第5話 遠い思い出(4)

 その頃、ベリーとドラゴンは呆然としていた。急にダミアンが消えた。一体何があったんだろう。


「どこに行ったんだろう」


 と、突然目の前にダミアンが現れた。だが、その姿は前と違っていた。神々しい服装をしている。聖魔導の姿だ。ベリーは驚いた。目の前で見たのは初めてだ。


「お、お前、なんだその衣装は?」


 ドラゴンはダミアンの新しい衣装に興味津々だ。今までに見た事がない。どれだけの力があるのか、あ試してみようじゃないか?


「ベリーを返せ!」

「嫌だね」


 まだ自分に反抗するつもりか。何度も立ち向かうしつこい奴め。覚悟しろ。


「ベリーは俺の大切な友達だ!」


 ダミアンは強気だ。何としてもベリーを助けなければ。大切な友達を失ってたまるか!


「だがなぁ、こいつは人間を死に追いやったんだ。それほどの罪は償わないと」


 ドラゴンはベリーを以前から狙っていた。ベリーは小学校時代にいじめを繰り返していた過去がある。おそらく、いじめられた人が神龍教に入信し、洗脳された結果、ベリーを殺そうと思ったと思われる。


「そんなこと、許さないぞ!」


 ダミアンは拳を握り締めた。ドラゴンは笑みを浮かべている。必ずこいつを王神龍の生贄に捧げて、いじめられた奴に喜んでもらわねば。


「許さないって言ってもなぁ。それは偉大なる創造神王神龍様の命令だからなぁ。偉大なる創造神王神龍様の生贄に捧げなければ」

「もう許さないぞ!」


 ダミアンは再びドラゴンに襲い掛かった。


「雪の力を!」


 ダミアンは魔法で猛吹雪を起こした。ドラゴンは大きなダメージを受けたが、びくともしない。


「ダミー・・・」


 ベリーはダミアンの秘めたる力に驚いていた。ダミアンがこんな力を持っていたとは。


「ガオー!」


 ドラゴンは激しい炎を吐いた。だが、ダミアンはびくともしない。


「食らえ!」


 ダミアンは持っている三叉槍で何度も突いた。それでもドラゴンはびくともしない。


「グルルル・・・」


 ドラゴンはダミアンに噛みついた。それでもダミアンはびくともしない。


「頑張れダミー!」


 ベリーは声援を送った。ダミアンは誓った。ベリーを守るために自分は負けるわけにはいかない。


「これでも食らえ!」


 ドラゴンは闇のバリアを張った。ドラゴンは笑みを浮かべている。こうなってはどうしようもないに違いない。


 だが、ダミアンは笑みを浮かべている。そのバリアを引き裂く力を再び手にした自分は絶対に勝てる。絶対に負けない。


「悪を切り裂く聖剣の力! 思い知れ!」


 ダミアンが叫ぶと、巨大な剣の幻が見えた。悪を切り裂くと言われている聖なる力だ。剣の幻が振り下ろされると、闇のバリアが消えた。


「そ・・・、そんな・・・」


 ドラゴンは呆然とした。まさか、彼がこんな力を持っていたとは。


「勝負はまだこれからだぞ!」


 ダミアンは拳を握り締めた。ダミアンは自信に満ちていた。


「ダミー・・・、すげぇ・・・」


 ベリーは呆然としていた。これが悪切り裂く聖なる力なのか。


「天の怒りを!」


 ダミアンは魔法で強烈な雷を落とした。ドラゴンは表情が苦しくなったが、すぐに持ち直した。


「これでも食らえ!」


 ドラゴンは炎を吐いた。だが、ダミアンはびくともしない。


「炎の力を!」


 ダミアンは魔法で巨大な火柱を起こした。ドラゴンは少し表情が苦しくなった。


「くそっ・・・、まだ諦めんぞ!」


 ドラゴンは氷を吐いた。だが、ダミアンはびくともしない。笑みを浮かべている。


「諦めろ!」


 ダミアンは炎を帯びた三叉槍で突いた。ドラゴンは表情が苦しくなった。


「こいつ・・・」


 ドラゴンはダミアンに噛みついた。だが、弱っていて、あまりダメージを与えられない。


「とどめだ! 天の怒りを!」


 ダミアンは魔法で強烈な雷を落とした。ドラゴンは肩を落とした。


 ドラゴンは前のめりになり、倒れそうになった。ドラゴン息を切らしていた。とても強すぎる。これが聖魔導の力なのか。


「くそっ・・・、こいつ、聖魔導だったとは?」


 ドラゴンは目を閉じ、命を落とした。


「ダミー、聖魔導だったの?」


 ベリーは驚いた。まさか、ダミアンが聖魔導だったとは。人生をやり直した過去があると聞いたが、まさかかつては聖魔導だったとは。その姿はとてもかっこいい。


「ああ。でも、あの時捨てたんだ。聖魔導だったら、自分が狙われるって思って」


 ダミアンはりりしい表情だ。聖魔導なら悪い奴から命を狙われる。だけど自分は運命に立ち向かう。そして悪い奴の頂点に立つ王神龍に立ち向かう。


「でも、聖魔導のダミー、かっこいいよ!」


 ベリーは笑顔を見せた。ダミアンなら必ず世界を救ってくれる。そして、立派な大人になれるはずだ。


「あ、ありがとう・・・」


 ダミアンは戸惑った。こんなにも聖魔導は人を幸せにするんだ。どうして自分はその力を捨てたんだろう。自分から逃げていたんだろうか? 自分は何て親不孝な事をしたんだろう。


「僕は辛かった。両親を殺されて、聖魔導はどれだけ恐ろしい力かわかった。そして、僕は聖魔導を捨てた。このままでは、自分も殺されると思った。でも、今わかった。助けを求める人がいるから、聖魔導がいる。自分が助けなければならない。運命に立ち向かわなければならない。今こそ、その力を解き放つ時。お父さん、お母さん、見てて。僕、もう一度聖魔導になる」


 ダミアンは拳を握り締めた。聖魔導はこんなにも素晴らしいんだ。人々を救い、幸せにする。どうして自分は聖魔導の力を捨てたんだろう。


「ダミー、僕、応援してるよ! ダミーならみんなを救ってくれるって」


 ダミアンは笑顔を見せた。自分はどうして聖魔導という素晴らしい力を捨てたんだろう。どうして自分は自分から逃げていたんだろう。逃げてばかりではなく、立ち向かわなければ。


「ダミアン、行っちゃうんだね」

「うん。僕はこれから世界を救う4人の友と出会うんだ」


 ダミアンは夜空を見上げた。その夜空を、これから出会う4人も見ているに違いない。明日、インガーシティに戻り、4人の英雄がどこに向かったかを調べないと。明日から新しい自分の旅が始まる。過去に逃げてばかりいた自分に決別し、運命に立ち向かおう。

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