第34章 究極のAI戦士、ゲバラという男⑥

 あれからあっという間に、時が過ぎた。いまではジュンも美しい恋人がいる好青年へと成長した。だが、二人を取り巻く環境は、地獄のような過酷な世界だ。毎日が、死と隣り合わせの世界だ。


 ゲバラは瞳を西に動かし、操縦席から見える水平線に眼をやった。その水平線の一部は燃えるように赤かった。おそらく、そこで戦闘が起きているのだろう。ガイガーと大王の戦争は終わりが見えない。どちらかが倒されるまで、この先も続くのは間違いなかった。そして、その巻き添えで大勢の人間が死んでいく。


「ジュン、降りてくれ。俺と一緒にいたら、命の保証はない」

 瞳はジュンの顔に戻し、再度促した。


「いや、あんたと一緒に行く」

 ジュンが同じ口調で声を返してきた。


 ゲバラは声の代わりに、手刀でジュンの後頭部を叩いて気絶させると、座席に寝かせ、すまないという眼を送った。


「ゲバラ! なんてことするの!」

 マリアが金切り声を上げ、ジュンに身を寄せた。


「ジュン!」

 そして体を揺すり、意識を回復させようとした。


「心配ない。意識を失っているだけだ」

 ゲバラは非難の眼を向けるマリアを落ち着かせるように声をかけた。


「こうでもしないと、ジュンは側を離れないからな」

 マリアに理由を説明した。


 その言葉にマリアは、少し安堵したような顔をしながらジュンに寄り添っていた。


「人間ではない俺が、言うのもなんだが、ジュンは、俺にとっては息子みたいなものだ。ジュンを絶対に死なせるわけにはいかない。潜水艇は自動で本部に行く。マリア、ジュンを頼むぞ」

 ゲバラは自分の思いを伝えた。


 その言葉にマリアは、ゲバラは本当にヒューマノイドなのか? 人間ではとでも思っているような顔をしていた。

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