第3話 目撃者

9月9日。午前11時ーー。


駅構内は大騒ぎだった。

なぜならばつい今しがた、高校生の女の子が身を投げたのが原因だった。


「ーーひ...ひとが...とび込んだぞ!」


男は震える声でいう。

薄くなった髪の毛が、少しだけ風になびいた。男はサラリーマンだろうか?メガネをしてスーツ姿と言うかたくるしいカッコウだ。


「おいおい、まじかよ!?こんなの、俺初めて見ちゃったよ」


少し興奮気味な声で、男の学生はケータイで写真をとっている。


「ーーまさか、飛び込むなんて」


電車を待っていた人たちが、目の前で起きた投身自殺におどろき、中にはストレス性のものだろう。

体調不良をうったえる人も多くいた。


ジャーナリストとして、少しは名が知れている私(秋山浩司)は、その目撃者になってしまった。


ふしぎな死だった。


彼女におかしな様子でもあれば、誰かが彼女の死を止めただろう。

だが、彼女にはそんなようすなどみじんも感じられなかった。


ーーまさか、飛び込むとは...。


まさにその言葉の通りだ。

映画のように展開された飛び込みの全容が、乗客と駅で電車を待っていた人たちの体調にいわかんを感じさせる。

ほんとうに彼女の死には驚いた。


私は他にも同じようなことがないか。調べてみた。


ーーあった。


彼女の自殺と同時刻に、二人の女子高生が同じような死に方で自殺をしている。


ジャーナリストになって五年。

色んな場所に友人が出来ている。そのツテを頼り、女子高生たちの死の真相を調べる事にした。

相手が大の大人であれば、調べようなどとは思わなかったが、高校生となると話は別だ。

彼女らにはまだミライがあるのだから。


その後、警察の調べにより、この時投身自殺をした女子高生は、澤田望である事がわかったが、しかし、テレビのニュースなどでその名前が報じられる事はなかった。


警察は彼女の死はただの自殺であり、これ以上調べることはないと決断したようだ。


俺はジャーナリスト仲間の柏崎護に連絡をしていつもの喫茶店に呼び出した。

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