第173話 姉の代わりにVTuber 173
「――『チューンコネクトプロダクション』に来てたって……。
春奈(はるな)か?」
浜崎 唯(はまさき ゆい)の質問に、穂高(ほだか)は、すぐに答えを出し、唯が春奈の話題を出してきた事を、意外に思った。
「え? 春奈ッ!?
なッ……、そ、そんな関係なの??」
以前、『チューンコネクトプロダクション』に、穂高と春奈が訪れた際には、穂高は春奈を、杉崎(すぎさき)と呼んでおり、穂高の言葉を聞いた唯は、激しく動揺した。
「そんなってなんだよ」
「そんなって……、あ、アレだよッ! アレッ!!
恋人的な??」
「はぁ??」
慌てふためく唯に対し、穂高は間抜けな声を出した。
「あり得ないだろ、俺と春奈が恋人なんて……。
お前、春奈がどれだけ学校でモテモテか知らないだろ??」
「やっ……、そ、それは関係ないでしょ?
前に会った時は、名前で呼んで無かったじゃん! 関係が進呈したと思うじゃんッ!?」
ヒートアップする唯に対し、穂高は淡々とした様子で答え、唯が勘違いする理由に、あまり納得もいっていなかった。
「お前だって俺の事、名前で呼んでるだろ?
別に、変な事じゃ無いし……。
――とゆうか、なんだよ。 聞きたい事があったんじゃないのか??」
会話が段々と脱線していっている事から、穂高が本来の話題へと戻し、唯も穂高の言い分が気に入らないのか、不満を感じている様子だったが、穂高に促されるように、本来の話題を切り出した。
「い、いやまぁ……、聞きたい事って言うのは、あるんだけど……。
な、なんて言ったらいいものか…………」
質問をし始めた唯だったが、いざ本題を切り出すとなると、上手く言葉にならず、しどろもどろな話し方になった。
「おい、大したことじゃないなら、もうボイス切るぞ~?
やる事、まだ残ってるし」
「ちょッ、ま、待ってッ!!
今から言うからッ」
中々切り出さない唯に、穂高がしびれを切らすと、唯は慌てて引き止め、覚悟が決まったのか、ようやく話し始める。
「――あ、あのぉ~~っさ? 春奈ちゃんってどんな感じの人??」
「はぁ???」
唯の質問に、穂高は先ほどよりも気の抜けた声が出てしまい、唯の意図がまるで分からなかった。
「なんで春奈の事なんて知りたいんだ?」
「えッ!? あ、まぁ……、いや~~、興味??
か、可愛い子だったしさッ!?」
唯の言葉に、穂高の不信感は増し、唯が何を考えているのか、まるで見当が付かなかったが、唯にそれを答えた所で、悪用されるわけも無かった為、穂高は唯の質問に答え始める。
「どんな人も何も……、別に普通の人だぞ?
――後は……、勤勉で努力家」
「ふんふん、それで?」
「それで??
う~~~ん……、部活とかもやってて運動神経は良かったな。
勉強も並以上には出来るし、人望もある」
抽象的な質問を投げかけ、答えさせていた唯だったが、穂高の答えが詰まっている事に気づくと、今度は、具体的な質問をし始める。
「性格は? どんな感じ??」
「性格? まぁ、優しい……かな。
クラスでは、明るくて活発なイメージがある」
穂高は唯の事を考えながら答えている中で、少し祇園が浮かび上がった。
(――そういえば、春奈って、クラスメイトがいる教室と、二人で一緒にいる時とじゃ、違いがあるよな……。
明るいは明るいけど……、クラスメイトと喋ってる時の方が、より活発? とゆうか、明るいというか……)
穂高は上手く言葉にできなかったが、端から見る春奈のイメージと、ここ最近で二人でいる事が多くなり、その時に接している春奈のイメージに、少し食い違いがある事が分かった。
しかし、その疑問について深く考えている時間は無く、質問するのに慣れたのか、その後も春奈の事に関して、いくつか質問をされた。
「――――まぁ……、こんなところかな……。
まさか、春奈ちゃん、財前(ざいぜん) アリス推しだったとはねぇ~~」
唯はその後も、5,6質問を穂高にし、穂高の質問から大体の人物像が固まったのか、満足したように呟いた。
「でも、穂高は詳しいね? 春奈ちゃんの事」
「まぁ、なんだかんだで交流は多いし、アッチはどう思ってるか分からないけど、ほぼほぼ友達みたいなものだからな」
穂高は、人気者である春奈に対して、友人と呼ぶのはおこがましいと感じつつも、遠慮がちにそう答えた。
「友達ねぇ~~。
穂高に、穂高に女友達……」
「はぁ~~……、自分でも自覚してるよ。
友人として、釣り合ってない事ぐらいは……。
――じゃあ、もういいか? 切るぞ??」
唯に痛いところ付かれたと感じた穂高は、ため息交じりに話し、最後は投げやりな様子で、唯に告げた。
「あぁ……、ちょっ、もう??」
「また、今度な? じゃあ」
まだまだ話したりないといった様子の唯だったが、穂高が限界であり、やる事も残っていた為、半ば強制的に、通話を終了させた。
「――たく……、思わぬ時間を取られた」
穂高は、悪態を付きながら、今度は学業、学校から提示された課題へ取り掛かる。
穂高がペンを走らせていると、今度は携帯にメッセージが届いた。
(なんだ? またハチか??)
つい先ほどまで通話していた事から、唯からの着信だと思いつつも、穂高は携帯を取り、メッセージの送り主を確認した。
穂高がメッセージを確認すると、そこには、予想とは違い、佐伯(さえき)の文字が掛かれており、唯からのメッセージでは無かった。
佐伯 お疲れ様。
急で悪いんだけど、穂高君に聞きたいことがあって。
少し前に、カグヤに声が似てるって事で、ストーカー被害を受けていた子がいたでしょ?
あの、春奈ちゃんに関して、ちょっと色々聞きたいんだけど……。
佐伯の送られたメッセージを見て、穂高は一瞬驚きつつも、内容に疑問が浮かび上がった
(佐伯さんも??
――なんで、急に春奈の事知りたがってるんだ?)
穂高は疑問を感じつつも、唯にしたように、佐伯から来るいくつかの質問に答え、春奈の情報を伝えた。
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