第七話 木漏れ日の下で
~ 2003年10月26日、日曜日 ~
今日は月に一回、部活のない日曜日。
本当だったら、学校の友達とか、貴斗さんとかと、遊びに行きたかったんだけど、生憎、みぃ~~~んな、予定はいちゃっていて私の入れる枠はなかった。
弥生も将臣と一緒にどっか出かけちゃっているみたいだし・・・。
あぁ、しょうがないな。お姉ちゃんのお見舞いにでも行こうっと。
午前中、家の中でゴロゴロしちゃったから、春香お姉ちゃんの所についたのは午後三時ごろだった。
お姉ちゃんの所へ到着すると早速通例儀式を行うのでした。
給湯場で可愛らしい〝ラリッくまぁ〟がプリントがされたタオルを洗面器に微温湯を注ぎ、それを持って病室へ戻り、お姉ちゃんにかかっている布団を押しのけ、すっぽんポンにして上げちゃいました。
「はうぅ、今はおねえちゃんよりも断然身長高いのに・・・、ここの部分は、悔しいぃ、不幸へいだぁ・・・、・・・、・・・。ふぅ~」
裸にしてあげちゃいました春香お姉ちゃんの身体を見ながら、不満を口から漏らしつつも、搾ったタオルで拭いて上げている。
お姉ちゃんの姿を見る昔から肌は白い方だったけど、ずっとここで寝むちゃっているせいか、私が知っていたころのお姉ちゃんよりもずっと白く見えていた。
病室の壁の色の所為もあるかもしれないけど。
身体に必要な栄養は二年間、ずっと点滴と口から強制的に流し込まれる流動食のために痛いくらいに痩せこけていた。
そんな春香おねえちゃんを見ていたら、体を拭く手を動かしながらもどうしてか、した唇を噛み締め、目元から静かに涙を零していた。
幾つかの雫がお姉ちゃんの体に零れ落ちちゃっていました。
仕舞いには持っていたタオルを強く握り締めて手の動きを止めちゃう始末。
毎日のように春香お姉ちゃんのお見舞いに来るけど、たまにこんな風な辛い気持ちになっちゃうのは何故だろうね。
目を強く瞑り涙を堪えると、再び、お姉ちゃんの体を拭い始めた。
『コン、コンッ「じゃまする・・・、うぅん?」』
「ヴぇっ@@@、???おおおぉぉおおおぉ、おおお、おにいちゃん?いぃぃいいいいぃいいいっ、いまぁ、今駄目です、勝手に入って来てはぁ~~~っ!」
「手伝ってやろうか?」
「貴斗おにいちゃん、なにをっ、そんなに冷静になって、いったいどこを見て言ってるんですか。はっ、はぁぁあっ早く出て行ってくださいっ!翠、ぐれますよぉっ!」
「ああ、わかったよ。終わったら呼んでくれ」
突然、現れた貴斗さんは入ってきた時と同じように冷静に静かに退出していた。
何時もいつも、本当に唐突に現れるんだから、貴斗さんはっ!
