、またもや例の如く、「すいませんすいませんもうしません!」と言って、ミトに平謝りする。


まぁ、どうせ謝るなら最初から言わなければいいと言う事なのだが、俺は結構このノリが気に入っているので、今後も辞める気は無い。


俺は今、あの後皆で考えた、1つ目と2つ目の作戦を合わせた作戦ーー名ずけて、1つ目と2つ目合わせちゃったよ作戦、を決行していた。

その内容は、エスキャナティが居ない今、ダンジョンに潜り、もしやつが戻って来たり、新しいやつが奥に居たら、2つ目の作戦を発動させ、ミト以外の皆で、やつの気を引くという作戦だ。

ちなみにギルドで聞いたエスキャナティの情報では、エスキャナティは全身が硬い鱗に覆われ、目などのか弱い粘膜組織は体の表面上には無く、表面上にあるのはなんでも吸い込む口だけなそうだ。

しかも急所である心臓の位置をずらすチート能力もあるのだとか。

ので、倒す方法は、強力な火力の魔法で蒸発させるしかないのだとか。

こんなに強い魔物なのになんでランクSでは無くランクAだと言うと、それはただただあいつの知恵が低い事と、攻撃方法が捨て身の突撃だけということなのだとか。

まぁ傷つかない最強の鱗を持っているので、捨て身の突撃も結構効果的だと思うのだが…。

俺はそう思いながらも、

まるで無理ゲーのエスキャナティが住む、ダンジョンを奥に進む。

幸いにも、まだ生駒の索敵スキルに反応は無い。

俺達はこのまま、あいつが現れ無い事を祈りながら、さらに奥へと進む。

すると。

「あ!タクヤあれじゃない?」

突然、ネルが先程まで抱きついていた俺の腕を引っ張り、言ってきた。

見るとそこには、ダンジョンの中では珍しく白色で、俺とネルが巨乳キメラに貰ったものよりは少し濁った色をしているーー記憶石があった。

『おぉ!これが記憶石というのか?』

生駒とミトが、声を揃えて言う。


あぁそうか。2人は見た事無かったんだったな。


俺はそう思うと、改めて

「そう、これが記憶石だ。俺が見たやつとは色が微妙に違うから加工が必要なのかも知れないけど」

と、説明した。

俺の説明を聞いた生駒は、またもや『おぉ!』と声を上げて。

「凄いなタクヤ!」

と、言ってきた。


あぁ、そうだな。


俺はそう思うと、ミトに「じゃあミト、頼んだぞ」と言って、ミト以外の皆は、もしやつが現れた場合エスキャナティにミトの居場所を悟らせない様にする為、生駒の索敵スキルの効果範囲から外れない程度に、その場から離れる。


「うふふ良かったね生駒!ね?私のタクヤは凄いでしょ!」

と言って、誇らしげに鼻を鳴らすネル。

おっと、やけに生駒が俺熱心になってたのは君のせいでしたか。

俺はそう思いながらも、「そうだぞ!少しは俺の凄みが分かったか?」と言って、ネルの言葉を紡ぐ。

すると生駒は、突然しんみりとした表情になって…。

「本当にありがとう」

と、深々と頭を下げて言った。

おっ……ふっ…。

俺は一瞬慌てながらも、なんだが最初にあったばかりの頃の生駒の様子を思い出して、懐かしさを感じていると。

「これで母も安泰だ。ようやく穂積を安心させられる」

「ふっ…そーー」


?!?!


くっ…この気配は…!

「生駒…どうやら安心するのは早いみたいだぞ」

異常なほどの気配を汲み取った俺は、深々と頭を下げてくる生駒を無視して、ダンジョンの入口の方を見ながら言った。

と、ようやく生駒の索敵スキルにも反応があったらしく。

「なっ…これは…!!」

「タクヤ…怪我したらちゃんと我慢せずに言ってね?私が助けに行くから」

「あぁ、任せろ。…それじゃあ……いっちょやるとするか…!」


グァァァァァァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!


やつが現れた。






《あとがき》

はいどーもーあとがきでーす。

ね、やって行きたいと思いますが。

まぁ3回目となりネタも切れ、もうやる事が雑談しか無くなってきた今日この頃ですが、頑張って絞り出した結果、今回は、ギルドの受付のおねぇさん(名無し)のコメディ短編小説を書こうと思います。多分面白く無いので、見たい人だけ見てください↓↓↓



ーーーーー番外編ー受付の日常ーーーーーー


ギルドの受付穣である私の朝は、まず発声練習から始まります。

「口が汚い冒険者はお断り〜男も女も関係な〜い皆な皆な汚いぞ〜」

↑これはあくまで持論です。

そしてここからが本番!

