第5話
悪役令嬢の罪状認否の為と称して、とりあえず、残飯ぶっかけ事件の、当事者達に集まってもらうことにした。
昨夜の舞踏会は、魔法学園のパーティだったそうだ。ここは、魔法学園。13歳から18歳迄の魔法が使える子供達が、学んでいる学校だ。
しかし、魔法がある世界とは笑える。密室もなんもあったもんじゃない。完全犯罪できるじゃないか!と、憤慨したが、そうはうまくはいかないらしい。
レイト曰く、魔法を使うと魔力痕が残るという。これは、人それぞれ一人一人違っているので、相当時間が経たない限り、特定できるという。
また、人は常に多少は魔力を纏っている為、何処に誰がいたか、知ろうとすればわかるそうだ。
まあ、指紋みたいなものかな。
魔力封じの魔道具を使えば、魔力が使えなくなる代わりに、魔力痕が残らない。お忍びやら、なんやらで、使う人はいるそうだが。
今回は、その魔道具が使われた形跡があるという。
俺はレイトと共に、学園の食堂に向かった。
最初は俺はここがお城だと勘違いしていた。高い天井、広い廊下、豪華な装飾品。だご、よくみると、あちこち、いかにも魔法学園っぽい、超有名映画でみた魔法道具が並んでいる。
ワクワクして、箒に乗って飛ぶのかと聞いたら、レイトに心底馬鹿にするような目で見られた。こちらには、そういう発想はないらしい。はいはい、お貴族様は、箒など持った事もないのでしょうねー。
この魔法学園も、ほとんどが貴族の子弟だ。秀でた魔力をもつ平民もいるが、そういう子らは、貴族の養子となって、この魔法社会に組み込まれる。貴族以外が、強い魔力を持たない社会構造が出来上がっているのだ。
強い魔力を持つ子供の取り合いも、しばしば起こるらしいし、魔力が全てのような社会で、魔力を使わない犯罪とは、どんなものなのだろう。
学園の食堂に着いた時、俺は目を疑った。
ここ、見たことある…。
いや、デジャヴじゃなくて、超有名映画にそっくり。
真ん中に長いテーブルがあって…。
あ、でも、奥の方の窓際にいくつも小さなテーブルがある。
「特別な人達のテーブルです」
先生の?
「学園生徒会役員の席です。生徒会役員が招待した学生も座れます」
ここで、残飯をかけたって?それは、無茶なことを。
「偶然を装ってはいましたが」
王子から上席の使用許可を受けていたリュミエラ嬢が、友人二人と、王子の側近2名と、計5名で昼食をとっていた。そこへ、悪役令嬢がやってきて、イチャモンをつけ、つまづいた振りをして、リュミエラ嬢に残飯ぶっかけた、ということだ。
リュミエラ嬢は泣きながら、自室に走って行き、悪役令嬢は高笑い…、では、実は終わらなかった。
片付けられた食事を食べたと思われるネズミが、死んだのだ。ネズミの胃の中からは、ケーキのかけらが見つかっている。
悪役令嬢が残飯をぶっかけなければ、誰かが毒入りケーキを食べていたかも知れない。いや、食べたと思ったから、証拠隠滅の為に、残飯をぶっかけたのか…。
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