彼が来た事で凄く動揺しちゃった私はさっきまで心の中に渦巻いていた感情が何処かに飛んで逝ってしまっていた。
貴斗さんが来たからっていって、春香お姉ちゃんの体のお掃除やストレッチに手を抜く事はなかった。
彼が病室の外で待っているであろう時間から大よそ三十分過ぎに私は彼を呼び出す。
「おにいちゃぁ~~~ん、もう入ってきても良いよぉ・・・?おにいちゃんてばぁ」
呼んでもこないので私の方から病室から出て、貴斗さんの傍に向かった。
すると、なんと彼は窓に背を凭れ、腕を組んで立ったまま寝ていたのでした。そんな彼に近づいて、頬をつついて見る。
「あっ、俺寝ていたのか?どのくらいだろうか・・・」
「そう見たいですね。でも、よくそんな格好でねられますよねぇ。あっとそれとおにいちゃんを追い出してからだから、三十分くらいかなぁ」
「そうか、なら、もう終わったのか?春香さんの介護」
「よくそんな冷静に言えますね。さっきお姉ちゃんのどこを見ていたんですか?エッチぃ」
「男は誰でも助平だろ。俺だって例外じゃない」
「うわっ、貴斗おにいちゃんからそんな言葉を聞けるなんて」
「減滅したか?」
「うん、うん、そんなことないですよ。詩織さんに内緒でいっくらでも私の裸見せて上げちゃってもいいですよぉ・・・、あうぅ、貴斗さん、何ですかその興味ないって表情は?翠も女の子なんだからね、そんな顔するのは失礼ですぅ・・・・。」
「うぅ~、またそんな目でみるぅ、溜息までついてぇ。いいよもうっ!・・・、・・・、・・・、ところで、何でお兄ちゃん、殆ど毎日、春香お姉ちゃんのお見舞いに来てくれている訳?もう、そろそろ、その理由っていうのを聞かせてくれても良いんじゃないの?」
「理由はない。ただ、何か変化が起きていないか確認しに来ているだけだ」
貴斗さんはそう答えを返してきたけど、私はそれが本当の答えじゃないってなんとなく感じていたの。
でも、貴斗さんが口にしてくれたこと以上の理由は教えてくれないことはまだ、それ程長い付き合いじゃないけど、分かっちゃっているから言及しない。
「翠ちゃん、少し手伝ってくれ」
「えっ、何をですか?」
「春香さんを外に連れ出す。ずっと病院の中に篭もっていては・・・、たまには新鮮な空気を吸わしてやらなければな」
「だっ、だめに決まってます、そんなこと!お兄ちゃん何を考えているんですかっ!」
「愁先生には許可をもらってきた。大丈夫だ心配ない」
貴斗さんはそう言うと廊下の壁に折り畳んで置かれていた車椅子を開くと春香お姉ちゃんの所に近づけ、
「翠ちゃん、俺が春香さんを抱きかかえるのは色々な意味でよくない。だから・・・」
「はっはぁ~~~いっ、わかっちゃってまぁ~~~すっ。貴斗お兄ちゃんには指一本春香お姉ちゃんを触らせないんだから」
言葉を言い終えた後に私は悪戯な笑みを彼に向けていた。
お姉ちゃんを抱きかかえる。・・・、・・・、・・・、軽い。
それが私のお姉ちゃんを抱きかかえた時の率直な感想だった。何だろう、この感覚・・・。
「翠ちゃん、どうしたんだ。何時までも抱きかかえていると春香さんにも翠ちゃんにも負担かかるだろう?早く座らせろ」
「あっ、はい、おにいちゃん。春香お姉ちゃん、今からお外でようねぇ」
私はそうお姉ちゃんに話しかけて、車椅子に座らせた。
肩にはカーデガンを掛けて、膝から足元まで薄手の毛布で覆う。
それから私がそれを押して行こうと思ったんだけど、貴斗さんに取られちゃった。仕方がなく、彼の隣を歩く。
「ねえぇ、貴斗お兄ちゃん」
「なんだ」
「どうしてこんなこと、急に思いついたのかなぁ~~~って。それとどこに行くの?」
「簡単な理由だ。外の刺激を受ければ目覚める切っ掛けになるかもしれない、とそう思っただけだ。二年間も沈黙を続ける彼女だ。そんな偶然、奇蹟なんか早々起こるものではないのだがな。行動しないよりは、行動した方が良い結果を得られやすい・・・・・・・、場所はこの病院敷地内にある緑地公園だ。先生もこの病院から外に出すことまでは許してくれんよ」
貴斗さんは少し微笑んだ表情を私に向けてそんな言葉を口にしていた。
その時の彼の顔、ドキッとしちゃうほど優しそうな表情だった。
