第12話:幼なじみの助け

「ソフィー、大丈夫かいっ!?」



 クライブは手を差し出しながら問いかける。そしてわき目で立ち上がろうとしたゴブリンを見やると、再度レンガで殴りつける。




「ソフィー、立てそう? 早くここから逃げないと!」



「足、挫いちゃって歩けないわ…」



「じゃあ、肩を貸すからっ、早くっ!」



 クライブはレンガを投げ捨てると、ソフィーの腕を自身の肩へと回す。そしてとりもなおさず、その場を後にする。



 ―――そして、少しして。2人は小さな路地裏で足を止める。

喧騒が遠くに聞こえ、後ろを見てもゴブリンどころか人の気配すらない。どうやら街の住民たちはゴブリンに襲われないように家の扉を固く閉じて、息を殺しているようであった。



「…ふぅ。ここまで来たら大丈夫かな」



 近くに置いてあった木箱を椅子がわりにして、クライブはソフィーと共に腰を下ろす。



「クライブ、どうしてあそこに居たの…?」



 足を摩りながらソフィーはクライブへと尋ねる。

クライブは頭をぽりぽりと掻きながら照れて答える。



「いや、さ。僕、家を飛び出しけど行く当てがなくてさ。ふらふら歩いてたら、君の叫び声が聞こえたもんだから」



「そう、なんだ。クライブ、ありがと。クライブが来なきゃ、きっと私は…」



 ソフィーは自身の肩を抱いて身震いする。クライブはそんなソフィーを優しく抱きしめると、恐怖を和らげるためにニカッと白い歯を見せて笑う。



「でも大丈夫だった、そうでしょ?」



「う、うん…。あっ、お父さんとハコミちゃんがまだ家に…!」



ソフィーは少しだけ冷静になると、家を出る前のことを思い出して呟く。



「叔父さんならきっと大丈夫だよ、それにハコミちゃんだって…」



 ここでクライブは言葉に詰まる。

ハコミとアグナのダンジョンに出会ったときに、ハコミがゴブリンの喉首を鋭い牙で喰い千切り、撃退したことを思い出しただからだ。



「ま、まあ、ハコミちゃんだって大丈夫だよ、きっと!」



「…? う、うん」



 ソフィーは納得いかない表情を浮かべるが、特に反論はしなかった。クライブはとりあえず誤魔化すために話題を逸らす。



「街、めちゃくちゃになっちゃったね。アグナのダンジョンの近くとかじゃ何匹か見かけたけど、こんな大群で街を襲いに来るなんて」



「…そうね、本当に。お父さんとかに聞けば何か分かるかな…?」



「いやー、叔父さん、結構適当だから」



 そんな雑談をしている2人の頭の上に小さく影が落ちる。その影に気づいて顔を見て上げると、屋根から1匹のゴブリンが2人目掛けて降ってくるのだった。

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