第85章 連星④

 巨大彗星が肉眼でもはっきりと見えてきた。彗星というよりは、小惑星か小型の衛星のように思えた。

 俺たちは彗星と並行して飛んだ。ミサイルを撃ち込む地点を正確に調べるためだ。失敗は絶対に許されない。


「アリーナ、ミサイルを彗星に撃ち込む」

 画面に向けたまま、ゲバラが声をあげてきた。


「彗星までの距離、1万5千まで10秒」

 操縦桿を握っているアリーナが応えた。


 俺は2人のやりとりを固唾を呑むように見ていた。俺にできることは、何もせずじっと見守ることだけだ。


「第1弾、発射。第2弾、第3弾」

 ゲバラは指さし呼称でもするように声出しをしながら、待機しているミサイルを次々と誘導した。


「1.2.3.4」

 彗星への到達時間を数えた。


 ミサイルが次々と着弾した。もちろん宇宙なので爆発音は聞こえない。真空の宇宙では音は聞こえないからだ。代わりに眩い光が宇宙船を照らした。

 彗星の軌道は変わったのか? 俺たちは画面を食い入るように見た。



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