そんな彼の表情に私はどうしてなのか恥ずかしさを感じちゃって顔を下に向けちゃっていた。
暫く、私はそんな状態のまま、病院の廊下を歩き、外へ出るための扉口付近に来ていた。
扉の前に立つと、自動でそれが開く。
外からはまだ太陽の光が降り注いでいた。
優しい太陽の日差しだけど、目を護るために手を水平に額に当てて、空を見る。
貴斗さんも私と同じように薄めで空を見ていた。
彼はお姉ちゃんの方へと顔を向けて、
「良い、日和だな、二人とも・・・」
「うぅん、そうだね、貴斗お兄ちゃん。春香お姉ちゃん、お外にイコウッ」
その言葉と一緒に私は春香お姉ちゃんの手を握って動き始めた。
貴斗さんは私の動きに合わせるように車椅子を移動させてくれる。
病院内の緑地公園、患者さんの心を落ち着けさせるために凄く良い雰囲気で作られている。
私も独りで何度かその場所に足を運んだ事がある。
独りのんびりと落ち着いた気分になれるからね。
病院の玄関から出てゆっくりとした足取りで私たち三人はその公園へと向かっていた。
木が規則正しく植えられた遊歩道。路面も車椅子や足の悪い人のために作られる。
私も貴斗さんもそんな場所を歩きながら、眠ったままの春香お姉ちゃんに話しかけていた。
でも、殆ど話しかけているのは私だけどね。
紅葉が綺麗な並木道、たまに吹く、柔らかい風が春香お姉ちゃんの長く伸びた髪と木々の葉を揺らして、その風に耐えられなかった葉っぱさんはゆらゆらと宙をまって地面に落ちていた。
その幾つかはお姉ちゃんの膝元にも降っていた。
「春香お姉ちゃん、もう直ぐ秋人パパの誕生日だけど、今年はどんな事をして驚かせて上げちゃおうか?パパって何時も誰かさんみたいに冷静そうだけど、パニくっちゃくと収拾つかないんだよねぇ。そこが秋人パパの可愛いところなんだけど」
「その誰かとは俺の事か?」
「さぁ、それはぁ、どうでしょうねぇええ、クスッ」
貴斗さんは私の方なんか見向きもせず、冷静にそんな事を言っちゃってくれました。
だから、私は彼の前に出て悪戯な笑みでそんな風な言葉を返していたのでした。
私のその表情を見た彼は大きな溜息を吐くと、目を瞑って左手で頭を大きく掻いていた。
そんな仕草を見せる貴斗さんを見て私はまた笑う。
「お兄ちゃん、早く公園に行かないと日が暮れちゃうぞぉ」
「ふっ、そうだな・・・」
彼は頭に手を乗せたまま、そう答えると再び、両手で車椅子の取っ手を握って春香お姉ちゃんを移動させた。
また暫く遊歩道を歩く。
大体、歩いて十五分程度かな?漸く、目的の場所へとたどり着いた。
公園の真ん中は円形でその中央には滝を模した大きな噴水が置かれていた。
なんでも、マイナスイオン効果とかってやつ。
私達が今いるこの噴水近くの場所には私達以外誰もいないけど、遠くに目を向ければ看護婦付き添いの患者さんや、独りで、木の下に座り、それを背に寝ている人や本を読んでいる人たちが見えていた。
私は噴水の淵に飛び乗って両手を広げて、
「到着ですぅ」
何て言葉にしていた。
「何だ、こんなとこに来てまで泳ぎだすつもりか?翠ちゃん」
「そんなわけないよぉ・・・、あわわあぁあっ。・・・、・・・、・・・、・・・、あっ、ありがとうお兄ちゃん・・・」
「まったく、翠ちゃんは俺の思ったまでの行動をしてくれる」
私は言葉と一緒に回って振り向いた瞬間、足を滑らせ噴水の中に落ちそうになったけど、私の行動なんてお見通しって感じで、私の腰をひいて抱き寄せてくれた。
今、私の顔は貴斗さんのまじかにあって、彼を赤面で直視しちゃっている。
貴斗さんの顔は冷静そうだけど、私の方は恥ずかしくて宙に浮いた足を水面の中のアヒルの足の様にばたつかせていた。
「たっ、貴斗お兄ちゃん。恥ずかしいから、早くおろしてください・・・」
「そうか・・・俺はもう少し・・・」
言葉と一緒に私の足が地面についていた。
「今、何かいいました?お兄ちゃん」
でも、彼はただ、首を横に振って答えるだけだった。
はぁ、前にも一度、状況は全然違うんだけど、似たようなことあったなぁ。
あの時も貴斗さん冷静だったけど、やっぱり私の事、異性だって思ってくれないのかな?