「ふぅ〜おはようございます!今日もクエスト頑張りましょう!帰ってきた時人数が減っていない事を祈っています!それでは、行ってらっしゃい!」

そして私は、バシャバシャと顔を洗って、外出用の服を着る。

(もちろん胸パッドは忘れずに!AからGに爆あげだ♪)

あらかたバストのドーピングが済んだ私は、ガチャっと玄関の扉を開けて、(行ってきます!)と言って外に出た。

「やぁおはよう今日はバイトは良いのかい?」

「はい!今日はギルドの仕事です!」

「おぉそうかい、ギルドの皆さんのお陰で安心して森に行けるよ、ありがとうね」

「ふふっはい!どういたしまして!」

そのままギルドに向けて、上機嫌で歩いて行く。

私は、この仕事が好きだ。

大好きな街の安全を守れて、皆に感謝される。

そんな【やりがい】のあるギルドの仕事は、私にとって天職とも言えるだろう。

ーー「おはようございます!」

私はギルドのドアを開けながらそう言う。

「おはようございます。所でドアを開ける時はもう少し静かにして下さい」

すると新人の同僚が、そう言って挨拶をしてきた。

「もう冷たいなぁーーどひゃ?!」

ドテーーーーーー

何も無い所で転ぶ。

「はぁ…落ち着いて行動しないからですよ」

「あはは…ごめんごめん!」

私は服に付いたホコリを払いながら。

「もう〜冷たいなーー君は!」

そう言って、新人の頬っぺをつつく。

「全く…先輩は冒険者の方々にはクールなのに、私に対しては随分ゆるくなりますね…」

「だってだってー新人ちゃん可愛いんだもーん!」

「はぁ…新人ちゃんはやめてください」

「なんでよーーー」

私がそんな感じで、素っ気ない新人ちゃんに抱きついていると。

「おい新人!こっち来て掃除しろ!」

と、ギルドマスターの声が聞こえて来た。

「あ、はい!」

返事をした新人ちゃんは、律儀に私に頭を下げて、呼ばれた方に行く。


…悪い子じゃないんだけどなぁ。


私は陰ながらに、新人ちゃんの事を応援していた。

ーー「おい新人!なんでそんな事も出来ないんだ!」

「すみません…」

「全く…この前もそうだ、トゥールストーン(嘘を見抜く石)を使う時は細かく宣言して貰えって言ったのに!」

(あぁ、あの珍しい職業の人の事を言ってるのか…)

「すみません」

「はぁ…全く…今度は許さないからな!」

ギルドマスターはそのまま私に、バツとして掃除しろと言って、書類室から出ていってしまった。

「はぁ〜。全く…私は何をしているんだ。妹を養わないと行けないのに…」

ーー「全く!なんなんだあの新人は!おっぱいが大きかったからギルドに入れてやったが、驚く程に真面目に仕事をするからセクハラする時が無い!クソっ…。……いや待てよ…今なら誰も来ないんじゃないか?」

俺はそう思うと、早速書斎の扉を開けた。

ーー「はぁ…」

私はマスターに言われた通り、書類室の整理をしていた。

するとドアの向こうから、ドンドンドンと言うやけに騒がしい足音が聞こえてきた。

「…?!」

私は、何故か背筋に寒気を覚え、本能的に机の下に隠れる。

すると。

バン!

書類室のドアが勢いよく開けられる音が響く。

「おい新人!クソっどこ行きやがったっ!」

ハアハアハアハア

だ、ダメだ。

今出ていっちゃ行けない!

マスターは私を襲う気だ!

先輩から忠告を受けていたのに…!

私は鳴り止まない心音を無理やり抑えようと、体を最大限に縮める。

ハアハアハアハア

「チッ…」

バタン!

出て……行った?

私は恐る恐る、机の下から顔を出す。

そして、あたりを見回すと!

「ア゙ア゙、こんな所に隠れてたのか」

マスターはズンズンと、私に迫ってくる。

「?!?!」

ハアハアハアハア

「や、やめて!来ないで!」

「ふっ…ほら、服を脱がせろ」

マスターは、私の顔にズボンを近ずけて、そう言ってくる。

ハアハアハアハア

「早くしろ!」

「う…うぅ……」

私は渋々、ズボンのチャックに手を掛けると…!

バン!!

「ほやぁ?!あ、ごごめんね〜お取り込み中だった……?」

突然、先輩が勢いよくドアを開けて入って来た。

「あっ…」

「なっ…くっ……」

先輩の言葉を聞いたマスターは、黙って書斎へと戻って行った。


ーー「あの!助けてくれてありがとうございました」

私は今、書類室の掃除を、先輩と一緒に掃除していた。

私はそう言って、しっかりと頭をさげる。

「? 何が?」

「へ?」

「あ、あぁ!さっきの事?マスター変態だからねーー」

「えっ、わざとじゃ無かったんですか?」

「ん?わざとな訳ないじゃん!」

「え、でも勢いよく部屋に入って来てくれた…」

「あぁ、あれね、実はあれタンスの角に小指ぶつけちゃっただけなんだよねーーあははー面目ない…」

そう言って、ポリポリと頭をかく先輩。

「は?」

「ん?」


「ふっ…あははは、先輩はやっぱり凄いですね」


私の意味のわからない言葉に、「ほょ?」と言って、首を傾げる先輩。

(やはり先輩のラッキーコケラレは侮れないな…)

私はつくづくそう思った。




ーー「くわぁ…今日もよく働いたなーー」

私は背伸びをしながらそう言った。


~完~

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