第11話 恋のきざし?

■作者のねらい:トワ(と芽衣紗)はこの時からシエラを狙っている。シエラとユーリの間に明確な恋愛感情はない。


■登場人物

   シエラ

   シエラ(N)

   ユーリ

   サミュエル

   トワ



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



◯サミュエルのキッチン(夜)



ユーリ「今、自分が行けばみんなが助かるとか安易に考えてただろ」


シエラ(N)『ユーリにしっかり手をつかまれたわたしは、立ち上がることができずに再び腰を下ろした』


シエラ「……よく……分かったね」


ユーリ「だと思った。ほんっと捕まえておかないとすぐどっか行くんだから。追っかけるこっちの身にもなってくれよ。はぁ……」


シエラ「ごめん……」


トワ「あらあら、仲良しさんなのね。なんだか困ってるみたいだから、私が手伝ってあげましょうか?」


シエラ「……えっ! それって、盗賊からみんなを助けるのを手伝ってくれるっていうこと?」


トワ「そうよ」


サミュエル「おい、なにを企んでいる?」


トワ「やだぁ。また怖い顔して。何も企んでなんかいないわよ。いつも通り、楽しそうだなと思っただーけっ」


サミュエル「お前ら、トワには気を付けろ。こいつの思考回路はズレてるからな。あえて危険を選んで楽しむ様なやつだ。好き好んで面倒に首を突っ込むから、油断したら足元をすくわれるぞ」


トワ「もぅっ。サミュエルちゃんったら人聞きの悪いこと言って! この子たちに誤解されちゃうでしょっ」


シエラ(N)『口をとがらせるトワが、腕組みをしているサミュエルのほっぺたを指でつつこうとし、ペシンと払われた。サミュエルはなんだか気に食わなそうだが、そんなことは関係ない。わたし達は猫の手でも借りたいくらいなのだから』


シエラ「協力してくれるならお願いしたいです!」


トワ「うふふ。いいわ。その代わり、私にもさっきのキラキラしたお願いをしてくれるかしら?」


シエラ「キラキラしたお願い?」


トワ「ほら、さっきサミュエルにやってたじゃない。上目遣いでかわいいやつ!」


シエラ「こ、こうですか? トワお姉さま、どうかお願いします。わたしたちに協力してください!」


トワ「んー! かわっいいっわっ!」


シエラ(N)『トワは両手で口を押さえ、体を揺らして喜んだ。よかった、どうやら満足してくれたようだ。これのなにが気に入ったのかは分からないけど』


トワ「そしたら、特にそっちの男の子」


ユーリ「ユーリです」


トワ「ユーリ君は特に強くなって、大事な彼女を守れるようにならなきゃね」


ユーリ「……彼女って、シエラのことかぁ? べべべ、別にそんなんじゃないし!」


シエラ「やだぁ! わたしたち、ただの兄妹だよ!」


トワ「あら、そうなの? じゃあ私が狙ってもいいのね」


シエラ「へ?」


ユーリ「へ?」


シエラ(N)『隣のユーリが顔を赤くする。トワはユーリのことが気に入ったのかな。これは恋の予感かも。うししし』


サミュエル「こら、トワ。ふざけるのもいい加減にして、さっさと肉を持って帰れ。家族が待ってるんだろう。シッシッ」


トワ「ふふふ、そうね。それじゃあ明日また来るわ。明日からしっかり特訓できるよう、今日はゆっくり寝るのよ」


シエラ「特訓って……すぐに助けに行くんじゃないの? お母さんたちに何かあったらわたし……」


トワ「うーん、そうねぇ。みんなに危害を加えないよう、帰りに私がお返事を届けてくるわ!」


シエラ「盗賊に返事⁉︎」


トワ「うふふふっ! ちょうど通り道なのっ! 大丈夫、うまく届けるから」


シエラ(N)『脅迫状って、返事書くんだっけ? 初めて脅迫状もらったから分かんないけど。いや、お手紙だとしたら書かなきゃだめか。そもそも、盗賊団のアジトってどこ? ぐちゃぐちゃ考えている間に、トワがスッと胸元からペンを出して脅迫状の裏に何かを書き始めた』


トワ「あなたがたが狙っている可愛い女の子は、今日の疲れで熱を出してしまいました。しばらくは動けませんので、元気になったら改めてお伺いいたします。それまで、くれぐれも人質を大事にするように。人質に何かあった時点で、女の子は手に入らないと思ってくださいっと。これでよし!」


シエラ「これで……いい……のかな?」


トワ「だーいじょうぶ大丈夫っ! お姉さんに任せなさい。あなたたちは少し戦い方を覚えないと、助けられるものも助けられないわよっ。じゃあ、また明日ね!」


シエラ(N)『トワがポンポンとわたしとユーリの頭を撫でると、サミュエルが持ってきた大きな肉の袋を背中にかつぎ、投げキッスをして去っていった。小さい頃に絵本で読んだ、サンタクロースみたいだ』


シエラ「なんか、パワフルな人だね」


ユーリ「……だな」


SE まきが燃える音

 

シエラ「……トワって、あんなに華奢なのに一体なんの特訓をするんだろう」


ユーリ「確かに。一気に話が進んで分からないことだらけだな」


サミュエル「はぁ。トワに目をつけられたお前らには気の毒だが、あいつの戦闘の腕は確かだ。せいぜい教えてもらうといい」


シエラ「サミュエルが認めるなんて、トワってどんな人なの? 彼女?」


サミュエル「まさか。どんな人かって言うと……そうだな。長生きしすぎて暇を持て余してる女ってところか」


シエラ「え、お母さんより若そうだったけど……実はトワさんっておばあさんなの? まさかね」


ユーリ「ははっ、そんなわけないだろ」


サミュエル「確か一万年くらい生きてるって言ってたな」


シエラ・ユーリ「い…………一万年⁉︎」


シエラ「一万年って、おおおおお、おばあさんのレベルじゃないじゃん!」


ユーリ「仙人だ! リアル仙人!」


サミュエル「ふっ、仙人か。それ、本人には言うなよ」


ユーリ「……仙人って、肉食うんだな」


シエラ「え、疑問に思う所ってそこ?」


サミュエル「あいつは食わないんじゃないか? 食うのはその家族だろ」


ユーリ「えっ……じゃあ、本当に霞食ってるのか……」


サミュエル「俺からこれ以上は言わんから、詳しいことは明日本人に直接聞いてみろ。さあ、片付けるぞ」


シエラ・ユーリ「はーい」


シエラ(N)『めんどくさそうにサミュエルが話を遮って立ち上がった。わたしとユーリも疲労と満腹感で眠気を感じ、あくびが出てくる。これ以上考えるのは無理だと思ったわたし達は、簡単に片付けをしてからサミュエルを追って小屋に向かい、明日に備えて寝ることにした』

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