さっきもあんなにアピールしたのにっ・・・、うぅ、凄く悲しいです。
ちょっと皮肉れた顔を貴斗さんに拝ませてあげようと思って彼のいる方に向いたけど、そこには既に彼はいなかった。
お姉ちゃんの所まで戻って何かを話しかけていた。
「お姉ちゃんに何を話しかけていたんですか?」
「翠ちゃんの間抜けな行動の報告と公園の中の紅葉も綺麗だな、とだ。ああ、悪かったよ、そんな顔するな。初めの言葉は冗談だ。ただ、単に紅葉が綺麗だなって口にしただけだ」
「ふぅうぅ~~~んだっ、そんな言葉信じないんだから」
私が口を尖らせてそう言うと貴斗さんは勝手にしてくれって感じの顔をしてから、春香お姉ちゃんの方を見ていた。
夕暮れ時の紅い日差しがお姉ちゃんの顔を照らす。
眠っているようだけど、表情は穏やかで、何か嬉しそうに、楽しそうに微笑んでいるように私の瞳には映っていた。
良い夢見ているのかなお姉ちゃん。
数ある木々の中で一番落ち着けそうな場所を見つけると私が春香お姉ちゃんの車椅子を押して、そっちに移動させる。
その場所に着くと貴斗さんは車椅子の隣の地面に座りこんだ。
「貴斗さん、隣いいですかぁ」
「駄目だ」
「そうな事言うなんてひどいですぅ、翠ないちゃいますよ」
貴斗さんの言葉なんか無視して、そんな風にいいながら隣に座ちゃっう、私。
それからはお姉ちゃんに話しかけながら、沐浴。
木々の葉と葉の間から差し込む陽、木漏れ日の下で、大好きな春香お姉ちゃんと貴斗さんの傍で何時しか私はちょっとの間だけ眠りに就いてしまっていた。
貴斗さんの膝を借りちゃって・・・。
「みどり、翠、ミドリッ、起きなさい。何時までそうやって貴斗君に迷惑を掛ければ気が済むのだっ、お前と言う娘は」
「秋人さん、俺は全然迷惑に思ってませんから、そんな風に翠ちゃんを・・・」
「うにゅぅ???あれれれれれぇ?はうぅ?秋人パパ?ぱぱぁ?」
「寝ぼけていないで、目を覚ましなさい。翠」
「ふはぁぁああああぁ・・・。どうして秋人パパがこんな所に居るわけ?春香お姉ちゃんのお見舞いなんて殆ど来てくれないくせにっ!私ばっかり押し付けちゃってるくせにっ!何でこういう時に限って来てくれちゃう訳?」
「翠ちゃん、言いすぎだ。秋人さんには秋人さんの事情って物があるだろう」
「そんな物ある訳ないよっ!私や春香お姉ちゃんより仕事の方が大事なんでしょぉ~~~だっ」
「みどりちゃんっ!」
「はうぅ、そんな怖い目しないでください、お兄ちゃん・・・」
「良いんですよ、娘の言っている事は事実ですから・・・。それと、いつもすまないね、君にはこの娘二人の相手をさせてしまって、藤宮さんてと言う方が居られるのに」
「頭下げるなんて、止めてくれ秋人さん。俺は何もたいした事はしてな。俺がただ、やりたい様にやっているだけの事ですから」
「貴斗お兄ちゃんがそう言うんだから、そんな事止めたらパパ、クスッ」
「翠っ、お前って娘は本当に・・・。はぁ、まったく、私達親子は貴斗君、君と君の両親に迷惑掛けてばかりだな・・・」
「秋人さん、もう、日が暮れそうだ。戻ろう」
貴斗さんがそう言うと、彼ではなくパパが春香お姉ちゃんの車椅子の取っ手を持ってそれを押し始めた。
その隣を歩く貴斗さん。私は二人の後ろに着いて行く様に歩き始めた。両手を後ろに組んでね。
それからちょっと歩き始めた頃に私から秋人パパに話し掛けていた。
さっき、秋人パパが言っていた貴斗さんの両親のことがどうしても知りたくて、パパに尋ねていた。
「パパ?さっき言ってた事、どう言う事?貴斗さんの両親とパパってどんな関係なの?」
私は秋人パパにそう問いかけたけど、パパは私の言葉なんか無視してくれちゃいまして、貴斗さんの方だけを見ていた。
その貴斗さんが私には理解出来ない何かの感情を押しつぶしながら、軽く歯を食い縛って、両目を閉じた状態で言葉を返す。
