第22話 リーノとふわふわ温泉(前編)

 

「リーノさん、おはようございますっ!」


 ぽふっ


 ナ・デナデに転移するなり、抱きついてくるララ。

 そう言えば、逃避行中は何度か映像で会話はしたけど、こちらに来る余裕はなかったな。


 生身で会うのは久しぶりなので、彼女も嬉しいのだろう。


 すりすりと甘えるようにおでこを僕の胸に擦り付けてくる。

 おおっ……モフモフのケモミミの感触と合わさり……至高の光景っ!!


 やはり僕が化けたリーノちゃん (仮)なんかより、数倍かわいいのであるっ!

 あらためて実感した僕は、心の中で感涙しつつガッツポーズをとる。


「はうっ……えへへ、ナ・デナデへようこそっ!」


 大胆な事をしてしまったことに気づいたのか、身体を離し、いつもの挨拶をするララ。

 ほんのりと赤くなった頬が超かわいい超カワイイ。


「……おうおう、朝から見せつけてくれますなの」


「先週カレッシに振られたアッカに対する嫌がらせにゃん?」


「アッカ、気にするなわん……所詮あのおふたりはまだごっこ遊びの段階……」

「いざ”わんわん”する段階になるとヘタれるキャラだとミドリィ推測するわん……経験人数 (ピー)人のアッカ、マウント取ってオッケーだわん!」


「……ビ○チっぷりを自慢するんじゃないの」



 ……背後の3人娘が騒がしいのもいつも通りで思わず笑ってしまう。


 ……彼女たちの話を聞いていると、ナ・デナデの風紀は乱れているのかもしれない!

 僕がララを守らないと!


「えっ!? アッカちゃん……カレシさんと別れちゃったのっ?」

「今年に入って7人目……そう言うのは三傑集として、イケないと思うなっ!」


 おお、”巫女”として、風紀の乱れは看破できないという事だね!


 世界の風紀は僕とララが守るんだっ!

 改めてそう心に決めていると。


「……ふっ、いかにも童○と○女の会話だにゃん! そんなだからララ様の……」


 がいんっ!


「きゅう」


 余計な事を口走りかけたアッカ。

 ララの額に青筋が浮かんだと思った瞬間、タライのようなものがアッカの脳天に落下し、天罰を下す。


「……ではではっ! ゆっくりとくつろいでくださいねっ!」

「あ、あとでふわふわ温泉にも行きましょうっ!」


「あ……ララごめん、その前に」


 ”スキル進化”の事を聞いておいた方がいいだろう。

 戸棚からお菓子を取り出そうとしていたララに話しかける。


「ほえっ? 何でしょうリーノさん?」


 ララに僕の”ユニークスキル”の事を説明する。


「なるほどなるほどっ……リーノさんの”NEWAZA”が進化したかもしれないってことですねっ!」

「了解ですっ! ララ、”鑑定”しますっ!」


 かぽっ


 僕の申し出を快諾してくれたララ。

 革靴を脱ぎ、すらりと伸びた白い足先があらわになる。


「……えっと、それで……あぅ、そちらのソファーに横になっていただけますかっ」


 あっ……忘れてた……ララの”鑑定魔術”は、足裏の肉球を使うんだっけ。

 頬を染めてもじもじするララの様子に、今さらながらに恥ずかしくなる。


 うう……自分で言いだしておいて今更撤回できない……。

 これは”鑑定”……聖なる魔術行為である……我慢我慢。


 僕は内なる登り龍 (比喩的表現)を完璧に制御し、ソファーにうつぶせになる。


「あっ、あのあの……”すきる鑑定”はお腹に対してヤリますので、仰向けになっていただけないでしょうかっ」


「えっ?」


 ころん……


 ララのほっそりとした手が僕に伸びてきて……あっさりと仰向けにされる。


「それではっ……失礼しますっ……ごくり」


 ぷにっ!


 何故かララは喉を鳴らすと、右足を僕のお腹に伸ばす。



 ああああああっ!

 ほっそりとした指先がっ!

 ぷにぷにの肉球がっ!



 お腹の上に生まれた甘美な感触に、僕の登り龍 (直接表現)の拘束バンドはその役割を放棄したのだった。


「や、やべー奴らなのっ!」

「キスしかしていないうぶなねんねのくせにASKKプレイなのっ! 流石はナ・デナデ一のヘンタ……」


「の、のおおお……こ~やって”あぶのーまるぷれい”から入ってどんどんせーへきが歪んでいく奴にゃん!」

「ああなるほどにゃん! だから最近ララ様の”一人遊び”が足で……」



 がいんっ!

 がいんっ!



 キーロとアッカの脳天にタライが直撃するのを横目で見ながら、僕の意識は薄れていくのだった……。


 あっ、僕のスキルは無事”進化”していて、相手が”害意”をこちらに抱いている場合、”害意”を封じて無害化する効果があるそうですっ (詳細はのちほど)!

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