第6話
集まってもらったメンバーは6名。
俺が側近達の事を知らないとバレるわけにはいかないので、考えた挙句、王子が探偵の振りをしている、と言う振りをすることにした。
探偵は形から。やはり、ここは、ホームズでいきたい。だが、インバネスコートに鹿撃ち帽にパイプなど、この世界にはない。と、思ったら、似たのがあったので、それを着込んだ。原作中にはない服装だが、俺にとって、名探偵といえば、これだ!
俺はパイプをふかすふりをしながら、いかにも芝居がかった調子で言った。
「さて、今日はお集まりいただきありがとうございます。私は探偵。謎があるところに呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
…。
まあ、みんなドン引きしているのはわかる。レイトは額に手を当て、顔を顰めているし、側近達は王子ったらまた…みたいな、呆れた顔。リュミエラ嬢は小首を傾げて、可愛い…。
「とりあえず、自己紹介をお願いします」
ええ?俺らも?という、側近達をレイトが促す。
茶色い髪で丸い黒目の童顔が、もじもじしながら
「ええっと、ブラウニー伯爵家次男グラントです。ええ?どこまでいえばいいの?王子の側近の可愛子ちゃん担当。趣味はお買い物。成績は…赤点2つ…、後一つ取ったら、お小遣いを減らされて家庭教師をつけられちゃう崖っぷちです。えへっ」
えへっ、じゃねえよ。王子の側近が赤点とるのはいかんだろう?
熊のようにでかい男が、ガッハッハとわらいながら、可愛子ちゃん担当の頭をわしわしと撫で
「わっしは、ベアー辺境伯の長男グリズリーじゃけん。趣味は、魔物退治、成績はこいつよりちょっと上じゃ」
と、豪快に言った。
王子の側近がそんなになまっていていいのかと思ったが、ふっとい筋肉の塊の腕を見て、誰も何も言わない理由にうなづいた。
「なんですの、殿下、この茶番は?」
昨日あれだけしおしおしていたレッド令嬢だったが、冷めた目つきだ。
無言のレイトに促され、レッド嬢はクルクルの縦ロールを手で払い揺らした。
「私は、ご存知の通り、殿下の婚約者である侯爵家令嬢、レッドリア・レッドストーンでございます。成績は優秀、巷では淑女の鑑と言われております」
と、お辞儀をして自己紹介を終えた。自分で淑女の鑑というところは、オイオイと思うが、立居振る舞いは、流石に美しい。
続いて、ぽっちゃり型の少女が口を開いた。
「カステーラ伯爵家のカスティラと申します。成績は普通。趣味は…食べ歩き…です」
皆んなが納得した顔をする。まあ、その体型は、趣味の所為だねー。
反対に断食が趣味なのかと思うくらい、ガリガリの少女は、
「カタコーム伯爵家のスカルです。成績は中の上。趣味は…言えません」
まあ、趣味は特に必要なかったからいいけど、言えないとなるの、聞きたくなるよなー。
最後にリュミエラ嬢。
「スターライト男爵家のリュミエラと申します」
おお、声も可愛い。
「さて、このメンバーで、なぜ、お集まりいただいたか、もう、お分かりでしょう?」
「殿下、私は、彼女に、数々の嫌がらせをしたと、殿下が言うのであれば認めましょう。しかし、あれは、事故です」
「偶然つまづいたと、言いたいのですね?」
「はい」
…いや、絶対に犯人にしか見えないよ。完全に、黒の表情だ。もともときつい顔の美人が怒ると、犯人面になってしまうのか?
「そうですね。レッド嬢がリュミエラ嬢に残飯をかけた、というだけなら、そこまで問題にはならなかった」
俺は、みんなを見渡し、ゆっくり言った。
「デザートのケーキに毒物が入っていました」
皆一往に驚き、青くなった。テーブルがぐちゃぐちゃになった為、デザートのケーキを食べた人物は居なかった。だが、レッド嬢の残飯事件がなければ、誰か食べていたかも知れないのだ。
「ネズミの死骸が見つかったのですよ。このテーブルの残飯を漁ったネズミの。
ケーキのかけらが、腹から見つかりました。毒物がケーキに仕込まれていたのです」
俺は、みんなを、当時の席に座らせて、当時と同じ状況を作らせた。
6人がけテーブル。
通路側から、リュミエラ、カスティラ、スカル、の女子三人がならび、テーブルの反対側奥から、熊と可愛子ちゃんの順。
そして、レッド嬢が通路に立つ。
「特別に、その時と同じケーキを用意してもらいました」
フルーツのパウンドケーキに粉砂糖がかかっている。かなり甘そうだ。
あれ、なんか、見たことあるシチュエーション。もしかして…。
「俺、犯人判っちゃったかも…」
思わず口から出てしまった。
みんな、ギョッとして、俺に注目した。レイトすら驚いている様子だ。
いや、これは、アレですよ。
ミステリーの古典的トリック。
俺は、6人を見渡し、1人を指さした。
「犯人は、あなたですね!」
くぅー。一度言ってみたかったセリフだぁ!
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