第32話 死んだ三人の回想(望)

9月9日10時45分。

沢口望。


友人と電話で話していた。

友人の名前は、柿崎努ーー。

特段、変わった話しはしていない。


「そういえばさぁ、昨日のドラマみた?」


「昨日、塾でさ。録画はしてあるんだけど、まだ見てないんだ。どうだった?面白かった?」


努は聞いてきた。


「うん。そこそこ面白かったよ!」


「楽しみだな。今日見るからさ、明日話そうぜ!」


「うん。わかった」


そんな普段のやりとりをして受話器を置いた。それからすぐだった。

見知らぬ携帯番号からの着信がなったのはーー。

手が震える。


「もしもし」


「ーースズメ」


一言だけ告げられ、電話は切れた。

意識が遠くなる。

足が目的地に向かう。

そして最寄りの駅ーー構内に入る。


ボンヤリとした頭で、一歩を踏み出す。

そのタイミングで、電車が通った。


ーーグシャ。


そんな音がとどろいて、電車が止まる。

電車の中の乗客が騒ぎだす。


「やばい。人身事故に遭遇したんだけど」


突然、電話をかけ始める高校生。

本来はダメなんだろう。

電車で電話をするなんて、だが、何かしていないと落ち着かないのも頷ける。


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