第14話
霊能者。
そのあまりにもあやしげな単語。
しかし考えれば考えるほど、それしかないように思えてきた。
なにせ相手はどう見ても生きている人間ではないのだ。
そうなると。そんなやつを相手にできるのは霊能者しかいないのではないかと。
諸星の知り合いに霊能者などいない。
そこでネットで調べてみることにした。
霊能者はほぼ仕事として商売としてやっている人が多い。
それならネットで自分のページを持っている人もいるのではないかと考えたのだ。
帰宅の時間からして、できればここから近い方がなにかと都合がいい。
そこで調べたのだが、こんな地方都市でも諸星が思ったよりかは多く見つかった。
――霊能者って結構いるんだ。
諸星は少しびっくりした。
それは見るからに怪しげなものから、怪しいのか怪しくないのかわからないものまで。
その中で諸星は、野上ちかという霊能者が目にとまった。
簡素で落ち着いたページが目を引いたのだ。
――この人ならいいんじゃないの。なんかそんな気がする。うん、この人にしよう。
諸星は早速連絡を入れた。
「もしもし」
「はい、野上ちか霊能事務所ですが」
「ちょっと相談したいというか、お話したいことがあるんですけど」
「いいですよ、いつがご都合がよろしいですか」
「今夜の九時半ぐらいはどうですか」
「かまいませんよ。失礼ですがお名前をお願いします」
「諸星明美といいます」
「諸星明美さんですね。それではお待ちしています」
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「失礼します」
「はい、失礼します」
電話を置くと、上司が諸星を睨みつけていた。
そして大きな声で言った。
「おい、諸星。やけに小さな声で話していたが、まさか私用電話じゃないだろうな」
「いえ取引先です」
「そうか、怪しいなあ」
上司はにやけた笑いを浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。
諸星は思った。
ほんといちいち細かい小さい男だな、と。
諸星はそのまま仕事をつづけた。
毎日残業なのに、毎日同じ時間に終わる。
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