「両親の事なんか言われても、俺にはわからない。今も両親の事だって思い出せない俺に・・・、・・・、意味がない言葉だ」
「貴斗君、もう君が、記憶を失ったと言う時期から二年以上も経とうとする。だが、娘の春香と一緒でそれが治る気配すら感じられない。何故かね?私は思うのだよ、君が記憶を取り戻す事を躊躇っているのではと、恐れているのではと・・・。だから、貴斗君、君は記憶を取り戻す本当の努力をし様としない。違うかね?」
「それは・・・、・・・・、・・・・・・」
言葉に詰まっている貴斗さんの顔を歩き並んで眺めると、私から顔を背けちゃってくれました。
「確かに、君が失っている記憶の中には辛い事もあるだろう。だが、それ以上に大切な何かがあるのじゃないかね?君が未来に進むために必要な何かが・・・」
「秋人さん、何が言いたいんですっ!貴方が俺のいったい何を知っているって言うんです?そんなに記憶喪失の俺はおかしいんですかっ!」
余り私には見せてくれる事のない感情を込めた表情、言葉で貴斗さんは秋人パパにそう答えを撃ち返す。
そんな貴斗さんに冷静にちょび髭を摩りながら静かに答える秋人パパだった。
「私が何を知っていようと、君に教えて上げられる事はない。教えてしまっては君の為にならないだろうし・・・、倒れてしまうのであろう?過去を聞かされると、違うのかね?それに記憶喪失等状態のどこが正常なのだろうか?と私は思うのだが?」
「ぱぱっ、やめてよっ。貴斗さん嫌がっているじゃない」
私がパパの裾を掴んで訴えるようにそう言うと、パパはふぅ~~~っと重い溜息を私に見せてくれるとそれからはみんな黙ったまま、病院入り口手前まで歩いていた。
玄関口まで来るとパパが貴斗さんに帰る様に言ってしまう。そして、それに従っちゃう彼。
春香お姉ちゃんの病室に到着するまでパパと私の無言は続いていた。
その前まで来ると、病室の窓から中の明かりが漏れていた。
照明がついている、看護婦さんか、誰か来ているのかな?そんな風に思いながら扉を開けると、そこには丁寧でしなやかな手つきでベッドメイクをしている葵ママが居た。
「ママ、来てたんだねぇ、珍しい」
「何を言っているのかしら、翠?ママはパパと違って週二回はココに来ているのですよ」
「それでも、私よりは少ないでしょ~~~ぉ。まあ、私が決めたことだから良いけどねぇ。あのさぁ、ところでママって貴斗さんの両親の事知っているの」
「翠、そんな事を聞いてどうするんだ?葵答えなくて良いぞ」
「良いのではなくて、教えて上げても」
「駄目だ、もし、話す機会があるとすれば彼の記憶が戻ってからだ。翠は口が軽いから教えてしまうと貴斗君に悪影響を及ぼしかねないからね」
「ぱぱぁっ!ひどいよぉ、そんないいかたぁ」
「事実であるから、仕方があるまい」
パパがママにそう言うとママはそれに納得してしまったようで、陽気な微笑を私に向けるだけで終わってしまった。
はぁ、一体全体、内の両親と貴斗さんの両親ってどんな関係なんだろうかなぁ?
これから先の将来にそれを知る機会が訪れてくれるのかな?
でも、パパとママの会話から考えちゃうと貴斗さんの記憶が戻らない限り一生教えてもらえなさそうだよねぇ。
詩織先輩から貴斗さんが日本に居た間の事は大抵聞いているけど、先輩も向こうの国に行っている頃の彼について全然知らないようだった。
貴斗さんの事を一番多く知っていそうな慎治さんに聞いて見ても、顔を横に振るだけで何も教えてくれないし、あの人や、あの人たちになんか聞きたくない・・・、・・・、・・・。
はぁ、だれか、教えてくれる人はいなんでしょうかねぇ・・・、
そして、また、私と貴斗さんの関係は平行線のまま時は過ぎて行くのでしたぁ。
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