第14話 少年たちのように-14
涼子はユキに会う気にならなかった。それであざみにせかされながらも、無視するかのようにぶらぶらと野球部グラウンドの方へ歩いて行った。あざみは、涼子がグラウンドの方へ向かっているのを察すると、急に素直について来た。
グラウンドでは、掛け声が響いている。いつもと同じだと思いながら、一塁側の投球練習場の方へ回っていった。そこには、期待通り江川が汗を流して練習していた。この間と同じように真剣にボールを投げ込んでいる。涼子はギャラリーに混じってしばらく眺めていた。横からあざみが脇を小突いた。
「なに?」涼子
「声、掛けないの?」あざみ
「どうして?」涼子
「だって、カレなんでしょ」あざみ
「まさかぁ」涼子
「だって…」あざみ
「さ、行こ」涼子
涼子はあざみを置き去りにしようとするかのように、さっさと歩き出した。待ってよ、と言いながら、あざみは慌てて涼子を追った。
銀座商店街を抜けた公園にユキたちは待っていた。
「やっほぉ、リョーコ。元気?」ユキ
「昨日、どうしたの?来ればよかったのに。楽しかったのに、ネェ」イズミ
イズミの言葉にあざみが頷いた。
「ナンパされたんだって。あたしも、奢ってもらいたかったな」カナ
カナが羨ましそうな顔をすると、ユキは得意気に言った。
「大丈夫よ、これからいくらでも奢ってもらえるわよ」ユキ
「でも、ユキが大人っぽいカッコしてたからだよ」あざみ
「プラダだってぇ、スゴイね」カナ
「ユキ」涼子はじっとユキを見つめながら問い掛けた。「誰に、もらったの?」涼子
「なによ、リョーコ。急にそんな顔して。あ、ひょっとして、リョーコも欲しいの?」ユキ
「誰にもらったの?」涼子
「何よ、一体」ユキ
「ユキ、言えない相手なの?」涼子
「ちょっと、ナニ、マジ入ってるのぉ。ホントにもらったんだよ。盗ったわけじゃないんだよ」ユキ
「誰?」涼子
「ん、言うわよ。カレシ。カレシにもらったの」ユキ
「やっぱり、カレシいたんだ」カナ
カナが嬌声を上げた。しかし、涼子は冷めた目でユキを見ていた。
「カレシ、って、どんな?」涼子
「どんなって、なによ、リョーコ、尋問みたいじゃない」ユキ
「こないだ言ってた、アレ?」涼子
「あれって?」あざみ
「エンコー」涼子
「ちょっと、待ってよ、リョーコ。人聞きの悪いこと言わないでよ。ただのカレシよ」ユキ
「ただのカレシが、そんな高いものくれるの。イズミ、知ってるんでしょ、相手」涼子
「知ってるわよ」イズミは渋々答えた。
「どんなの?」涼子
「どんなのって、そんな…、たくさんいるから…」イズミ
あざみは驚いたようにユキを見た。ユキは顔をひきつらせながら涼子を睨んだ。
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