第136話 姉の代わりにVTuber 136
◇ ◇ ◇ ◇
浜 ビーチバレーコート。
昼食を取り終え、時刻は13時を周り、3-B組の生徒の6割は、ビーチバレーコートが置かれている浜へと訪れていた。
共用施設であるビーチバレーコートは、15面もあり、奇跡的に2面空いている状況だった。
大貫(おおぬき)が中心となり、簡単なトーナメントを作成し、すぐに試合に入っていた。
「――杉崎(すぎさき)は、やった事あるのか? ビーチバレー」
第一試合が始まる中、観戦をしながら出番を待っていた穂高(ほだか)は、同じペアを組んだ春奈(はるな)に問いかけた。
「え? えぇ~~っと、何回かあるよ?
友達と海に行った時とか……、家族でもあるかな……。
天ケ瀬(あまがせ)君は??」
「俺も何回かはやった事ある。
1,2回程度だけどな~~」
「へ、へぇ~~~。
やっぱり、天ケ瀬君って見た目に反して、色々遊んでるよね……」
「おい……、その言い方は何か語弊が生れそうなんだが……?」
春奈は勿論、穂高の言うような意図で、発言したわけでは無かったが、言い方が悪く、別の意味にも捉えかねない言葉に、穂高は少し戸惑った。
「――ご、ごめんごめん……。
確かに変に聞こえるね」
春奈はすぐに言葉を訂正したが、春奈とのやり取りに、穂高は若干の違和感を感じており、何度も会話を交わすことで、それが何なのか気付いた。
「――なぁ、もしかして杉崎、緊張してる??」
「うッ……、や、やっぱりバレてた……?
や、やっぱり私から誘った手前、変にミスとか出来ないし……、そう考えたらちょっと……ね?」
穂高の問いかけに、春奈は笑顔で答えてはいたが、無理に笑っている様な、強張った表情だった。
「真面目だな~~。球技祭でもないだろ?
ただの海での思い出なんだし、気楽に楽しくやろうッ」
春奈の思いを聞いた穂高は、自然と笑みが零れ、春奈に気を使わせないよう、気楽な様子で答えた。
そして、そんな穂高の態度に、肩の荷が少し降りたのか、春奈は先程よりも和らいだ表情になり、短く返事を返すと、視線をコートへと戻した。
時間は進み、大貫主催のビーチバレーは、第一試合の組み合わせを全て終え、例に漏れず、穂高達も試合を終え、観戦を兼ねた小休憩を行っていた。
「――天ケ瀬君~~~、ごめんね?
ラリーも結構、私で止まっちゃって……」
一試合終えた春奈に、試合前の緊張はすでになく、元々スポーツマンでもある為、順応するのは速かった。
春奈は、申し訳なさそうに穂高に声掛けるも、穂高はそれを気にしていない様子で答える。
「いいっていいって……、それより、後半はほとんど、杉崎に点を決めて貰ったしな?
むしろ、俺の方が足を引っ張ってたくらいで……」
「そ、そんな事ッ!
――――でも、最低一試合は勝てて良かったねッ!!」
互いが互いに謙遜しあう中、勝利を飾った事で、余計に楽し気に、会話も盛り上がる穂高達に、他の生徒から声が掛かる。
「穂高達も勝ったみたいだな……。
流石俺のライバルだぜ…………」
穂高と杉崎の会話に、水差す様に入ってきたのは、武志(たけし)であり、武志の傍らには、四条 瑠衣(しじょう るい)の姿があった。
「急に会話に入ってきて、キモい言葉吐いて……、何しに来たんだ? お前」
勝利の余韻に浸っていたところに、邪魔が入ってきた事で、穂高の機嫌は一気に悪くなり、乱入者が武志だと気付くと、余計に穂高は冷たく当たった。
「ハル~~、ハル達も勝ったみたいだねッ!
次の二回戦は、いよいよ私達と勝負だよ」
穂高が武志をあしらう傍らで、瑠衣は春奈に声を掛け、仲の良い二人は会話を始めた。
そして、そんな状況を見て、穂高は武志に対して、疑問に思っていた事をぶつける。
「おいッ、なんでお前が四条とペア組めてるんだ??
接点ほぼ無いだろ?」
「ひでーな……。 接点ぐらいあるわッ!
――――とゆうか、穂高~~~、俺は言ったはずだぜぇ~~??
俺は今年の夏……、男になるって…………」
極限まで声のボリュームを下げ、尋ねる穂高に、これでもかと言わんばかりのドヤ顔で、武志は質問に答えた。
(う、うぜぇ~~~~~)
武志の態度に、穂高は苛立ちを感じながらも、ここで変に反抗すれば、詳細は聞けないと思い、不本意ではあったが、武志が気分よく話せるように、泳がせるように追及した。
「お、男になるって……、もしかしてあれか??
脈があるとかどうとか言ってた……。
何がどうなって、こうなった??」
「珍しく察しが良いな~~、穂高~~~。
その通り、お前の言う通り、脈があるかもしれないと思った女性は、彼女ッ!
四条 瑠衣嬢だッ!!」
穂高の動揺ぶりが、武志の気分をより良くしたのか、武志は増々調子に乗り、穂高に全てを話す勢いで、宣言した。
「――あ、ありえない………………。
で、でも、実際こうしてビーチバレーのペアを組んでるわけだし……、一体何が……」
「気になるか??
仕方ない、教えてやろうッ……」
困惑する穂高に、武志は調子よく、これまでの経緯について話し出した。
武志と瑠衣、そして春奈も含めて、浜崎 唯(はまさき ゆい)が穂高に会いに、桜木高校に訪れた日を境に、交流が多くなっていた。
その日から、何かと瑠衣に呼び出されては、色々と会話をする機会が増えていた。
武志から一連の話を聞くも、やはり、どうして武志が瑠衣と仲良くなり始めたのか、交流が増える事になったのか、理解できず、説明を受けても尚、穂高の頭の中は?マークでいっぱいだった。
そして、そんな状況の中、春奈との会話を終えた瑠衣は、武志に声を掛け、簡単に穂高達に別れを告げると、何も解決しないまま、穂高の前を武志達は後にした。
「――な、なぁ……、なんか、武志と四条って急激に仲良くなってないか……?」
瑠衣達が立ち去った後、穂高は恐る恐るといった様子で、春奈に尋ね、春奈は少しだけ答えに悩んだ。
(確かに……、天ケ瀬君が、あの紫色の髪をした女性と、校門前で会ってた時以降、松本(まつもと)君との交流も増えたかも…………。
瑠衣なんかは特に、天ケ瀬君の身辺調査だぁ~~なんて言って、積極的に彰や、松本君達に天ケ瀬君の事を聞きに行ってたし………………)
「確かに……、最近、話す事は増えたかもしれないなぁ~~」
穂高の問いかけに、合致する部分も有った春奈は、特に何かを気にするような素振り無く、ケロっとした表情で答えたが、そんな春奈を見て、穂高は余計に愕然とした。
(マジで、武志に春が来てるのか……?
しかも、あの四条と………………)
穂高の心の内の動揺は、表面上にも表れ、そんな穂高の動揺を感じ取った春奈は、不思議そうに穂高を見つた。
「どうかした……?」
「――い、いやッ……何でもない……」
穂高は、何でもないと答える事が精いっぱいであり、穂高の態度は怪しく見えたが、春奈は違和感を感じるも、それ以上は追及しなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます