第36話リーダー

私は今、タクヤを探す為に屋敷の中を歩き回っていた。

屋敷は三階建てでとても広く、何処の部屋も見た事ないくらい豪華だった。

「タクヤどこ行ったのかな〜?」

む〜一緒に買い物でも行こうと思ったのに。

むくれながら屋敷の長い廊下を歩く。

2階の廊下の窓からは、眩い太陽の光が入ってきていて、茜色の絨毯を神々しく照らしていた。

そんな廊下を歩いていると、外から何やらやかましい声が聞こえてきた。


「後400回!!」

「無理ーー!!」

「ワハハハ!!」


ん?

見るとそこには、手を頭の後ろに組んでスクワットをしているタクヤと、それを近くで腕を組みながら見ているフィスばぁが居た。

なんだ!あんな所にいたんだ!

私はそう思うと、ガラガラと廊下の窓を開けて、タクヤに「タクヤ〜!!何してるの〜?」と言った。

するとタクヤは、2階から聞こえてくる私の呼び声に気づいたのか、「ネルーーー!」と言いながら、こちらに駆け寄ってくる。

そして屋敷の外壁に縋(すが)り付きながら、

「助けてくれぇ〜〜〜!死ぬ〜殺される〜〜!」

と、半泣きで言って来た。

「えっどうしたの?」

私は状況が飲み込めずに、おろおろしながらタクヤに問う。

「フィスばぁに修行を頼み込んだら、めっちゃえぐい事させられてんだよ〜」

「何言ってんだい!そんなの覚悟していたんじゃ無かったのかい!ワハハハ!!」

「してたけどさぁ〜こんなに辛いなんて予想できなかったもん!良くよく考えてみればネルとかミトが居るし?別に俺が強くなくてもいいし?(あっ、バイトの時間だ)だし?」

言い訳しているタクヤ。

かっこいい♥(←何処が!!!???)

そんなタクヤにフィスばぁが、辛辣に言葉を告げる。

「タクヤァァァ!!!!」

ビクッ

タクヤに釣られて私も、フィスばぁの大声にビックリしてしまう。

そしてフィスばぁは、ズシズシと屋敷の壁にへばりついているタクヤの肩に、両手を乗せる。

そして急にしんみりな空気を漂わせるフィスばぁ。

「いいかタクヤ、仲間に戦わせて自分だけ楽をするなんて、そんなのクソ野郎のやる事だ。お前がやらなくてどうする。お前が傷つかなくてどうする。チームのリーダーと言うのは仲間の代わりに傷つく為にいるんだ。それで仲間が傷つかないのなら、自分は幸せだと思えるようになるんだ。この言葉の意味が分かるようになれタクヤ。なるんだ。分かったな」

フィスばぁは決心した様な強い目でタクヤに言った。

タクヤはその言葉を聞いて、一瞬呆然とした後、「リーダー…」と呟いた。

そして呟いた後、バッと勢いよく立ち上がり、「俺、強くなるよ!ネルやミトを守れるように!!」と、タクヤは宣言した。

その答えを聞いたフィスばぁは満足そうに笑った後、「あぁ!それでこそ私の弟子だ!ワハハハ!!」と、より一層大きい声で言った。

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