第37話戦闘技術

「ネルもおいで!一緒にしごいてあげるよ!ワハハハ!!」

「うん!」

フィスばぁの怖い言葉に頷いて、ネルは2階の窓から飛び降りる。

そして驚くほど静かに地面に着地する。

その静かさに俺が無言で驚いていると、ネルが俺に近ずいてきた。

そして

「タクヤ!一緒に修行しよう?」

と言って、俺に片手を差し伸べる。

かわいい!天使か?天使なのか?!

「あぁ、もちろんだ☆」

俺はそんなネルの様子にデレデレしている事を隠すように、イケボで返事をしながら、ネルの手を取った。

はぁ………全く、ネルには敵わないな…。

俺はその時、これまで全然出なかったやる気が、出た気がした。


ーー「いいかいタクヤ!ネル!戦い方には大きく分けて2つある。まずは近距戦と遠距離戦の2つだ。お前さんらは近距離戦の方だな。ミトは遠距離だ。」

なるほど。

魔法系統の攻撃は遠距離でも出来るって訳か。

「そしてその中でもさらに分離する。近距離の場合は、魔法はあまり使わないが、その分魔術というものを使う。」

「魔術?」

魔法と何が違うのだろうか。

と思っていると、ネルが俺の代わりに聞いてくれた。

「魔法と何が違うの?」

ネルナイス。

「んーまずは2つとも体内の魔素を媒体とした物だ。違いは魔素を直接体で扱い、自分のみにかけることが出来るのが魔術。体内思考の中で魔法陣を描き、遠距離的に強力な技を出せるのが魔法だ。」

なるほどなるほど。

簡単に言うと、自分にしかかけることが出来ないのが魔術。

自分以外にもかけられるのが魔法という事か。

まぁなんとなく俺は理解したが、ネルは全然分かっていないらしい。

一様うんうんとは頷いてはいるが、目が死んでいる。

まぁ魔法が使えない猫族のネルが、体内思考やら魔法陣やらと難しい単語を聞いても、分からないだろう。

俺はそんなネルに「あはは…」と苦笑する。

そして今度は、俺が前から思っていた疑問を思い出す。

じゃあスキルと言う物は何なのだろうか。

そうスキルだ。

ギルドの審査でクリエイターならコピー出来るとか何とか言っていたが、色々あって結局、全然コピー出来ていない。

俺は疑問を、今度は自分でフィスばぁに聞いてみる。

「じゃあスキルって言うのはなんなんだ?」

俺の質問を聞いたフィスばぁは、「お、いい質問だね」と言って、話し始めた。

「スキルって言うのは才能の目覚めだ。誰れしも潜在能力って言うのは埋もれているものなのだ。だが日常生活の中で使わないと、その才能は無意識に埋もれてしまう。だが努力して、体がその潜在能力を必要とした時、習得出来るのがスキルだ。要するに努力あるのみと言う訳だ!ワハハハ!!」

なんだそうなのか、ちょっと残念だな。

俺はスキルと言う物は、直ぐにゲット出来るものだと思っていたので、フィスばぁの努力あるのみと言う言葉を聞いて、少しガッカリする。

まぁ根気強くやるか…。

決意したはいいが、やはり人間。

楽な方を選びたくなる物だ。

「何ガッカリしてんだい!お前さんにはクリエイターがあるだろ!ワハハハ!!」

「え、あ、あぁ!」

なんだ!スキルもコピー出来るのかよ!

まどろっこしい言い方しやがって。

俺は勝手に勘違いしていた様だ。


「よし!じゃあまどろっこしい説明はここまでにして、修行を続けるぞ!!まずは基礎体力の向上からだ!走れタクヤ!ワハハハ!!」

またかよ…っ!

俺は「はよはよ!」と急かしてくるフィスばぁに釣られて、また走り出す。

「頑張って!」

俺がいやいや走り出すと、ネルが応援してくれた。

嬉しい。

かわいい。

嬉しい。

かわいい。

俺はにやけながら、走り出した。


「よしネル!お前さんは基礎体力は出来ているから、一つ一つの攻撃の威力を上げよう!」

「威力?」

「そうだ!」

弱いのかな……?

「そんなに弱い?」

「あぁ!凄くな!ワハハハ!!」

なんかちょっと凹むな…。

こう思い、私は肩を軽く落とす。

「そう落ち込むな!お前さんは伸び代がある!お前さんはな!ワハハハ!!」

むぅー。

その言い方だとなんかタクヤに伸び代が無いみたいに聞こえるんですけどーー。

私はむくれながら、頬を膨らます。

「そうむくれるな!別にタクヤに才能が無いのではない!ただあいつは職業に頼りすぎなだけだ!ワハハハ!!」

えっ。

私は思考を読まれたようにドンピシャの事を言われたので、一瞬目を見開いて驚く。

「フィスばぁは、思考が読めるの?」

「ワハハハ!!そんな訳ないだろう!ワハハ!!」

じゃあなんで分かったのだろう。

むぅーやっぱり元A級冒険者は侮れないな。

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