第13章 火星は地球の鏡?②

 ところで火星人は、SF映画に出てくるタコのような軟体種族ではない。外見は人間と見分けがつかないほどよく似ている。特に、いくら科学が高度に発達しても古代人が創り出したアホな宗教の教祖、権力者たちに洗脳されてしまう人々、真実よりも自分に都合のいい嘘なら簡単に信じてしまう扇動されやすい精神構造は、人間によく似ていた。だからいくら知能が高くても、幼児が玩具を壊すかのように、火星を破滅させてしまったのだ。


 火星人たちは2度も世界大戦を引き起こした人間と同じように、二つの勢力に分かれて激しく対立していた。そしてある日、愚かな指導者たちが核の全面戦争を始めた。火星は一気に火の海と化した。その地獄から逃れようと、大小の数十隻の宇宙船が脱出しようとした。だが、次々と撃墜されていった。運よく攻撃を逃れた乗せた宇宙船1機が、地球に辿り着いた。宇宙船は無傷ではなかった。南米奥地のジャングルに不時着陸すると、大破した。


 生存者は男3人、女2人の成人たちだけだった。どうにか助かることができた彼らは、ジャングルで様々な原住民たちと出会った。しばらく原住民たちの集落で一緒に暮らした後、安住の地を求め放浪していた彼らが眼にしたのは、人間同士が血で血を洗う争う光景だった。


 人間にも火星を滅ぼした強欲な指導者たちと同じ好戦的なDNAを持つ人間がいることを知った彼らは、人間の文明が高度に進化した将来、火星と同じ過ちを起こすと考えた。


 そこで自分たちが持ち込んだ機器が、人間の指導者たちに悪用されないよう全てを処分した。そして高度な知能を隠し、原住民たちに同化して生活することを決めた。


 その彼らの技術の痕跡が、南米の遺跡に残っている。インカのカミソリも通さない石の壁は、火星人たちの技術を応用して造られたものだ。火星にはインカやアステカ、マヤの遺跡群と、似たような構造物の痕跡がいまも火星の地下深くに残っている。いずれ火星に移住した人々は、その痕跡を発見することになるだろう。そのとき彼らは、何を思うだろうか? そして人間と似た遺骨を眼にして、人類のルーツはアフリカではなく、火星ではないのか? 人類は本当に類人猿から枝分かれして進化したのだろうか? と想像を思い巡らせるかもしれない。 


 だがDNA鑑定すると、外見はよく似ているのに、人間とは明らかに違う点があることにも気づく一方で、人間と火星人との共通点も、知ることになるだろう。


 地球人より先に高度に発達した火星の文明を、自ら滅ぼした理由を。



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