第83章 超巨大ウイルス?⑤

 ガイガーを殺害した怪物たちは、地球の生きとし生けるもの全てを狂ったように殺戮、破壊し尽くしていった。ガイガーや大王は人間以外の動物たちには手を出さなかったが、怪物たちは地球を生命のない惑星にするつもりなのか、手あたり次第に殺戮していった。まさに、恐怖の大悪魔が地上に降ってきたかのようだった。


「大王も怪物たちに殺されたとの連絡が入った」

 カストロの部下が報告してきた。


「このままだと、あの怪物たちのやりたい放題だ! だがどうすることもできない」

 モニターに映る怪物たちの映像を見つめたまま、全員が絶望感に打ちひしがれていた。


「まだ生き残っている人々を救出できたとしても、各基地は既に難民で溢れていて、収容できなくなるのも時間の問題だ」


 カストロたちは、わずかな荷物を抱え子供たちの幼い手を握り、地下に逃れていく人々を見つめた。たとえ運よく地下に逃れ助かったとしても、ずっと地下で暮らせるわけではない。

「地下に収容できる数は何人だ?」

 キアヌが表情を変えずに訊いてきた。


 おそらく感情を表に出さなかったのは、火星で地獄を見てきたからなのかもしれない。だが眼は正直だった。曇っていた。


「このB基地で5万人だ。全部で60万人だ」

 カストロも表情を変えずに答えてきた。キアヌ同様、眼は暗かった。


「60万人? 難民は少なくとも数千万はいるぞ。たったの60万人しか救えないということか?」

 キアヌが今度は表情を変えて訊いてきた。


「ああそうだ。だがどうしようもない」

 カストロが吐息を落とすように答えてきた。


 カストロの説明に、がっくりと肩を落とすキアヌの眼と、地下に逃れていく幼い少女の眼が偶然にも重なった。その少女と同年代の多くの子供たちが、助けを求めているのに、救ってやれない。残酷な現実に、キアヌは言い知れない怒りを覚えた。





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