第32話:いざ、ハーツ城下街へ

 そして、翌朝。旅立ちを祝福するように空は抜けるように高く、雲一つない絶好の旅日和であった。

軽装かつバッグに着替えを詰め込んだハコミと目を腫らしたクライブは一頭の馬に乗り、宿の前にてビンベとソフィーに別れを告げる。



「じゃあな、2人とも! 必ず戻ってこいよ!」



「クライブ、ちゃんとハコミちゃんのこと守ってあげてね?」



「ビンベさん、ソフィーさん。お世話になりました」



「叔父さんもソフィーも元気でね。よし、行こうか!」



 馬の手綱を取り、いざ出発しようとしたときにビンベが大きな声で呼び止める。



「あー、わりぃわりぃ。こいつを渡すのを忘れてたわ」



 ビンベは胸から1通の手紙を取り出すと、馬上のクライブへとそれを手渡す。不思議そうにクライブは受け取った手紙をまじまじと見やると、ハコミも横からそれを覗き込む。



「『ヨール・クルーガー宛』? 叔父さん、この手紙の宛先は誰?」



「ああ、そいつは馴染みの司書さ。前に聞いたら中央大図書館に勤めてるらしくてな。力になれるかわかんねぇけど、俺の口添えがあれば少しは違うんじゃねぇかなってな」



「ビンベさん、本当に色々ありがとうございます」



 ぺこりとハコミは頭を下げる。

一方てビンベは手を左右に振りながら、『いいよ、いいよ』とジェスチャーで伝えると、今度は大きく手を振りかざす。



「じゃあ、いってこい! 達者でな!」



「行ってきます! 叔父さん、ソフィー」




 その掛け声とともにハコミとクライブを乗せた早馬はハーツ城下街へと向けて走り出す。そしてあっという間に小さくなると、姿を消すのであった。

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