第25話 ヴァンダールヴル
「お待たせ、ペレネ―」
「ヨウイチロウさん、何だか機嫌いいね。いい取引ができた?」
「うん、なかなか満足のいく取引ができたよ。魔石を大量に仕入れることができたんだ。」
「魔石なんて何に使うの?それに魔石って高いでしょ?」
「魔石はある魔物の餌になるんだよ。」
「えっ!魔石を食べる生き物なんているの!?」
「今度機会があったらペレネ―にも見せてあげよう。」
「うん、楽しみにしてる!」
「後、魔石といっても傷がついていたり割れていたりする魔石だからかなり安く買えたよ。」
「それは良かったね。」
「うん。」
「じゃぁ、次は鍛冶職人街に行こう!」
「そうだね、ヴァンダールヴルさんに手紙を渡さないと。」
「ヴァンダールヴルおじさんはこの町で一番の鍛冶職人さんなんだよ。」
「この町にはドワーフが結構いるの?」
「うん。冒険者の街だけあって武器や防具の需要はかなりあるからね。」
「ヴアンダールヴルさんはもともとこの町に住んでるの?」
「うーん、私が生まれたときにはもう住んでいたみたいだけど、ずいぶん前に遠くの街からやってきたみたいだよ。おじさんのおじいさんの代に東北のドワーフ王国で起きた大災害を逃れて以来エルムード王国を放浪する生活をしていたみたい。その話をむかしちょっとだけ聞いたよ。」
「なるほど。ヴァンダーヴルさんはモリアのドワーフだったのか。」
「ヨウイチロウさん、モリアって何?」
「昔とっても栄えていた北の山脈にあったドワーフ王国の跡地のことだよ。今は魔物の巣窟になってしまってる。」
「そうなんだぁ。」
そんな話をしているうちに目的地に着いた。
「ヨウイチロウさん、ここがおじさんの工房だよ!」
「すいませーん、ヴァンダールヴルさんはいらっしゃいますか?」
「見慣れない顔だな。そっちにいるのは羊のしっぽ亭のペレネ―じゃないか。」
いかつい風体のドワーフが質素だが立派なつくりの建物から出てきて俺たちに声をかけた。
「おじさん、こんにちは!今日はヨウイチロウさんを案内してきたよ!」
「初めまして、ユカワ・ヨウイチロウと申します。ハザール王国のパーカーさんから手紙を渡すように頼まれたので伺った次第です。」
「パーカーから手紙を預かった!?ユカワ・ヨウイチロウ殿といったな?その手紙さっそく読ませてもらえないだろうか。」
「もちろんです。こちらをどうぞ。」
手紙を渡すとヴァンダールヴルさんはむさぼるように読んでいる。時折「えッ、ふむふむ、よかったじゃないか」などとつぶやきながら読んでいる。
「事情は了解した、ユカワ殿についてもう少し詳しく知りたいところだが、とりあえずはパーカーたちを救ってくれたことにパーカーの友人として感謝する。ありがとう。」
「いえいえ、大したことはしていません。」
「ま、立ち話もなんだ。中に入ってくれ。お茶でも出そう。」
その後、工房の中に案内され、パーカーさんたちを助けたときのいきさつやこの街での鍛冶仕事についてなどいろいろな話をした。
「パーカーに伝えておきたいことがいくつかあるから手紙を預かってもらえないか。」
「了解しました。明日お伺いしましょうか?」
「ユカワ殿は明後日ラガドを出発なさるのだろ?」
「はい、そのつもりです。」
「だったら明後日でいい。羊のしっぽ亭に昼までに手紙は届ける。」
「わかりました。」
「パーカーによろしく言っておいてくれ。」
「了解です。」
初対面にしてはかなり打ち解け、ヴァンダールヴルさんのおじいさんがモリアから逃れた話も少しした。
モリアについてはまた今度詳しく話をしようという話になった。
俺が考えいてるモリア奪回計画にこの人が乗ってくれる可能性は高いが、もう少し信頼関係を築いていてからの方がいいだろう。
次は北門に盗賊退治の報酬をもらいに行くとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます